F1日本グランプリ2009 in 鈴鹿:総括レポート「富士とは違うのだよ、富士とは」

時間が少しあいてしまいましたが、鈴鹿で行われたF1日本グランプリ2009。こちらを総まとめしたいと思います。

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(観覧車:ジュピター)

【以前の記事はこちら】

F1日本グランプリ2009 in 鈴鹿:予選日レポート ([の] のまのしわざ)

F1日本グランプリ2009 in 鈴鹿:決勝日レポート(その1) ([の] のまのしわざ)

F1日本グランプリ2009 in 鈴鹿:決勝日レポート(その2):決勝レースと西コースウォーク ([の] のまのしわざ)

さてみんなから「鈴鹿、どうだった?」「富士とどう違った?」と聞かれるのですが、答えはひとつ。

「富士とは全然違う」

でした。違うというか、比較にならないというか。F1日本グランプリは鈴鹿のものであって、そもそも富士スピードウェイでやること自体に無理があったというのが素直な感想です。これはモータースポーツファンの間ではながらく指摘されていたことですが、今回体験して改めて理解しました。

自分自身、F1日本グランプリ観戦はあの地獄のF1富士がはじめてで、昨年2008年にもう一回いって改善っぷりに感動しました。ですから今回鈴鹿でのF1はさほど違わないだろうと思っていたにもかかわらず、大違いなんです。

「聖地鈴鹿」

という言い方がありますが、まさにそう。みんなの思念が鈴鹿、特にあの観覧車を中心に集まっているような気がします。Zガンダムみたいなもんですね。そういえば観覧車の名前は「ジュピター」、シロッコやブラウ・ブロが行ってた木星です。

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冗談はともかく、全国から車やバイク、はては自転車で鈴鹿のジュピターを目指してやってきます。そしてそれを受け入れるのが地元、鈴鹿市の皆さん。なんというか、全員が全員「ウェルカム」な雰囲気を醸しているんですよ。仕事で仕方なくやってんだよねー、かったりーなー、という雰囲気は皆無。朝6時でも元気に「おはようございます」、夜11時でも「いってらっしゃいませ」、と元気よく声をかけてくれるんです。5時間以上かけて、徹夜でヘロヘロになりかかっているところに元気な声をかけてもらうと、パワーをもらった気がします。そして鈴鹿サーキット、F1日本グランプリへの期待が高まり、自然とウキウキしてしまいます。

気がソゾロになるというか、なんというか。町全体がこう、いい意味で浮き足立っているんですね。日本古来のお祭り的な意識の高揚感を全体から感じられます。

鈴鹿サーキットの駐車場に入れただけで、もうこれですからね。そして駐車場に来ている人の手馴れたぶりがまた凄いのです。

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(駐車場+折り畳み自転車)

車中泊OK、24時間出入り自由の駐車場はオートキャンプに近いです。キャンプ場は別途あるのですが、駐車場でもマイカーをテントがわりに環境作り。巣作りに近いかんじで、ジャッキアップして水平だしをする乗用車、ハンディ発電機をもちこんでAV環境を満喫するワンボックス、折り畳み自転車は移動のマストアイテムと車中泊を快適にするためのノウハウ満載です。もちろん自分の領域をはみ出ず、周囲に迷惑をかけない範囲でやっているところにF1鈴鹿20年の歴史がここでも生かされています。

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(キャンプ場)

鈴鹿サーキットへは駐車場から徒歩でいくのですが、途中F1関係者が宿泊するサーキットホテルへの誘導路があります。その周囲には出待ちのファンたちが静かにたっていたり。その横をすり抜けてサーキットゲートへと進みますが、ここでも「気がソゾロ」になります。

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(誘導路)

サーキットゲートへの歩道は大混雑。といっても立ち止まることはなく、スムースに歩けます。

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(歩道)

