なぜクルマが売れなくなったか?(本編)父性の復権こそクルマ復活の鍵

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なぜクルマが売れなくなったか?(序章)過剰な母性がクルマ社会をダメにした ([の] のまのしわざ)

かくしてクルマは非経済的なものとなりました。

かくしてクルマはつまらなくなりました。

かくしてクルマは売れなくなりました。

ではどうやったら売れるのか?いや魅力を取り戻すのか。

原因は「過剰な母性(的なもの)」なので、その対義となる父性に着目します。

父性の復権。

父性とは「厳しさ」「耐え忍ぶ」「寡黙」「質実剛健」といったキーワード。これを取り戻します。

・移動手段、輸送手段からの脱却

お買い物に便利だから、人がたくさん運べるから。違います、単なる移動手段ではないのです。走ることが楽しい、楽しいから運転するんです。

・経済感覚からの脱却

燃費がいい?燃費がいいに越したことはありませんが、燃費よりも大事なものがあります。それはクルマにみあったパワーであり、ブレーキであり、ハンドリングです。

・便利、快適からの離脱

エアコン?パワステ?パワーウィンドウ?別になくたってクルマは走ります。全部要りません。窓だってこの際なくてもいいでしょう。

遊園地のゴーカート。あれはなぜ楽しいのか。何度でも運転したくなるのか。答えはここにあります。

ゴーカートには何もついていません。エアコンもカーオーディオも。窓もパワステも。ゴーカートで燃費を考えたことはありません。荷物が積めるか?積めませんね。どこかにいけるのでしょうか?いけません、同じところをぐるぐる回るだけです。でも楽しいんです。

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(F1鈴鹿2010:土砂降りの雨の中、フードもかぶらずゴーカートに乗る子供。F1予選は中止、翌日へ延期)

そうです、いつの時代でも乗り物は楽しいのです。乗り物が楽しい、だから乗り物に乗りたい、この根本的な欲求を忘れてはならないのです。この根源的欲求を取り戻そうじゃないですか。

今メーカーがクルマが売れないと嘆いていますが、原因を作ったのはメーカー自身。目先の売上にとらわれ、クルマのような違うものを作ってきたツケが回っただけの話。前述したように運転してもつまらない、苦痛を感じるクルマを作ってきた罰です。

今すぐクルマは売れません。今あるクルマは「楽しい、乗りたい」クルマではないからです。5年先、10年先を見越して根源に立ち返っていかなければならないのです。

最初に作らねばならないのは、スポーツカーです。それもスーパースポーツではなく、庶民のスポーツ。3.8リッターツインターボ、530馬力といったスーパースポーツではなく、150馬力くらいで。しかもFFではなく、後輪駆動。FFエンジンを流用するので自然と横置きライトウェイト・ミッドシップ2シーターとなるでしょう。

つまり現代にMR2(AW11)を蘇らせるという話です。

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そしてすべての装備を一度捨てましょう。パワーウィンドウ、電動ミラー、エアコン。特にエアコンは捨てるべき。夏暑い?そりゃそうです。汗が出る?汗臭い?そうです、それがスポーツってものです。体育会系なんですよ、スポーツって。それにみんなエコが好きでしょ、エアコンはエコじゃないですよ。

デザインも大事です。見てすぐにわかる、アイデンティティが必要です。

荷物なんて積めなくてOK。そもそも移動手段ではないのですから。ドライブして楽しい、峠を走って楽しい、意味もなく下道で日本海にいきたくなる、そんなクルマであるべき。

売れない?高くなる?そりゃそうでしょう。今すぐ売ろうとしてはダメです。

これはEVスポーツへの布石なのですから。

時代がEVになるのは、この趨勢をみれば自明。そしてEVになるのは当初20年先のことと思われていましたが、いまのクルマ業界をみれば5年~10年で完了することでしょう。都市部はEV、郊外・山間部はハイブリッドになります。これは間違いありません。

EV時代になったときでも、まだクルマは自動化されていません。相変わらずドライバーがハンドルを握って運転するんです。その時にドライバーに何を提供するか。従来カーメーカーがクルマを売っていたわけですが、これからはサービスを提供することになります。

それはモビリティサービスであり、ドライブエンタテインメントサービス。

EVはすでにその単体で成立しないモビリティサービスです。充電インフラが必要で、こまめな充電をしないと遠距離移動できません。アメニティはITと統合され、ナビゲーションとオーディオもひとつになります。総合モビリティサービスの一部として、クルマが存在しうるのです。

そして移動だけで完遂しない、エンタテインメントを提供せねばなりません。その原点が「ウキウキワクワク」する運転です。別にタイヤをならしながらコーナリングする必要はありません。すっとハンドルをきって、ピタッとラインにのせる、そのズバピタ感が得も言えない楽しみになるはずです。

