もう5ドアはたくさんだ! 欲しいのは2ドア、3ドアHBのカッコイイクルマ

NSX Cruise
(写真:flickrより)

突然ですが、今新車で買える2ドアクーペ、3ドアハッチバックの日本車をリストアップしてみました。(ただし、トラックとオフロード系は除く)

トヨタ
2ドアクーペ 0
3ドアHB iQ、ポルテ

日産
2ドア GT-R、スカイラインクーペ
3ドアHB フェアレディZ

ホンダ
2ドア 0
3ドアHB CR-Z、シビック TYPE R EURO

マツダ
2ドア ロードスター
3ドアHB 0

ダイハツ
2ドア コペン
3ドアHB 0

スバル 全滅

三菱 全滅

スズキ 全滅


・・・まさに惨憺たる結果。

トヨタにしてもiQとポルテというどちらもかなり変わったクルマで、クーペとは呼べないシロモノ。

1980年代はどのメーカーも上から下まで2ドアクーペに3ドアハッチバックはあったというのに、ふと気付くとほぼ壊滅です。

一方1980年代売れない車の代表例は5ドアハッチバックにワゴン。ところが今はそればかりです。つまり右から左へ。極端から極端へと振れた結果が今の日本車の状況といっていいでしょう。

売れるクルマを作る。

確かにそれはある面では真理でしょう。

売れない車は作らない。

なるほど、それも真理でしょう。

では「クルマが売れない」と嘆いている昨今、今後はどうするおつもりなのか。さきほどの論理でいくと、売れないクルマは作らないのだから、

クルマメーカーは車を作らない、となりますね。

そうです、お先真っ暗ですよ!

何をどこで間違えてしまったんでしょう。その鍵をみつけるため、八王子の登場です。

八王子地域は東京圏でありながら車文化の発達した場所。田舎とは違いそこそこ電車がありつつもクルマがないと生活しにくい環境です。ここでよく見かけるのはもちろん売れているクルマは当然ですが、もうひとつは昔のクルマ、特に90年代のクルマです。

マーク2やコロナなどのセダン、そして3ドアハッチバックの軽自動車、アルトワークス、ミラターボ。

さらにAZ-1やビート、カプチーノも見かけます。さらに駐車場のこやしになっているR32 GT-RやNSX、AE86。

ここで観察できるのは2パターン。ひとつは若いころ、といっても40代50代に購入したクルマをそのままのっているパターン(セダン系)。年配の方が多いです。

そしてもうひとつは2台目のクルマとして、趣味と実益を兼ねているもの。R32やNSX、86はコレクション、軽ターボは軽快な移動の足として使われてます。

そしてどのクルマも今それに代わるクルマは存在しません。それは最初に指摘したとおり、2ドア、3ドアハッチバックが壊滅状態だからです。4ドアセダンもジャンル自体が消滅の危機にあり、4ドアに活路を見出したシビックも日本市場から撤退するというのが象徴的です。

好きでのっている人はいいでしょうが、買い替えたくても買い替えられないという側面もあります。だって、いずれにしてもお金がかかるんです、だったら好きなクルマ、楽しいクルマに乗りたいじゃないですか。

古いクルマは故障や維持費、さらに古くなるとパーツの入手性が気になってきます。1980年代のクルマは錆がでるし、1990年代のクルマも塗装やライトがもうダメです。でもエンジンだけは元気だし、電装系だってしっかりしてます。燃費だって別に悪くありません。それだけになおさら

5ドアハッチバック

の中で選べ、といわれてもどれも大同小異で選びようがないのが実情。だってヴィッツにカローラ、WISHとノアとマークX Zioとイプサムとエスティマとベルファイアで選べっていわれても、どれもAE86に似ても似つかないじゃないですか。せいぜいマークXでしょうか。でも2台目でマークXはナシですよね。

そうなってくるとどうしても外車に走ってしまうんです(自分もか?)

2台目のクルマは最小限がいいんです。ドアは4枚もなんていりません。ボディは大きいより小さい方が取り回しがいいし、軽くて燃費がいいです。遠出しないからカーナビもいりません。航続距離が短いEVでもいいですよ。

結局デザインのいいクルマ、運転して楽しいクルマを排除して売れるクルマを作った結果、クルマに興味と憧れをもつ若者を育てられなかったということです。その間若者は携帯電話とガジェットに流れていってしまったんですね。ならばクルマメーカーは次は携帯電話を作って売ればいいと思いますよ、もうクルマメーカーではありませんが。

