ドラマ「ホタルノヒカリ」ぶちょお(部長)の感想

最近海外出張が多く、ハリウッド映画を見ているとさすがに飽きてきます。
というのも2-3時間の枠の中でそれなりのカタルシスを作るためのフォーマット、感動させるためのテンプレート、ある意味成功法則が決まっていておりそこから大きくは外れないので、いわばチェーン店のハンバーグ定食を食べている状況でしょうか。美味しいし、はずれはないけどそこまで。

エンタテインメントメニューを物色していると「ドラマ」という項目に目が留まり、普段TVドラマは見ないのですが暇なので見たのが「ホタルノヒカリ」。

これが意外にも面白く、2回目のフライトで6話まで進んだところで残りが気になり、huluに登録して結局最後までみました。さらに続編の「ホタルノヒカリ2」も見たので、その感想を。

部長の物語

主人公は「干物女」とカテゴライズされたOLホタルの物語で、仕事は頑張るけど、家に戻ると疲れて何もせずグータラする姿に多くのOLが共感して人気となりました。なので感想サイトをみてもほとんど女性で、男性が綾瀬はるかを目的に見ているのもあるはずなのですが、目立たない状況です。またドラマは10年前の2017年、2010年、映画版が2012年に公開されているので古いコンテンツというのもあるでしょうが。

なので女性の、ホタルの視点からの感想ばかり散見されますが、自分が50歳ということで世代的には完全に「部長」側で、むしろ部長の心境が気になります。

部長視点でいうと、奥さんとの折り合いが悪くなり別居、空き家となっていたはずの実家に帰ってみると見知らぬ女性が家をちらかし放題ちらかし、グータラしているのをみてまずおどろき、次にノーメイク・眉毛うすい・ジャージ姿のだらしない女性が、会社でバリバリ仕事をこなす部下の美人OLということで2度驚くわけです。


同居とは恋愛とは

物語はホタルの恋愛を軸に進むわけですが、同時に部長にも影響します。

別に部長はホタルのことが好きでもなんでもなく、むしろタイプとしては嫌い。有能な部下としては評価するものの、同居人としては失格でいつもカリカリと怒ってます。この背景にあるのは、ドラマ続編「ホタルノヒカリ2」で明らかになるのですが、一つ目には中学生時代に母親を亡くしており、そこから家事一般をすべて自分でこなせるようになったこと、二つ目は父親がだらしなく、放浪癖があり、母の死に目にも立ち会わなかったことを恨んでいること、この2点です。

一方でこの父親は飲み屋でホタルと意気投合し、空き家だった実家をホタルに無償で貸したり、縁側でゴロゴロするのが好きということで、完全に同じ穴のむじな、同類です。

ここからわかるのは、部長は嫌っていながら父親の背中をホタルに見出していたのです。

ん、どういうこっちゃ?

ようは部長は家庭においては「女性」「母親」なんですね。母親を若くして亡くしたことで、女性・母親が持っているスキルを身につけてしまい、メンタルが女性なんです。

さらにややこしいのがイケメンだということ。

学生時代からクラスの女の子全員が自分のことが好き、という環境だったために、いつも女性がいいよってきてそれを断るのが大変であり、自分は常に選ぶ立場。だから恋愛について、自分から好きだと告白することはほぼなかったことです。

その結果、たとえ離婚したとはいえホタルのことを積極的に選ぶ理由がありません。だからこのままでは当然のことながら何も起きるわけがないわけです。

この二人を結び付けたのは、部署を含む回りの環境。

別れた奥さんや、旧友、そしてホタルの恋愛下手に対して応援するうちに、自分の気持ちに気付くことになるわけですが、さあこれが何かというのが難しい。

まあ「恋」ではないんですよね。どちらかというと「愛」で、それも性愛ではなく、恵まれない子に差し伸べる手のような博愛に近い。だから野獣は全然でてこず、キスすらもしないし、そもそもデートしてない。

