2008年F1富士:留め置きバスの数値検証

F1富士の開催概要が発表されてからしばらくたちましたが、今回はバスの「留め置き方式」について、数値的な観点から検証したいと思います。

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【留め置きバスについて】

まず今回はトータルで2500台を用意、往復させるのではなく敷地内に待機させる、留め置き方式としています。今回の検証では、復路(帰り道)を考えます。

2500台を留め置きするということは、バス1台が全長12m、車間を8mとして1台あたり20mとるとすると、直線に並べるとなんと50km!!

バスがゲートから外に出るのに安全確認や一時停止するため、平均時速5km/hで走行したと仮定すると、最後のバスが出るのに10時間(= 50km / 5km/h )かかる計算です。とはいえ地図を見る限り3ルートあるので等分すると3時間20分。しかし東ゲートから東方面に行く青色ルートはごくごく一部で、実際の各ルートの流量を考えると3で割れないのですから4時間くらいかかると見るのが妥当でしょう。

また実際に走行すると車間距離は8mではすまないので、これが18mくらいに広がるとすると(12m + 18m ) x 2500 = 75kmで、3ルートに分けても25kmになってきて、周辺の国道に影響するのは必至でしょう。というか、75kmものバスの列って、凄いですね。

【バスの乗降時間について】

1台のバスに50人が乗り込むのに最短で5分、余裕をみると10分程度かかります。

すると延べ時間は10分 x 2500台 = 25000分 = 416.6時間
さきほど計算では「4時間」で最後のバスが出てしまうわけですから、4時間以内に収めるためには
416.6/4 =104台
のバスに同時に乗れる必要があります。つまりバスターミナルでは104台のバスが停まれて乗れる設計にしなければならないということです。

これを下回れば乗客待ちで最後のバスが出るまで4時間以上かかってしまいます。

参考:F1富士シャトルバスの惨劇は人災である ([の] のまのしわざ)

【バス待ちの時間を減らすには】

上記の机上の計算はすべての外的要因を排除して、単純にバスの流量と敷地外ルート、乗降時間のみに着目して計算しました。ボトルネックとなるのはもうひとつ、敷地内バス通路の容量です。つまり同時に104台のバスにのったわけですから、104台が3ルート、実質上2ルートと考えてよいので、2ルートへ104台が殺到したとすると1ルートあたり約50台。1つのターミナルでは10分で乗車完了するため、10分毎にバスが出て行き、1ルートで50台こなさなければいけなく、各ルートに1車線とすると

10分 * 60(秒/分) / 50台 = 12秒に一台バスがいくわけです。

バスがゲートから出る速度を5km/hと仮定してますが、これを秒速に直すと1.38m/s。

1.38m/s * 12s = 16.666m

バスの長さが12mなので、実際には車間距離が

16.666m-12m = 4.666m

となって結構びっちりと連なることがここでも検証されました。問題はここまで車間が詰まるとどうなるか。渋滞が発生して、断続的に停止することが考えられます。そうなると最悪です。バスが停車し、バスターミナルまでそれが及ぶと今度はバスに乗車できなくなり、益々遅れます。そう、渋滞によるバス遅延発生です。

ですからこれを回避するためには多車線化が必須なのです。

2車線であっても24秒に1台のバスとなり、

1.38m/s * 24s = 33.333m
33.333m - 12m = 21.333m(車間距離)

となって速度は下がらないでしょう。逆にここで平均速度をあげて、一旦敷地外に出てしまえば信号もない一本道なので、比較的速度が上げられることは去年で確認済みです。

とにかく肝要なのはバスターミナルの乗降と、敷地内ルートでの交通容量の確保です。

今の懸念は車線数。東ゲートを出る緑のラインは4つのバスターミナルから合流して南へ抜けるし、西ゲートを出る赤いラインは3つのバスターミナルから合流して西へ抜けます。ここが何車線で運用されるのか。これが天国か地獄の分かれ道です。

とはいっても現在の計算でもバス待ちは最長4時間はかかるわけですが…

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