さらに歩道からは遊園地の遊具が見えます。遊園地は営業しているのでもちろん遊具は動いており、お子さんがいたら「のりたいーーー」って駄々をこねられるポイントでしょう。

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(遊園地の遊具)

こうしてようやく最初のサーキットゲートが登場です。

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(鈴鹿サーキットランド入り口)

入り口は意外と狭く、レーンとしては8レーンほど。この真後ろにはタクシー、バスの車寄せがあり、タクシーでくるひとはまさに入り口の目の前につけます。

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(入り口前車寄せ)

ゲートをくぐるとそこは広場。遠くにグランドスタンド、観覧車などサーキット施設が見えます。

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(広場)

サーキットへは遊園地の敷地を通り抜けていきます。

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(メインストリート)

メインストリートの両脇には常設のおみやげ物屋があります。フェラーリはこの中にお店を構えていて、予選日の朝だというの入店制限、長蛇の列。

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(フェラーリ・ショップ)

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サーキットに足早に急ぐ人、まんまとショップにひっかかってお買い物を楽しむひと。人それぞれ楽しんでいます。サーキットへはまだしばらくありますが、サーキットランドの遊園地の敷地はひろびろ、通路も十分です。

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(仮設ショップ)

広場には仮設ショップが設置され、常設ショップの誘惑を振り切ってもまだまだ誘惑が待ち構えています。

仮設ショップの誘惑を断ち切って、サーキットを目指しましょう。

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(遊具:右側、レール付カート)

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(乗り物、飲食店)

ショップの誘惑のつぎは飲食店の誘惑です。そうですよね、お腹すいたし喉乾きましたよね。お天気だし。歩いたし。

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(牛串焼)

そりゃあ牛串の1本も食べたくなるってものです。

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(メインゲートへのトンネル)

そんな誘惑を振り切り、一路メインゲートへ。

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(メインゲート)

ようやくメインゲートです。ここはサーキットランドのゲートよりも広く、扇状になっていて効率よく退場させることができるよう設計されています。

しかしこのゲートの手前の右側は、、、やっぱりショップだあ。

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(メインゲート前ショップ)

つまりですね、歩けるところはすべてショップに飲食店が配置されていて、しかも全部賑わっているという罠、罠、罠。

メインゲートで改めてチケットを提示し、ハンコをおしてもらって入場。

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(GPスクエア)

遠くに見える紅白のテントは、、、もちろんショップです(笑)

このGPスクエアはイベント会場にもなっており、大型ビジョンを背景にトークショーを繰り広げたりします。

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(イベント広場)

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(グランドスタンド裏)

グランドスタンド裏のGPスクエアから最終コーナー、S字コーナー、デグナー方面へのトンネルは右手の通路をつかって行きます。

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(最終コーナー方面)

一番賑わっているのはどこかというと、まあ見ての通りどこも賑わっているんですね。人がたくさんいる、という意味ではこのGPスクエアです。ただどの通路際も人がたくさんいてあっちこっちで買い物したり、飲食したり。お祭り的雰囲気満載です。

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そして当たり前のことなのですが、サーキットランド入り口から歩行者天国。車の往来があることはありません。サーキット場内を含めすべて歩行者天国で、安全快適です。

歩車分離という言葉がありますけどそういうレベルではなく、サーキットランド・サーキット内は歩行者のみ。だからこうるさい交通整理の人や、ピーピー鳴り響く笛の音は皆無。本当に気を抜いて、プラプラと自由に歩けるのです。幼児、子供も安心です。

そして遊園地なので当然ですが、全舗装されていてベビーカーも簡単らくちん。階段も一部ありますけどスロープ付。基本はスロープです。

MOBILITYLAND|鈴鹿サーキット|モートピア

実は遊園地といってもディズニーランドや豊島園と比べると、規模は大きくありません。そして富士急ハイランドのようにド派手なものもありません。とはいえ「人を楽しませよう」という気持ちが根底にあります。ですから人が来ることを本当に快く、受け入れてくれる雰囲気があります。

