レクサス暴走死亡事故に端を発したトヨタ大規模リコール問題の続報です。これまでの経緯は以下を参照してください。
フロアマットがなくても暴走するトヨタ車?:販売停止、原因が判明、リコール ([の] のまのしわざ)
フロアマットがなくても暴走するトヨタ車?:米国トヨタがアクセルペダル機構上の問題でリコール ([の] のまのしわざ)
まず修理方法について。
トヨタ、アクセルペダルの修理について米道路交通安全局と協議 | ビジネスニュース | Reuters [デトロイト 28日 ロイター]関係筋によると、トヨタ側が提案している修理方法では、既存のペダルに「スペーサー」や「シム」と呼ばれる部品を取り付け、ペダルの戻り方の不具合を解消する。
「フリクションレバー」と呼ばれる部分が劣化、磨耗することでアクセルペダルが戻りにくくなるとされているので、アクセルペダル全体ではなく該当部位を補修・改良することで修繕するものです。コストや環境のことなどを考えると非常にリーズナブルではないでしょうか。ただ未だに原因となった部位の写真や、具体的な修繕方法についての図解といった情報は明らかにされていないようです。
米下院委員会、トヨタのリコールで2月25日に公聴会を開催(ロイター) - Yahoo!ニュース [ワシントン 28日 ロイター][ワシントン 28日 ロイター] 米議会は28日、トヨタ自動車<7203.T>がアクセルペダルに不具合が生じる可能性があるとして米国で行ったリコールについて、同社と米道路交通安全局(NHTSA)から文書やその他の情報を求めた。
下院エネルギー・商業委員会のワクスマン委員長は、トヨタの幹部とNHTSAに宛てた書簡の中で、2月25日に公聴会を開く意向を示した。
同委員長は「多くの消費者と同様にわたしもトヨタが最近行ったリコール発表の深刻さと範囲について懸念している。トヨタが安全面での不具合に対処するため講じる措置についてもっと知ることを望んでおり、トヨタが安全でない自動車を米国の道路から排除するため、NHTSAと引き続き協力していくことに期待している」と語った。
同委員長によると、公聴会は、トヨタと規制当局がリコールされた自動車の安全性に関する消費者の苦情に「どれだけ迅速かつ効果的」に対応したかについて取り上げる。
NHTSAとトヨタのバトルはこの半年熾烈を極めています。
今回の件はアメリカ当局による陰謀説まで流れていました。しかし、
<トヨタ>07年に不具合把握 リコール見送り(毎日新聞) - Yahoo!ニュース 1月30日19時47分配信 毎日新聞アクセルペダルの不具合による米国での大規模リコール問題で、トヨタ自動車が07年に米国のユーザーから「アクセルペダルが戻りにくくなる」と苦情を受けていたことが30日、分かった。トヨタはこれまで、09年秋に米ユーザーから苦情を受け、ペダルの不具合を把握したとしていた。
トヨタによると、苦情があったのは07年3月で、ピックアップトラック「タンドラ」のアクセルペダルの戻りが悪いという内容だった。調査の結果、ペダルの戻りを調整する部品が湿気を吸って膨らむことが分かったが、「安全面で支障はない」と判断しリコールを見送った。また、欧州でも08年12月ごろ、顧客から「アクセルペダルが戻りにくい」とクレームがあったが、欧州当局とも協議した結果、「安全面に問題はない」と判断したという。トヨタはこれらの経緯を米当局に報告しているが、07年時点で踏み込んだ対応をしていれば、今回のような大規模なリコールに発展しなかった可能性もある。
このように不具合を把握しながら適切な対応をせず、黙殺したのは三菱のリコール隠しと同じではないでしょうか。
三菱リコール隠し - Wikipedia三菱リコール隠しは、2000年に発覚した三菱自動車工業の乗用車部門とトラック・バス部門(通称三菱ふそう、現在の三菱ふそうトラック・バス)による大規模なリコール隠しをいう。
その後、トラック・バス部門の更なるリコール隠しが2004年に発覚。乗用車部門も再調査され国土交通省によると2000年の調査が不十分だったことが判明し、会社の存続の危機に遭遇している 企業倫理の問題として、自動車業界とは異業種ではあるが、松下電器産業のFF式石油温風機の欠陥問題やジョンソン・エンド・ジョンソンの毒物混入事件における速やかな対応などと対比されることもある。
今現在、三菱同様深刻な重大事故が発生してから、後手後手に追われてその対応のまずさがアメリカ社会でのトヨタの信頼を失墜させつつあります。
時事ドットコム:米議会、トヨタ問題で追及拡大=2委員会で調査、運輸長官聴取も【ワシントン時事】トヨタ自動車による米国内での大量リコール(回収・無償修理)問題をめぐり、米下院監督・政府改革委員会のタウンズ委員長(民主)は29日、来月10日に公聴会を開き、ラフード運輸長官から米政府の対応に関し意見聴取すると発表した。この問題では、下院エネルギー・商業委員会が北米トヨタ自動車首脳を呼んで公聴会を開くと決めたばかり。二つの委員会が同時に調査に着手する異例の展開となってきた。
トヨタは、踏み込んだアクセル・ペダルが戻らなくなる不具合が生じる恐れがあるとして21日に米国市場で約230万台のリコールを発表。26日にはリコール対象車種の販売と生産を一時停止する措置を打ち出したが、問題個所の詳細は明らかにしていない。
タウンズ委員長は、ラフード長官にあてた書簡の中で「一般国民の間では正確なことが分からず混乱が広がっている」と懸念を表明。運輸省による調査内容や他メーカーでの問題の有無などについて情報を開示するよう要請した。(2010/01/30-12:27)
三菱のリコール隠しの場合は国内メーカー、国内での重大事故発生が引き金となって日本国内で大問題になったわけですが今回の重大事故はアメリカで発生。そこが違う点ですが、これが日本で起きていたら、どうなったかは分かりません。
なお日本国内の反応としては、「日本のドライバーはトヨタの世界的リコールに動じていない」と報じられています。
Drivers in Japan unfazed by Toyota's global recalls | The Japan Times Online"Some of our customers express sympathy about Toyota's overseas problems," Naeko Kawamata, a saleswoman at a Tokyo dealership, said Saturday. "But we aren't getting queries on recalls."
