ヤマハ・グラフィックグランプリ 最終審査・表彰式開催レポート

まずは審査する側からの紹介。
委員長、日比野克彦さんはこの間自分のプロジェクトで60馬力の船外機つかったりと、ヤマハ発動機製の素晴らしさを再確認。ヤマハの吉良さんは銀座ヤマハの外壁デザインを担当し、失敗すると一生失敗が残るので責任重大だったとデザインの難しさを語りました。

このコンテストには1500以上応募あり、審査する方も頑張らなきゃ、自分たちが感動できているかを問いただし、また今回の最終審査で作者の方に直接思いがきける機会があり、審査員も鍛えられるコンペティションであったとのこと。

最終選考に残った入選作品は7作品。それぞれが特徴的な作品で理解しやすいものから理解できないものまで様々。各入選者がその作品の説明、思いを直接言葉を通して伝え、今回の最終審査にも反映されます。

選考するヤマハさんとしては今まで作品でしか見てなかったものの、今回入選者自身が来賓したことで、まるで眼下の敵、強者があがってきた、という印象。またデザイナーとしてインスピレーションをたくさんもらったとも語っています。

入選者のプレゼンテーションが終わった後、最終選考審査。

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その後最終選考結果発表です。

・オーディエンス賞
 FBなどソーシャルでの投票
 松田雅史さん
  若い人が希望が持てない時代にいいコンテストありがとうございます

・日比野克彦賞
 森未央子さん
 朝こけて階段落ちした

・グランプリ
 楠陽子さん
 締め切り間際ギリギリ
 出すかどうか迷ったほど

入選者にオリジナルトロフィーが贈呈されました。

日比野さんの総評。
・アート、グラフィックの世界で自分を語ることは余りなかった
・作品に責任をもっって、多弁でなくていいから、自分の言葉で人にどう伝えるか
・それが大事な人の「存在」
・言葉じゃ足りない部分をグラフィックで伝える、コミュニケーション手段として使う我々だけど、言葉であり、身体、触感などをつかって伝えることも大事
・「作品を語る」これが大きな評価

主催したヤマハの感想。
・人生、環境、経験をつんできた方がいて、これからも文化を発信していく
・第一回、楠さんをグラフィックグランプリの存在として続けて行く
・たくさんの参加嬉しかった
・最終予選、アーティストに語ってもらうこと
・デジタルデータで提出、「存在」というテーマへのレスポンスはどうなるのか
・個性あふれる作品、多様性があって嬉しかった

受賞者のみなさん、おめでとうございました。

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今回のコンテストですが、このデフレ不況の時代だとややもするとすべてが委縮していく中にあり、特にアートといった直接経済に作用しないものが真っ先に縮小されてしまいがち。そんな時代背景にあってあえてこのようなコンテストを主催するヤマハ、ヤマハ発動機の両社の英断に恐れ入ります。今回第一回ということですが、今後継続していくことで、栄誉と歴史ある賞になっていくのではないでしょうか。

デザインと人との関係、今回のテーマは「存在」。「存在」するということは逆にいえば存在するようで「存在しない」ということが当たり前の世の中に蔓延していることの裏返しでもあります。例えば巨大掲示板への書き込み。匿名で書き込まれて、実際に書き込んだ人間が「存在」するのに、個人を特定できないがゆえにその存在が危うい、存在しないが同然のように結果扱われてしまいます。手軽に書き込めるのが匿名性のよいところですが、「存在」しないも同然のためにその内容がいかに正当であっても公平に評価されにくい環境です。

ネット社会が進むにつれ、直接的なコミュニケーションが希薄になる時代。時差や地域を越えることができる便利なインターネットですが、得られるものがある代わりに失われるものもある、ということを再認識させられます。その中にあって、あえて作品だけではなく、作者自身の言葉を使って表現することを求めた最終選考の試みは非常に興味深いものがあります。

最終的に人と人の最大のコミュニケーションの言葉ということです。言葉は言語であり、音であり、文字であり。言葉だけでもその形態は変容するもので、インターネットを使えばその言葉は遠くまで届く可能性がでてくるのです。古来から未来まで、どんなに環境が変わっても最終的にはコミュニケーション、これがすべての根幹なのだなあと改めて感じさせてもらいました。