結局富士スピードウェイとの大きな違いはこの付帯施設のありなしにあります。

そしてその付帯施設の本当の価値は、設備の豪華さや規模の大小ではなく、「遊園地」という「人を楽しませる心」にあります。

周辺の地域・地元の人もそうですし、この遊園地モートピアにしても人を迎え入れよう、楽しませようという気持ちが、この鈴鹿サーキットを向いているのです。そして全国から集まってくる観客の気持ちもそうで、その方向性が一致しているからお互いに心地よく、楽しめるんだと思います。

次にイベントスケジュール。

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(GPスクエア、イベント広場)

10/2(金) 9:30~ カウントダウントークショー
 中島悟、片山右京、中野信治、山本左近、佐藤琢磨

10/3(土)
前夜祭 18:00~ 鈴木亜久里、中野信治、山本左近、佐藤琢磨、今宮純、堂本光一
前夜祭2次会 19:30~ 鈴木亜久里、中野信治、山本左近、F1グリッドガールズ

10/4(日)
16:30~18:00 西コースウォーク
17:30~19:30 決勝プレイバック
18:30~19:00 FM三重生放送 ゲスト:佐藤琢磨

歴代F1ドライバー勢ぞろい!この他GPスクエアの特設ステージでもイベント満載。まさに充実した3日間です。なによりビックリしたのが、Kinki Kidsの堂本光一氏。予想を遥かに上回るF1オタクぶりで、歴代F1ドライバーもひくくらい。にしてもこれだけのビックネームを揃え、量、質、そして内容ともに充実させてきた鈴鹿は相当に本気です。

しかも末恐ろしいのがF1開催期間に留まらない点。なんと翌日、10月5日(月)にもイベントを設定。

10/5(月)
10:00~12:00 メインストレートウォーク
13:00~14:30 パドックミステリーツアー

なんでもパドックミステリーツアーにはやはり歴代F1ドライバーが待ち構えていたとかで、F1観戦にとどまらないエンターテインメントの提供に驚きました。

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だって、堂本光一氏ですよ。キンキですよ、ジャニーズですよ。

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一般人にこれほど強い引きはないわけです。F1に興味がなくっても、F1ドライバーを誰ひとり知らなくたって、堂本光一氏を知らない女性はいないでしょう。奥様キラーなキャスティングに納得。

これはもはやF1開催とか運営とかそういう話ではなく、イベント運営能力の話。富士スピードウェイだってやろうと思えばできたはずなのに、やらなかったことを鈴鹿は成し遂げた感があります。

このイベントの充実は、来場者の分散化に当然大きな威力を発揮したことでしょう。だってこれだけの魅力あるゲスト、イベント目白押しですからね。まったく飽きることなくたのしく場内で過ごせました。

もうひとつ、出入り口についても言及しなければなりません。

鈴鹿サーキットの入り口は1箇所ではありません。広い広いサーキットのあちこちにゲートを設けています。

メインゲート
スプーンゲート
西ストレートゲート
デグナー東ゲート・逆バンクゲート
1コーナーゲート
プールサイドゲート
シケインゲート

これだけのゲートが設置されています。各ゲートは公道と接しており、ホテルなど宿泊施設から「臨時送迎バス」がついて観客を下ろす風景もみられました。そこまで車でこられると、歩くのはほんのちょっとで済みます。例えばスプーンカーブ(N席)での観戦で、スプーンゲートを利用すると徒歩1分で観客席。場内を1時間以上も歩くしかない富士スピードウェイとは大違いです。

また歩車分離の考え方。富士スピードウェイが敷地内にバス、自家用車が走っていたのに対して鈴鹿サーキットは場内はすべて歩行者のもの。交通アクセスや場内移動についても快適さは段違いです。

サーキット敷地という意味では鈴鹿サーキット内にオートキャンプ場があり、場内駐車場は24時間出入り自由で、車内泊OK。つまりレース期間中はずっとこの鈴鹿サーキットにとどまっていられます。そして何かあれば街にでかけていくことも可能。