最近CR-Zも見かけますが、同時に初心者マークを貼り付けているのもよくみます。

これはつまり「カッコイイ」という憧れで買っているんじゃないでしょうか。だって他にないですからね、3ドアハッチバック。もう選択肢がない。

そしてもう一つ、大きな問題はマニュアルトランスミッション(MT)問題。

売れるための三種の神器、オートマ、エアコン、パワーウィンドウ。これが1980年代のキーワードでした。ところがオートマが普及した結果、クルマの運転、ドラテクに興味をもつひとも急速にしぼんでいったのも事実。

そりゃそうですよね、オートマは走らせるのに技術いりませんから。

マニュアルはそうではありませんでした。シフトタイミング、クラッチ操作。まっすぐ走らせるだけでも技量が必要で、ガクンガクンとやっていたんじゃ助手席の女の子が酔ってしまうという緊張感。それだけにいかに運転をうまくするか、それが一つのステータスになっていました。

同時にコーナリング、ハンドルさばきも重要。極論すれば運転が上手な男性は、その他のこともたいてい上手なんですね。だから1980年代~90年代はドラテク本がものすごいいっぱい書籍を飾っていましたよ。ええ、いまのライフハック本と同じような勢いで。

5ドアにオートマ。

こればっかりになったことで日本のクルマ文化は死に絶えようとしています。いや、どのメーカーでもいいんですけどミニバン1車種くらい削って、3ドアハッチバックかクーペ作ったっていいでしょ。お金ない、お金ないっていってもどう考えても1970年代の石油ショックの頃に比べれば台数ベースでも金額ベースでも十分巨大な企業体ですよ。

今はさらに全部が全部「エコ」に走ってますけど、これは自分の首を絞めているようなもの。もともと内燃機関は「エコ」じゃないし、EVにしたってエネルギーソースが必要なわけだから、究極のエコは「クルマに乗らない」ことってすぐに消費者は気づいてしまいます。それに向かってのチキンレースですから、お先真っ暗。

しかもその「エコ性能」を高めるためにクルマとしてのドライバビリティを低下させるという本末転倒さ。アクセル踏んでもクルマ側で制御してスロットルをあけず進まないのがエライ、みたいな風潮。ますます運転したくなくなります。

このままでは「クルマに乗らない」に行く前に「運転が苦痛」になって「クルマを運転したくない」「クルマに乗りたくなくなる」のが自明です。

ということで、このままでは日本のドライバー、クルマメーカーが自滅してしまうので、再び提案です。逆転の発想ですよ。

まず

売れないクルマを作れ

そうです、売れるクルマを作っていたら、クルマが売れなくなっちゃったんですよ。だったら、(今は)売れないクルマを作ることでクルマは売れるようになります。え、意味わからない?

でも「売れるクルマを作ってきたプロ」たちが頑張って売れるよう努力しても、もう売れるクルマ作れないんでしょ。だったら再びいいましょう、

売れそうもないクルマを作れ」と。

売れそうもないクルマとは、妙チクリンなクルマのことをいうわけではありません。クルマの原点に立ち返り、人間が運転する移動体、を極めるべきです。

まず値段ですが、値段は

安くしない

高くする必要はありませんが、「この値段じゃないと売れない」という発想はヤメ。どうせその値段でも売れませんから。だから十分元がとれる値段設定に。パフォーマンスがいいのなら外車より高くていいんです、というか外車よりもパフォーマンスが高かったら値段が高くて当たり前じゃないですか。

つぎに大事な「大きさ」。大きさは

小さく、狭く

余裕をもった室内空間? ああ、そういうのはさんざん今までやってきましたよ。でももう売れないんでしょ。ならもう小さく、狭くするんですよ。別にロータス・ヨーロッパのようにしようってわけではないですよ。無駄を削るだけです。

そしてドアは

2枚か3枚

実用性を考えれば3ドアハッチバックでしょうかね。まあ実用性なんて二の次なんですけど、ここはデザインの観点で決めるべきでしょう。

現在の平均乗車人数は1.5名なので定員は

2名か3名

3名? 不思議でしょうけどこれからの時代は3名が流行ります。なぜならば今までなかったから。

それに一人っ子時代ですよ。うちも一人っ子でこれ以上増える予定なし。3名で必要十分。マクラーレンF1だって3名だったし。若いカップルでも3名定員なら子供産まれても対応できますよ。え、子供が2人になった? その時はクルマをもう一台買えばいいんです

