いやほんと、ひさびさに震えました。
実は9月6日(日)までの会期だったので大慌てでいってきました。
展示は大河原さんの「メカデザイナー」としての半生を追うもの。ただ単純に時代順、作品を羅列するのではなく、作品の意味や位置づけを解釈し、整理しなおして展示されていたので物凄くよくわかるんです。
簡単に分けると3つ。
・ヒーローロボット路線:代表作 ガンダム
・コミカル路線:代表作 ヤッターマン、ヤッターワン
・ミリタリー・リアルロボット路線:代表作 ボトムズ、スコープドック
これらは今回のポスターにもなっています。
そして時代とビジネスモデルを分けて整理しています。
・1970年代~80年代:おもちゃ(ダイキャストモデル)
・1980年代~90年代:プラモデル
・1990年代~00年代:OVA、DVD販売
・00年代~:マルチ展開
なにが興味深いかというと、「メカデザイン」という職業が、ビジネスモデルと直結している点でしょう。
アニメが最初「セイカノート」など文房具などのグッズ販売からはじまり、マジンガーZを端に発する「超合金(ダイキャストモデル)」販売を主軸にすることでロボットアニメの大ブームが訪れます。
翻って作品はというと、おもちゃ=ダイキャストモデルを売るための30分の宣伝と化したきらいもあり、それに反旗を翻したのがリアルロボットモノと呼ばれた「ガンダム」という作品です。
そしてガンダムが開拓したのが、超合金ではなくスケールモデルであるプラモデル。実在することを前提に、1/100スケール、1/144スケールとスケールモデルにしたことでそれまでの「おもちゃ」から一線を画すことになりました。
その後ヒーローロボットものが終了します。これはおもちゃのビジネスモデルが立ち行かなくなったことと、エンターテインメントが多様化したことと符合します。
そして90年代からはOVA(のちにDVD)の販売。つまりアニメ作品自体を直接売ることで利益をうるビジネスモデルが出現します。
さらに00年代はそれらを含めてキャラクタービジネスや、ネットを通じたストリーミングなど多種多様なビジネス展開をすることになりました。
その時代の変化のなか、第一線で活躍しているのが大河原邦男さん。
興隆激しい業界の中、求められるメカを具現化する、しかも短時間のうちに良質なものを出すことにかけてはまさに第一人者といっていいでしょう。最初のメカデザイナーにして、最高のメカデザイナーです。
設定資料という形でメカデザインを提供する他、ポスターなども多くてがけ、やはり印象的なのは「機動戦士ガンダム(映画版)」のもの。前売り券を買うと入手できたポスターは当時部屋に貼っていたのですが、その現物!!!が展示されていたのですから、狂喜乱舞です。
大河原さんのポスターというのを今回網羅的に見ることができたのですが、どれも共通していることがあります。それは背景が素晴らしいという点です。メカを中心としているのですが、そのメインのメカを最大限に引き立てる背景を必ずつけていること。
それは情景であることもあるし、また効果線であることもあります。いずれにしてもポスターカラーをつかったマットな色合いと、メカのエッジの光沢や塗装ハゲなどが緻密に描かれていて、重厚感と存在感に圧倒されました。
これははやりキャリアの中で「デザインオフィス・メカマン」を経験していて、そのメカマンの中村光毅さんは美術監督としても名高いのですが、そういった経験から「背景」への配慮になみなみならぬものがあったんじゃないかと推察しました。
またメカデザインでリアルさを求める一方で、たとえばザブングルの変形では「ここはごまかしで」「アニメの特長を生かして(適当に変形させて)」という書き込みがあったりと、アニメの特性を理解したうえでの現実解を示します。そんなところがリアル、リアルだけではない懐の深さがうかがえます。
夢美術館は以前「安彦良和展」をやっているのですが、それと比べるとメカデザインはその結果としての「おもちゃ」「プラモデル」といった造形物ができ、それもまた同時に展示されていたのがよかったです。キャラクターだと、最近はフィギュアもありますがまだまだここ最近の話ですからね。その点大河原メカは多くのものが立体化されているので、デザインがそのまま造形物になっているのを目の当たりにできて、非常に興味深い展示でした。
1/1スケールのヤッターワン(一部)や、ザクのトマホークも展示されています。
平日だというのにかなりの人出で、特に学生が多かったようです。大河原さんは東京造形大出身なのですが、造形大は八王子にあるのでその学生さんが見に来ていたのかもしれませんね。そうか、造形大か、うちの子を入れるのにいいね、近いしとか考えてしまいました。
会期はこの土日しか残されていませんが、ご興味のある方は是非足を運んでみてはいかがでしょうか。
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