例えば買出しでコンビニにいったり、温泉にいったり。さすがに予選日の夜の温泉は大混雑でしたけどそれは致し方なし。だからといって訴訟騒ぎが起きるわけではありません。

ここ鈴鹿でのF1日本グランプリを体験すると、富士スピードウェイは一体なんだったんだろうと考えざるを得ません。いったい何が違うのだろう、と。

簡単にいってしまうと、富士スピードウェイにはF1のレース以外は何もなかったということ。

エンターテインメントであるとか、ライブであるとか、お祭りであるとか。F1レースというのはそれを中心として色々なとらえ方ができると思います。参加する人がF1ファンからその家族、連れであることを考えると、F1マシンが走行しているのが見られれば、それでいい、というものではありません。F1を中心として色々な楽しみ方ができることが重要です。

食事というのはそのうちの大きな一つの要因でしょう。牛串焼はひとつ、象徴的なものに違いありません。値段もそうでしょう、ちょっとしたものが1000円以上してしまうのは、いかにもボッタクリであり、祭りとはいえ醒めてしまいます。

いかに夢中にさせていられるか、これがイベント運営の大切なポイント。楽しんでいただく、その姿勢の違いが明らかでした。その姿勢はサーキットの構造、立地、そして関わる人すべてから伝わってきます。

富士スピードウェイはあれだけの僻地へシャトルバスで観客を輸送し、そして毎日全員退場させること。そして周囲の地域と連携せず、自分たち(トヨタ)だけでやろうとしたこと。富士スピードウェイにはF1コース以外、何も存在しなかったこと。遊園地もなければホテルもない、温泉はもちろんないし、オートキャンプ場もなく、場内駐車場も公開せず。場内に留まることもできず、周囲にも何もない。

もう撤退した今となっては、これほどないない尽くしでF1日本グランプリを開催しようというのがそもそも無理だった、というしかありません。改修により確かに近代的なコースはできたかも知れませんが、それ以外は未だに以前日本グランプリを開催した1970年代のままだったということです。

ハードウェアだけではなく、ソフトウェアの部分を忘れてはなりません。

F1ファンは与えられた条件の中で、独自に努力して快適な観戦環境を作り出しています。例えば折り畳み自転車による移動がそれです。たとえハードウェアが多少悪くても、創意と工夫でなんとか乗り越えられます。鈴鹿はそうやってハードウェアの足りない部分を参加者が補っていく、いい関係ができていたように思います。

富士スピードウェイは1年目の杜撰な運営に比べれば、2年目は円滑でした。ただやはりこの20年の歴史を持つ鈴鹿とは「イベント」としては比較になりません。成人した大人と、生まれたばかりの赤ん坊のような差があります。プライドばかり高く、自分たちでできると自信満々にやった結果がアレで、結果犠牲にしたのはF1を楽しみに来た観客。しかも結局は「採算が合わないから撤退」というのでは、金儲けのためにやったとしか思えません。

もちろん昨今の経営を取り巻く経済環境というのは厳しいです。しかしそれはホンダやモビリティランドにしても同じこと。何もトヨタ、富士スピードウェイだけが厳しいわけではありませんね。そして10年後まで見通せばハイブリッドが堅調なトヨタについてはまだまだ未来が、可能性があるのではないでしょうか。

とはいえ、いずれにしてももう富士スピードウェイはF1日本グランプリの開催から完全に撤退し、来年も鈴鹿サーキットが開催を決定しています。F1の歴史に汚点を残した以外に何が得られたのか。そんなことを考えながらぼんやりと高速道路を帰ってきました。

来年は家族を連れて鈴鹿サーキットへ行きたいですね。日曜日もステイし、帰りは月曜日にのんびりと帰ってきたいです。その頃には高速無料化できているのかな、いや無理か。

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