「国際的観光旅行! アルファロメオ 147 TIの試乗レポート(前編)」の続き、いよいよ実走レポートです。
すでに街中でインプレッションしているのですが、これがワインディングや高速道路ではどうなるのでしょうか。
魅惑のイタ車! アルファロメオ 147 TI ミニ試乗レポート ([の] のまのしわざ)さてそんなツインスパークエンジン、走りはどうかというと。2L 150馬力なのでパワー感は普通。考えてみればSRエンジンのプリメーラ2.0Tmでも同じ馬力ですもんね。圧倒的なパワー感があるわけではありません。
しかし5速マニュアルを駆使してつないでいくと、これが不思議と気持ちいいんです。
5速シフトはストロークのある、まったりとした感触。ところがギア比とエンジンの「吹け下がり」とストロークによるシフトロスが完璧にシンクロ。自然と回転数がバッチリ合うんです。なにこれ、ある意味スゴイw
そんなマッタリ系のシフトストロークを駆使してのドライビングを支える足回りは、なんとフロントダブルウィッシュボーン!!
これまたマッタリ系のバネでストロークする足ですが、ロールしても路面をつかむつかむ。鋭いハンドリングではなく、ハンドルを切って、ロールして、路面をつかんで、フロントにトラクションをかけながら引っ張り出すコーナリング。
これは気持ちイイ。
なるほど、アルファロメオに魅了されるのも分かります。まさに乗ってみないとこの乗り味は分かりませんね。
いつもの山坂道。今回は日曜日、行楽日和ということもあり一般車はもちろん、バイクが多く走っています。実は私も中型自動二輪の免許をもっており、その昔はバリバリに走っていたわけですがあっけなく事故。その後はバイクに乗らずに今に至っております。
そんなわけで山坂道でバイクがきたら、基本的に譲ります。走行特性が4輪と2輪では違いすぎで、特にワインディングでバイクは明らかにハイペース。譲りまくっていたら前に5台ほどバイクがたまっていまいました。
先行する一般車がはけたところで待ってましたとばかり、バイク軍団がペースアップ。もちろんこれに追従します。
コーナーに合わせ、右に左にと車体を傾けてスムースに走るバイクたち。追従するアルファロメオ 147 TIもバイク同様、右に左にロールさせながらスムースにコーナリング。うお、同じペースで走れる! しかも気持ちイイ!
リズミカルなS字コーナーの連続、ぐっと回り込むヘアピンコーナー、奥でさらに曲率がきつくなるJコーナー、どのコーナーをとってもハンドルひとつで回れるんです。いわゆるあれですよ、
・切ったら曲がる
・さらに切ったらさらに曲がる!
・もっと切ったらもっと曲がる!!
キましたよ、あのコーナリングの三段活用「ハンドリング市民革命」です。
とにかくハンドルへのレスポンスが俊敏。切っただけで頭が入る、しかもそれだけじゃありません。切り足していけば切っただけ曲がるのです。フロントサスペンションだけのセッティングでこれは出ないのでしょう、多少緩いと感じる足まわりはリアで調子をとっている模様。
フロントとリアで沈み込み、ロールがかかればさらにグググと外輪に荷重がかかり曲がっていくのです。この感覚はまさにスキーのスラローム。
切り返しで遅れるかと思いきや戻りも早く、バイク同様右に左に機敏にロールを切り替え、シュプールを描けるのです。
このシュプールのおかげでコーナーはスムース。ハードブレーキも不要、多少路面のグリップを探るチョンブレをつい癖でするものの、基本的にはノーブレーキ、ハンドルだけでオールオッケー。コーナー手前でフロントに荷重をかけて、ジワジワロールをかけて荷重を逃がさず、といった手順は不要。運転手がやることはただただコーナーの曲率にハンドルの切り角を合わせるだけです。
その間シフトチェンジはというと結構ズボラでもOK。2L NAエンジンは下から上まで、よくいえばトルクフル、悪くいえばどの領域でも驚くほどのパワーがでるわけでもないのでついついシフトをさぼりがち。目を三角にして高回転をキープする、のとは正反対、ちょっと回転数低いな、というところでシフトダウンするくらいの緩さ。
とはいえ2速で引っ張れば結構な加速力。スポーティかどうかでいえば間違いなくスポーティです。でもハイパフォーマンスかというとそんなことはない、
気持ち(マインド)がスポーティ!
