昨年の開催に引き続き、今年もYamaha Graphic Grand Prixが開催されました。
▼昨年の模様
・ネット時代のデザイン・ポータビリティ! ヤマハ・グラフィックグランプリ開催 ([の] のまのしわざ)
・ヤマハ・グラフィックグランプリ 最終審査・表彰式開催レポート ([の] のまのしわざ)
昨年のテーマは「存在」でしたが今年のテーマは
「いいの?」「いいね!」
とのこと。そして今回前回と大きく異なるのが新規参加のスプツニ子!さん。
そう、ヤマハグラフィック・グランプリの審査員はすべて男性。社長からデザイナー、日比野さんに至るまで、男・オトコ・おとこ。汗臭さはありませんけど、おっさんが集まるとどうしてもむさくるしい印象は拭えません。それを知ってか知らずか、今回颯爽と現れたのがスプツニ子!さんというわけです。しかも美女!
容姿だけではなく、そのバックグラウンド、才能、そしてなにより若さ。これらを武器に新幹線で単身ヤマハのある静岡に乗りこんでいったのです。
その新幹線の中で考えたテーマが今回のテーマとなる「いいね!」でした。ただそのままだとFaceBookの「いいね!」そのままになってしまうので、残る審査委員で色々と時間をかけて検討した結果現在のカギカッコ付きの「いいの?」「いいね!」になったというのです。
東京から静岡までの新幹線は1時間ちょっと。そしてテーマを決める会議は2~3時間。閃きは一瞬だったことでしょうが、それをブラッシュアップするのに大人の男がよってたかって数時間かけていった様子が伺えます。
審査委員の中の「紅一点」、この紅一点が審査委員というチームのムードメーカーになったことを端的に表すエピソード。紅一点が全体の雰囲気を引っ張るというのはゴレンジャーを端に発する戦隊モノでも顕著です。つまりモモレンジャー。
そういえばモモレンジャーも疑問形でしたね。
「いくわよ?」「いいわね!」
ということで昨年の第一回目は暗中模索だったヤマハ・グラフィックグランプリも第二回目となり、より軸がしっかりしてきた感がありました。
その中で入賞作品、そしてグランプリが発表されました。
【入賞作品】
「CDP - Clap Drawing Project」 金箱淳一
【受賞作品】
スプツニ子!さんを特に「いいな!」と思ったのはこのポージング。森さんの作品意図を汲んで自らノリノリのポージングを繰り広げ、会場の笑いを誘います。まさにエンターテイナー。実直で生真面目な「ヤマハ」ではなかなか見られない光景です。
【グランプリ】
グランプリはTwitterやFacebookの反響が大きかったオーディエンス賞を受賞した岡部さんの作品「行ってきます」がダブル受賞。
作品内容自体は非常にシンプルで、約4年間、毎朝「行ってきます」といいつつ撮りためた700枚の写真を集めたもの。最初家族はイヤイヤやっていたものの、そのうちに習慣づいて積極的に参加するようになったとか。これが一般の人と審査員の「共感」を呼び、今回の受賞につながりました。
写真、家族写真を時系列に並べるというだけの作品ですがここにポイントがいくつか含まれています。
・毎朝
・場所を問わず(家でも、帰省中の実家でも)
・誰も写ってない写真もある(家族が寝坊、病気などで欠席)
・途中家族が増えた(誕生)
特に大事なのが時系列ということ。
写真というのは時間を切り取る装置だということを再認識させられます。また家族の群像という、我々が社会生活をする上での最小で最短のコミュニティ「家族」の姿をとらえるといったことも、手軽さを感じさせます。
ようは誰でもできそうなのです。
正直ほとんど誰も岡部さんの家族に興味はないでしょう。興味をもつのはこの作品のもつテンプレート性、つまりこのだれでもできそうなことをもし、自分に、自分の家族にあてはめたらどうなるのか、そこに可能性を感じ、興味を惹かれるのです。
実際には毎日、4年間写真を撮り続けるというのは難しいです。ブログを毎日続けようとして、なかなかできないのと同じ。しかしそれが「ストック」として集まると作品としてこのようなパワーを持ちます。
写真のもつパワーはここでも感じました。
東日本大震災ボランティア:思い出サルベージアルバム・オンラインプロジェクト ([の] のまのしわざ)自衛隊の方が瓦礫撤去の合間に見つけた思い出、アルバムや卒業証書、位牌などを収拾しひとところにまとめてきました。その数現時点で12万点!
しかしこの多くが泥と塩水をかぶって湿ったままなので、近い将来カビの発生などでボロボロになり原型をとどめなくなります。
そこでITの出番、この写真を洗浄、スキャンしてデジタルデータ化、場合によっては画像処理することで鮮やかな思い出を呼び戻そうというものです。
記憶を記録。
共感を呼んだのは記録という手段だけではなく、私たちの記憶が刺激されたためでしょう。
デザイナーではない、一般の人が受賞したというのも今回のヤマハ・グラフィックグランプリが多様性を持ち、広がりをもつあかしだと感じました。
また来年も行われるとのことで、楽しみです。
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