山都(旧矢部町)の石橋:通潤橋に通じる水路、円形分水

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聖橋の上流にあるのがこちら、円形分水。この高さの川から分水し、各水路をつたってそれぞれの耕地に水をもたらします。

水耕作では水の量がそのまま収穫量につながることから、水利権の争いが絶えません。分水の役割や公平さは非常に重要で、人々の関心をながらく集めていました。そこで出てきたのがこの円筒(円形)分水。

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円筒分水 - Wikipedia

右図は外縁部を越流させる構造の場合を図示したもので、外縁部に設ける仕切りの間隔と同比率で、用水が正確に分配される。 仕切りの間隔により、分水比が一目瞭然であり、誰にでも公平さが納得できる機能美を併せ持つといえる。 これにより水争いに平和をもたらした、という説に納得させられる。

構造がシンプルで機能美にあふれています。

ここで3:7に分水された水のうち、7割が通潤橋へと続く水路に流されます。

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左側の川もずいぶんな水量がありますが、台地を潤すためにはこの水を右の水路の高さまで引き上げなければいけません。いまであれば電気ポンプをつかって組み上げれば簡単なことですが、当時の最新テクノロジーでは高い位置からその高さを維持しつつ用水路で引き渡すしかありませんでした。しかしそれを阻むの大きな谷。その谷を橋でつなげたのが通潤橋というわけです。

水道橋というテクノロジーにより白糸台地には水が訪れ、他の耕作地と同様に水田が営めるようになりました。水田耕作ができるとなにがいいかというと、米=貨幣価値をもった時代ですからそのまま収益があがるということです。つまり米は富だったんですね。だからこそ投資をしたし、失敗することが許されない一大プロジェクトだったことは想像にかたくないです。

通潤橋と合わせてみておくことをオススメします。

【他の写真】

円形分水 - a set on Flickr


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円形分水 山都町・熊本観光 九州


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