地獄のF1富士が天国に変わった3つの理由

今年2008年、富士スピードウェイ(FSW)で開催されたF1日本グランプリは天候にも恵まれ、無事に終了しました。もっとも憂慮された交通機関、チケット&ライドシステムはうまく機能し、三日間通して大きな問題もなく、また目立った渋滞や待ち時間もなく予想以上にスムースに運営されていました。

昨年の様子はこちら⇒F1 日本グランプリ in 富士スピードウェイ 2日目:地獄絵図

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(2008年:決勝終了後、山中湖行きバス停。待ち時間ゼロ)

ではなぜこれほどまでに上手くいったのでしょうか。それは以下の方策を徹底して行ったからではないでしょうか。

1) 集中から分散へ

2) ボトルネックをなくす

3) 運営を徹底し十分以上の人員配置

1) 集中から分散へ

まず去年2007年のF1富士。地獄絵図となったバス乗り場ですが、これはいくつもの行き先のバス乗り場を一箇所に集中させたことが大きな要因となっていました。簡単にいうと大きくわけて東西2つのゲートに東西ふたつのバス停、といっても良いでしょう。つまりこの2箇所に集中させています。

一方今年2008年は富士スピードウェイ場内のあちこちにバス停を分散させました。昨年の東バス乗り場は12の行き先のバス停が集中していたのに、今年はたったの1箇所です。

2007年予選終了後
(2007年:12の行き先が集中した東シャトルバス乗り場。予選終了後撮影。列が入り混じってどこ行きの列かどうか分からず、観客自身が付近の人にどの列か聞かないといけない大混乱)

2008年予選終了後
(2008年:1つの行き先のみになった元東シャトルバス乗り場。予選終了後撮影)

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(2008年:同上。最後尾看板を持つスタッフ。看板を持つまでもなく分かりやすい状況)

動画による比較はこちら⇒今年のF1富士は地獄から天国へカイゼン?

同じことがいえるのは仮設トイレの配置。大量の仮設トイレを集中して配置する方法から、少量の仮設トイレを場内のいたるところに配置しています。もっとも去年数自体が入場者数に対して足りていなかったという側面もありますが、分散化させることで待ち行列自体が短くなりました。

2) ボトルネックをなくす

まず大きなところではチケットゲートがなくなりました。その代わりにバス乗り場できちんとチケットを確認しています。もちろん指定席の入場の際にはチケットゲートがあるのですが、それは各指定席でのみの話。つまり自由席のチケットはバスに乗るときだけ見せればよくなりました。

昨年主要場内道路を観客と車道で区切り、通路が狭かったところも観客専用とされました。これによってVIPカーが通行するたびに観客がとめられることもなくなり、移動がスムースです。

2007年予選後
(2007年予選終了後)

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(2008年予選終了後)

そして屈曲した導線や、制限された移動導線は撤廃され、なるべく人がまっすぐ、最短距離で移動できるように工夫されています。とくにスピードウェイプラザからトンネルを通ってF1ビレッジへと行くところは特設の階段が設置され、直線的に移動可能です。

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(2007年はこのガードレール沿いが通路、上の段に上る階段はダートのまま。その後屈曲しチケットゲートへ。2008年撮影)

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(2008年:上記写真の場所の右側に設置され、トンネルへ直通できるようになった特設階段)

バスの移動は完全にコントロールされ、時間単位で何台通すかまで計算されているようでした。これによって予めわかっている「交通容量(道路上を通行できる単位時間あたりの車両数)」を超えることのないようにしていました。この交通容量を超えると渋滞が発生します。わかりやすくいうと一升瓶をさかさまにすると水が出てくるのが滞ってしまいますが、斜めにするとスムースに水が流れるという原理です。今回はバスが一気にゲートに流入するのを各乗り場からの出発を時間でコントロールすることで制限、制御しているようでした。同じことはゲート外の道路にもいえ、東ゲートから出た車両が西ゲートから出る車で滞ることのないように制御されていました。

また今回大きかったのはシャトル方式をあきらめたことでしょう。シャトルにした場合は出たバスがいずれ帰ってくる必要があり、それにより交互通行による交差点のボトルネックは計り知れません。これを最初にあきらめた時点で、午前は主にバスを場内に入れる、午後は主にバスを場外に出すと、ほぼ一方通行を達成したことが大きいでしょう。

3) 運営を徹底し十分以上の人員配置

人員は大きく分けてスタッフ、ボランティア、警備員(交通誘導員)から成っていました。スタッフとボランティアの違いはよくわかりませんが、なんとなくスタッフは運営、ボランティアは情報管理(情報流通)という区分けのよう。いずれにしても各所に過剰なまでに配置されて、挨拶が徹底されていました。

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(2008年:ボランティア)

警備員(交通誘導員)は観客優先で交通をコントロール。昨年のようにVIPカーが通るから観客を止めるといったことはありませんでした。また場内の観客の移動も左側通行を徹底しています。

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(2008年:交通誘導員)

また分散化されたトイレですが、それでも決勝日は混雑して待ち行列ができてきます。そこでトイレに誘導員を配置して円滑に列の誘導をして、空いた便所がでないように効率よくまわしていました。

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(2008年:トイレ)

・・・

これらの方策により3日間通して円滑にチケット&ライド方式は運営することができました。待ち時間がほぼ0、あっても5分程度。しかも道中もほとんど渋滞なし、公称所要時間を下回る時間で到着するのは去年と比較すると本当に信じられないくらい上出来です。

それともうひとつ。今回の円滑な運営を助けた大きな要因。それは・・・

来場者が圧倒的に少なかったこと

チケットは売れ残り、直前まで電話受付で購入可能、さらに開催期間中は前代未聞の指定席のアップグレードまで行われる始末。そこまで売る努力をしたにもかかわらず、スタンドによってはガラガラ、1/3も埋まってない席が現れるほど。ヘアピン前のF席は見るも無残な光景を晒していました。

FSWの発表によると決勝日10万5000人来場したとのことですが、業界では実数の倍をいうのが慣例。実際には5万人から7万人くらいしか入っていなかったのではないかと予想されます。

FSW.TV

富士スピードウェイ株式会社は、10月12日に開催された「2008 FIA F1 世界選手権 フジテレビジョン 日本グランプリ」決勝日の入場者数を105,000人(大会3日間合計213,000人)と発表しました。

昨年のように(公称)14万人来場し、雨が降った場合円滑に運営できるかどうかはまだ未知数ですが、少なくとも今回の運営はとてもスムースだったといえるでしょう。今年来場された方が無事に帰途につけたことを、とてもうれしく思いました。

観客の皆様、運営関係者の皆様、お疲れ様でした。


【その他2007年と2008年の比較写真】

F1富士:天国と地獄(2007年と2008年)の比較 ([の] のまのしわざ)

【2008年F1富士の様子】

今年のF1富士は地獄から天国へカイゼン? ([の] のまのしわざ)