速度を出さなくても、出ていなくても気持ちがいい、そんな作りなんです。感性駆動というか、フィーリングがいい、こうなんていうか走らせているだけで高揚感があるんですね。その意味でもやっぱりバイクにちょっと似ているのかも。
ここにルノースポールとかハイパフォーマンスカーがやってくれば、そりゃもちろん速さでは敵わないと思います。比較すれば間違いなく速くない、しかし走らせてみれば同じように感じる、とにかくコーナーが面白いんですよ。
このラインに合わせようというドライバーの意思にピッタリ合うんです。しかもハンドルの切り角とロール量がバッチリシンクロしていて、ああ、今はここまでロールしてるんだなとはっきり伝わってくるんです。
もうこりゃあサスペンションの限界だろう、アンダーでても仕方ないよ、出してもいいよ、という領域までいっても、最後の最後に 215/45R17のタイヤが踏ん張ってくれます。この踏ん張り方はまさにダブルウィッシュボーンのそれ。タイヤ面がきっちりと路面に当たっている感触が、ハンドルから伝わってきます。だから安心して曲がっていけるんです。
ハイパフォーマンスでもなく、スポーツともちょっと違う感触。楽しくて速く走っている気分になれる、という
ハイ・フィーリングカー
とでもいえばいいでしょうか。日本車でいえばビートがこれにあたる?
ビートのハンドリングは超アンダーであまり褒められたものではないですが、あの狭いコックピット、オープン、バイクのようにビービー叫ぶエンジンを高回転で引っ張って走らせるのはまさに非日常空間。本当に楽しかったです。いまだにファンが多いのもうなづけますし、自分も機会があれば欲しいですね。
147 TIのもうひとつのいいところ、路面の悪いワインディングを走っていてもなんてことないってことです。舗装がツギハギだらけだろうが、減速帯でペイントがあろうが関係なく、緩めのブッシュとLSDなしのデフがぺったりと路面を掴んでくれています。ボディにはなにやらブルブルと振動だけが伝わってくるのですが、ハンドルもアクセルもキープのまま、なんてことなく走りぬけていけるんですね。非常にラクチン。
このラクチンさ加減が「国際的観光旅行」と翻訳された TI、Turismo Internazionale の真骨頂。
高速道路でも同じ、100km/hで5速3000回転。ちょうどトルクが出る回転数なので加速するもよし、クルーズするもよし。ハイペースで飛ばしたければアクセルを踏み込めばいいだけです。
アルプスやピレネー山脈のワインディング、制限速度130km/hのフランス・オートルート、制限速度140km/hのイタリア・アウトストラーダ、速度無制限のドイツ・アウトバーン。ワインディングから高速クルージングまでヨーロッパ旅行を難なくこなすことが出来そう。緩めのブッシュと長いストロークのクラッチとマニュアルシフト、本革製でゆったりと包み込むシート、左右独立で調整可能なオートエアコン、どれをとってもロングランにピッタリ。
タイトで荒れた路面の山道、石畳の街並み、100km/hを超える高速道路でのハイスピード巡航、場所を選ばず、しかも気負わず、ゆるゆるで。なによりどこを走っても気持ちイイ。
人生をギンギンに生き急ぐのではなく、楽しむものだというイタリアンな感覚が丁度出ているのではないでしょうか。
もちろんこのアルファロメオ147にはさらにスポーツグレード、GTAが控えているので、「何人たりとも!」という場合にはそちらを選べばヨシ。でもそこまでギンギンでなくていいよ、もっとスパゲッティと女性と人生という旅行を楽しむんだという向きにはピッタリな TIでした。
もっともこの緩さは、キッチリしたいタイプにはハッキリ好き嫌いが出るかも。ウィンドウモールのチリはあってないし、ドアも多少下がってきたり、ヘッドライトもちらついたり。なにより「必ず壊れる」と言われるほどの評判なので何が起こっても不思議はなし。でもそういった清濁あわせ飲むと、陽気なイタ車人生が歩めるでしょう。エンジョイ人生!
今回のアルファロメオ 147 TIは17年来のモータースポーツの友人、元ダートトライアラーO氏にお借りしました。どうもありがとうございました! やっぱり人生たのしまなきゃね。
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