佐々木俊尚著「Flat革命」:(1)インターネットは何も変えてない

佐々木俊尚さんが書いた「フラット革命」を読んでます。

フラット革命
フラット革命
佐々木 俊尚

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まず所感ですが、かなりの大作で、各章で様々なテーマを取り上げていて大変興味深いです。分量が多くて読むのはそれなりにパワーが要るのですが、内容が新鮮で、明快な文章で読みやすいので通勤電車二日分でだいたい読みきれました。

佐々木さんはインターネットで「Flat革命」がおきつつある、という指摘をしているのですが、私は「実は革命なんておきてない、いや起き得ない」と感じました。その理由を何回かに分けて書きたいと思います。

インターネットは何も変えてない

インターネットの台頭により、マスメディアがブロガーを敵視しつつある、所属が明らかなマスメディアと、匿名でかかれるインターネットメディアの対立構造が起きていることを指摘してます。しかし実は匿名というのはインターネットの特性でもなんでもありません。というのも元々インターネットは所属が明らかな、記名文化だったからです。

日本におけるインターネットの前身はjunetと呼ばれる、産学による実験ネットワークでした。これに参加していた企業はいわゆるメーカー系企業、大学でいえば理系学科です。ここで発達したのはメールとニュースグループfjでした。

junetに参加できる企業、大学も限られ、さらにその企業体から参加できる人も限られる。といった状況下、メールも、ニュースグループ(今でいうなら掲示板)の書き出しは

「本名@所属企業体」

たとえば

「野間@なんとか大学です」

「野間@ソニーです」

といった形が主流でした。junetは明らかに記名文化だったのです。これは参加している企業体、参加している人間が限られているからもありましょうが、そもそもアメリカからやってきたネットワークであり、アメリカでの慣習をそのまま輸入した結果でもあります。

ところがfjに異文化が参入しました。それが

Niftyのインターネット接続です。

それまでNiftyという中の狭い範囲で醸造された、ハンドルネーム文化。本名ではなく、ID、ハンドルネームを使う。Niftyユーザーは所属や本名を明かすことなく好きなことをfjに書き込んでいきました。これには旧来のfjの住人たちは拒絶反応を示しました。しかし時代は確実に匿名文化へと進んでいきます。

そしてfjも時代とともに、廃れ、新しく台頭したのが有名な2chです。

2chは完全な匿名文化の象徴です。

実はNiftyと2chに共通するのは両者とも「日本で培われたネット文化」です。正確には日本人による日本人のためのネット文化です。もちろん言語は日本語。

いいかえれば日本語によるネット文化

とも言えましょう。日本語ネット文化匿名をより好んだのです。

(続く)