さてそうなってくるとだいたいわかるのが、クルマの大きさはほとんどいらないということです。軽自動車かコンパクトカーサイズで十分。排気量でいえば660cc~1600ccクラス。燃費だってそもそも小さく軽ければいいわけで、さらにマニュアルだったらさらに燃費がいいわけです。え、奥さんが運転できない? ならもう一台買えばいいんです。奥さん用のオートマ5ドアなんて、それこそ有象無象ありますよ。

なんでもかんでも1台で済ませようとするからおかしなことになるんです。だいたいクルマメーカーなんだから、クルマ1台でも多く売りたいんでしょう。なら2台売ったっていいじゃないですか。

「いまならミニバンに軽自動車のクーペがついてくるキャンペーン!」

とか。

「いまだけスポーツカーに乗ろう!3年後の下取り保証キャンペーン!」

とか。そういえば子供ができるまでという約束でS2000を購入しましたけど、あまりもの素晴らしさに子供ができても手放さず、その代わりに八王子に引っ越した私がいましたよ。

さらに今常識となったものを捨てる作業に入ります。

「売れるから」「便利だから」という理由でついていったもの、これらが最早クルマをスポイルしています。だから全部捨てていきましょう。まず捨てるのは。

エアコン(クーラー)

夏暑いから大変じゃないか!といいますが、いいことを教えましょう。30度をはるかにこえる酷暑のときは、

クルマには乗らない

そういうときはバスでもタクシーでも、別のクルマでもいいのでそっちにして下さい。ちなみに私のS2000はエアコンいれるのは年に1回程度。なぜならオープンにできない酷暑のシーズンは乗らないから。基本オープンなのでエアコンはつけないんです。エコでしょ。

つぎに捨てるのはパワーなんとか関係。

・パワーウィンドウ
・パワードアロック
・電動格納、調整式ミラー

いらんいらん、ぜんぶいらん。特にパワーウィンドウはETCができた現在、料金所でスムースに窓を開け閉めするといった需要がなくなった今、まさに不要。

他に捨てるのは、

・カーナビ

もはやiPhoneや携帯などスマートフォンでナビできちゃう時代で、この傾向はどんどん進むんですよ。ビルトインのナビはもちろん、後付けのナビなんてすぐに陳腐化しちゃう。だから入れない。どうしても付けたいひとはオプションでどうぞ。

同じ理由で捨てたいのは

・カーオーディオ

iPhone/iPod、USBオーディオがつけばもうあとはいらない。TRF(トラフィックインフォーメーション)が欲しいという理由で今まではラジオがありましたけど、それもスマートフォンでいけますよ。ということでこちらもオプションで。

・カップホルダー、小物入れなど

そうそうさらにいえばいわゆる小物入れやグローブボックス、あれも全部廃止。えっ?

缶ジュースをおくカップホルダーは日本が始めて世界に広まった悪しき慣習。エアコンの前で冷やして、ってのはコンビニが今ほどなかった時代の話。

冷たい飲み物飲みたければ、コンビニでよってすぐ飲めばいい話です。ちなみにS2000、カップホルダーないも同然、あるけどシフトの邪魔になるので実質使えない、ステキ仕様。でも困りません。だってペットボトルを毎度開け閉めして助手席に転がしますから。

どうしても欲しいひとは、カーショップへいって買えばいいんです。いたれりつくせりのクルマ作りは一見美しいですが、自分でクルマを作る楽しみを奪っているし、周辺産業の衰退へとつながっていたんですから。だからぜーんぶオプション。そういえばカップホルダー、スマートではオプションでした。

本当の「エコ」とは無駄を省くということ。そして運転は楽しくあるべき。

あと大事なのは子供たちに夢を与えること。若者よりももっと若い世代ですよ。小学生とか中・高校生に「かっこいい」と思わせることが大事。例えば私の場合シティターボ、初代MR2、R31スカイライン登場時免許もってなかったけど憧れてましたし、そういう憧れがないと免許もとらなければクルマを買おうとしないわけですから。

カッコイイとは見てわかる性能。デザインも大事です。

「売れないクルマを作る」というのは、今は売れないかもしれないけど、10年後に買ってもらうためには必要なんですよ。世代がいったん切れると、復活は本当に大変です。

だからこそ、小さな2ドアクーペに3ドアハッチバックを。子供たちに夢を。




↓こちらも合わせてどうぞ!

なぜクルマが売れなくなったか?(序章)過剰な母性がクルマ社会をダメにした ([の] のまのしわざ)

なぜクルマが売れなくなったか?(本編)父性の復権こそクルマ復活の鍵 ([の] のまのしわざ) MR/RRがいいですね。


【Amazon】
クルマはかくして作られる―いかにして自動車の部品は設計され生産されているのか (別冊CG) [大型本]

4544910021