ジブリの抱える欺瞞と矛盾が垣間見える緊急PDF配信

スタジオ・ジブリが昨日緊急PDF配信を開始しました。

スタジオジブリ - STUDIO GHIBLI - 小冊子『熱風』7月号特集 緊急PDF配信のお知らせ

2013年7月18日
小冊子『熱風』7月号特集 緊急PDF配信のお知らせ

『熱風』7月号の特集は「憲法改正」です。
この問題に対する意識の高さを反映したためか、7月号は多くのメディアで紹介され、編集部には「読んでみたい」というたくさんの問い合わせがありました。
しかし取扱書店では品切れのところが多く、入手は難しいようです。今回編集部では、このような状況を鑑みて、インターネットで、特集の原稿4本を全文緊急配信することに決定しました。
ダウンロードは無料、配信期間は8月20日18時までです。

問題はそのPDFの内容です(PDFダウンロードは上記リンク先よりどうぞ)。

・・・

「スタジオ・ジブリ」として配信されたPDFの内容は現行憲法(平和憲法)を維持し武力放棄、反戦平和を訴え、憲法改正を押し進める自民党の動きを脅威としています。

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ジブリはナウシカは反戦映画であるとしていますが、実際には故郷を守るために武器をとって戦いますし、ラピュタも大切な人を守るために自らの危険、命を顧みず戦うストーリーです。にもかかわらず平和憲法だ、武力放棄だ、反戦平和だといっても説得力がないばかりでもしそれをいうなら、ナウシカにしてもラピュタにしてもそういうストーリーで作りなおすべきです。それが表現者の本来の役目であり、分です。PDFで出している場合ではありません。

もっともそれをやったら風の谷は滅び、ナウシカは当然死ぬし、ラピュタも物語になりません。映画としてのカタルシスが皆無となり興業として失敗、商売にならないからスタジオ・ジブリも成立しません。ジブリ崩壊です。

ここにジブリの抱える欺瞞と矛盾があります。

商売として成り立たせるために、大衆が好むようなストーリーに仕立てあげているのです。そしてもしジブリ映画のテーマが反戦平和であり、それが大衆にきちんと伝わっているのであれば、例え国会で憲法改正案が通ったとしても、国民投票で信任されないはずです。だって、これだけジブリ映画ファンがいて、新しいジブリ映画をやるたびに金曜ロードショーでジブリ映画を再放送しているのですよ。ちょうど今月、来月もそうで、8月2日にはラピュタも放送されます。

にもかかわらず、さも憲法改正されたら国民投票で信任されて平和憲法がなくなってしまうかのごとき過敏反応。ということは明らかに分かってやっているのです、ジブリが映画のカタルシスを得るために大衆の好むストーリーにしていることを。そして大衆がいまどちらの方を向いているのかを。

宮崎監督にしても、鈴木プロデューサーにしても、高畑監督にしても、個々人がどういった思想、信念をもつかは自由で、何も問題ありません。なぜなら憲法でも思想・表現の自由が保証されているからです。しかしこれがアニメーション製作会社「スタジオ・ジブリ」として憲法改正についてのPDFを参院選前に「緊急配信」するとなると、その裏に一体何があったのかと、勘ぐってしまいます。つまり裏になにかしらの思惑が隠されているのではないかと。

ジブリに期待したいのは、こんなPDFをばらまくのではなく、表現者として、アニメーション制作スタジオとして国民全体が真の意味で反戦平和の気持ちをもち、国民投票で施政者の暴走を食い止めることができるインテリジェンスを持ち合わせるような映画を作ることだと思うのですよね。

ということで期待をもって、新作映画「風立ちぬ」を見に行きたいと思います。

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