それを分かりやすく訴えかけるのがライトウェイトミッドシップスポーツカーです。

現時点ではエンジンを使うことになりますが、3年後はEVへコンバート。そして6年後は新設計のEV専用設計スポーツカーへ。この流れは特におかしいものではなく、例えば三菱iや、スマートと同じアプローチ。どちらもピュアスポーツカーではありませんが、後輪駆動(RR)で素直なハンドリングが売りです。

リアエンジンはラジエータをフロントに取りまわしたり、マフラー・ガソリンタンクのスペース確保でパッケージングが大変です。しかしEVになった瞬間全部解決。大きなラジエータは不要、マフラーは存在せず、ガソリンタンクの代わりにバッテリーになるため。バッテリーはタンクと違うのでユニット分割しても搭載できるし、配管のかわりに電線でつなぐので自由度が高いです。

そうなると従来あったリアエンジンのデメリットがほとんどなくなります。一方フロントにエンジン(モーター)がないことで衝突安全性が確保しやすくなります。もちろんカートからF1まで、共通して使われているリアエンジンフォーマットと同じなのでハンドリングにも有利。

EVスポーツこそ、リアエンジン(リアモーター)の活躍の場です。

【余談】

日本語で「エンジン」と(電気)モーターと区別していいますが、英語ではガソリンエンジンも電気モーターも「モーター」といいます。その最たる例が2輪のことをモーターサイクルと呼ぶこと。(電気)モーター使ったモーターサイクル、ないのに。

【さらに余談】

PCのマザーボードにのっていてよく爆発する電解コンデンサ。この電気を蓄える電子部品をコンデンサといいますが、キャパシタとも呼びます。ただコンデンサは冷凍機の熱変換器の呼び方としても使われるので、特に自動車業界では区別してキャパシタと呼ぶのが主流となりそうです。

デザインも重要です。今ある背高、中広々なスクエアで実用的なものとは違う、非日常性、現実世界から乖離したユニークなものが求められます。窮屈で乗り降りのしにくい、でも一度体を滑り込ませれば5時間でも10時間でも乗っていられる、そんな居心地のいい空間。ある意味、オタク部屋のような乱雑で狭い部屋であるべきなのです。

ドイツメーカーが次々とEVを発表している背景には、ハイブリッドの特許をトヨタ・ホンダに抑えられていて、クリーンディーゼル施策が失敗した今、EVにいかざるを得ないという事情があります。しかしそのどれもがスポーツカーをコンセプトカーとして、実用的なコンパクトカーなどは二の次。ミニバンなんて皆無です。

これは「楽しい、乗りたい」クルマがなにかを「頭で」よく理解している、「身体」で分かっている共通認識だからと思われます。交通機関がクルマに大きく依存しており、特に高速鉄道網が普及してない中で、高速移動といえばクルマ。そのクルマから「楽しい、乗りたい」という要素が欠落した瞬間に、モータリゼーションが成立しない、つまりクルマ社会が成立しないファンダメンタルな社会要求であるからではないでしょうか。

その点でいえば日本においてクルマが「お買いものグルマ」「ゲタ」と呼ばれる、コンビニ、ショッピングセンターとの往復や送迎、近距離通勤にしか使われない実情とは大きく異なります。ただこの航続距離が短い点はよりEV向きです。

実は三菱が2007年に発表したコンセプトカー、i-Miev SportはまさにそんなEVスポーツカー。

iMiEV SPORT(アイミーブ・スポーツ)という三菱の電気自動車(EV)!
三菱 i MiEV SPORT - 東京モーターショー 2007 特集 【 carview 】
三菱の電気自動車コンセプト『i MiEV SPORT AIR』 | WIRED VISION

当時はリーマンショックも、原油価格高騰もなかったこと、まだEV時代がこんなに早く到来するとは思えず、さらにデザインが気に入らずまったく注目してなかったのですが、その内容をみると時代を完全に先取りしていました。

これですよ、これをやろうという話です。

デザインはもっと素人にもわかりやすい、スポーツカーの王道、ウェッジシェイプがいいと思います。だからMR2(AW11)なんですけどね。

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MR2はあのトヨタが日本初のミッドシップとして出してきました。今のトヨタのロジックでは考えられないアプローチですが。さて、どこのメーカーに期待したらいいのでしょうね。やはりEVで先行する日産なのか、それとも i-Mievを出してきた三菱なのか。はたまたハイブリッドと共にEV戦略も打ち出したホンダなのか。

とにかく面白い日本車がないのは日本人として残念なんです。EVスポーツださないと、日本のメーカーは自滅しますよ。日本語ワープロやPC-98が消滅したように、産業自体なくなってしまう可能性だってあるんですから。がんばれ日本。




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