そうこの二人、一回も外でお食事とかデートとかしないんですよ。常に縁側で横に並んでビール飲むだけ。究極の家のみ。

毎日飲む割に酒には弱いみたいで、すぐにその場で寝てしまう。だからその点でも何も起きようがない。

結婚とは

ドラマ続編では1作目のあとすぐにホタルが3年の香港赴任があり遠距離恋愛となるわけですが、これもひどい。ホタルからの連絡が途絶える。3年も音信不通で待っている部長はどんだけ忍耐力があるのか、理解があるのか。普通浮気するでしょう? でも先に指摘したように、部長はイケメン歴が長すぎて自分から積極的に何かをすることはないのです。常に受け身で、すでに彼女がいることがある程度知られていること、そして部長という役職であること、仕事が忙しいことからそういうことは起きなかったのでしょうね。

だいたいにおいてこの部長の休日に過ごし方がひどい。接待ゴルフがあるくらいで、あとはおそらく家事を行っておしまいなのでしょう。あとはオフィスに仕事にいったり。ようは趣味がないんですな。

戻ってきてようやく結婚ということになるのですが、ここで結婚相手に求める理想をぶつけるわけです。一方ホタルも自分でハードルをあげてしまい、自己崩壊。

これの何が問題かというと、これまで干物と思われつつ同居をしてきたにもかかわらず、いざ結婚となったときに家事一般整理整頓ができる奥様になろう、としたミスコンフィグレーションがゆえ。

同居と結婚で同居するのと何が違うのか問題。

ドラマ前作で指摘されているように、恋愛もなにもないのに男女が同居しているのはおかしい、のが一般的。いわゆる同棲というやつですが、恋愛が合って同居するスタイルが同棲で、婚姻届けを出すと結婚となります。

ようはこの枠組みが実態にあっていないわけで、婚姻届けを出すことにこだわるあまり、であれば結婚生活はこうあるべき、というべき論、理想論が先行してしまったので不整合がおきてしまった。

実はすでに恋愛のない形での同居を進めていたのだから、それでいいよね、ということに気付くわけです。これはどういうことかというと、父親にホタルが似ており、母親の領分を部長ができるわけだから、その組み合わせでいいわけです。

つまりグータラパパと兼業主夫(ワーキングママ)スタイル。

結局男女同権だなんだといっておきながら、従来の封建的な大黒柱は男性で、女性は家事ができて当たり前的な常識にとらわれているんですね。仕事してるなら、別に家事できなくてもいいじゃない、専業主婦ならいざしらず。逆に専業主婦ならちゃんとできないといけないというのはありますが、それは恋愛マスターの山田姐さんがチャレンジして見事そのスキルをゲットしています。

ドラマ続編でもまた間男が登場して引っ掻き回すわけですが、部長のモトカノもでてきて、これまたややこしくしてくれますが、モトカノに一切興味がない部長もさすがです。なんでか、部長の中身は母親なんですよね。母性が強い。母性が強いから母性が強い女性には惹かれないんです。

ホタルという存在について

今作で「干物女」という言葉が作られ、その定義が見事に同世代の女性の共感を呼んだわけですが、ドラマのホタルはちょっと病的なところがありますね。いわゆるアスペ(自閉症スペクトラム)やADHDといった傾向が見て取れます。

モノをなくす、ひとつのことに集中しすぎる、など業務でも支障が出そうなものですけど、外ではなんとかクリアしてとっとと家に帰ってリラックスすることでバランスをとっていたのでしょう。

その状況に共感する女性が多いということは、ああ、社会が変わったんだなあと感じる次第。簡単にいうと男女雇用機会均等法の影響です。

この物語では結婚までですが、その先には出産、子育てが待っているわけで、そこにワーキングママ問題、待機児童問題がでてくるわけで、ますますOLの生活・労働環境は過酷です。

そもそも「ワーキングママ」という言葉があること自体がおかしいことになかなか気づきません。家事分担しているのにワーキングパパって言わないでしょう。

まとめ

部長やホタルが知り合いに似ていることもあり、面白おかしく視聴しました。そういう点でも世相を反映していたのかなあと思います。

綾瀬はるかは好きな顔立ちですが、これをずっとみて分かったのはやっぱり石原さとみの方が好きだなということでした。それにしても干物っぷりとか、独り言とかを見事に快演していたのは、見ていて清々しかったです。

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