So far, Toyota's reputation for quality is holding up in Japan. One factor in Toyota's favor is that people here often assume that Japan-made products are better than those made abroad ― meaning that their Toyotas are safe.
"I think Toyota cars are very reliable," said Takashi Itoh, a photographer whose family members drive Toyotas.
"The cars being recalled in China and the U.S. aren't made in Japan. They were made there. Those kind of problems definitely won't happen in Japan," he said.
「トヨタの海外でのリコールについて、何人かの顧客から同情を寄せられている」とトヨタディーラーのセールスマン、Naeko Kawamataさんは土曜日に語った。リコールの問い合わせも来ていない。
これまでトヨタの品質の評判は上がるばかりであった。一つの要因として、多くの日本人は日本製品が海外製品よりも優れていると信じているからで、つまりトヨタは安全だと思っている。
家族がトヨタ車に乗る写真家のTakeshi Itohさんは「トヨタ車はとても信頼性が高いと思う」と語る。
「今回の中国とアメリカでリコールがかかったのはメイドインジャパンの車ではない。現地生産の車だ。こういった問題は日本では起きないだろう。」と続けた。
日本製品は安全で品質が高い神話はまだ生きているということです。
そんななか、NYTimesではレクサス暴走事故から現在までの経緯をまとめた記事を掲載しました。かなり長いので一部だけ引用、翻訳します。
Toyota Slow to See Scope of Problem Even After Fatal Crash - NYTimes.comOn Dec. 26, a 2008 Toyota Avalon ― one of the cars under recall ― crashed just outside of Dallas. A police officer in Southlake, Tex., Roderick Page, said in an interview that “for undetermined reasons, the vehicle left the main roadway, and went through a metal pipe fence, striking a tree and causing the vehicle to flip and land upside down in a pond.”
All four people in the car died. “There was no evidence that they attempted to hit the brake or slow down,” he said. “Honestly, my reaction is, ‘Wow.’ ”
Two weeks later, an investigator from the National Highway Traffic Safety Administration visited Southlake to inspect the car, accompanied by a Toyota engineer. Mr. Page said one factor they immediately ruled out was the floor mats, which were in the trunk.
2008年12月26日、トヨタアヴァロン(リコールされているうちの1車種)がダラス郊外で事故を起こした。テキサス州サウスレイクの警察官、Roderick Pageがインタビューに対し「原因不明だが、自動車は車線をはなれガードレールに衝突、立ち木に激突した衝撃で横転し、逆さまになって池に落ちた」と答えた。乗員は4名全員が死亡。「彼らがブレーキをかけたり、速度を落とそうとしたかどうかの証拠はない」が、「私の感想は、正直、Wow、、、(言葉を失ったというニュアンス?)」
2週間後、NHTSAの調査員がトヨタのエンジニアと共にサウスレイクを調査のために訪れた。Mr. Pageいわく、「彼らは即座に原因の一つはフロアマットだと断じたが、実際にフロアマットはトランクにあった」
・・・コントでも、アメリカンジョークでもない話だから、まさに洒落にならないとはこのこと。今回私はこの記事を読んで初めて知りましたが、レクサスの暴走事故の半年以上前に起きていたことです。
【新聞ウォッチ】トヨタのリコール問題、米紙に異例の全面広告 | レスポンス自動車ニュース(Response.jp)記事によると、トヨタは米部品メーカーと協力し、ペダル部品の改善をすでに終えており、当局の承認を得て、具体的な改善策を発表。8日にも生産を再開できる見通しという。こうした中、トヨタはリコール問題に関連する全面広告を31日付のニューヨーク・タイムズなど米主要紙に掲載。対象車種の生産中断などの現状を消費者に説明、「効果的な修理方法を近く公表する」としているが、謝罪などの文面は見当たらない。
謝罪の文面が見当たらないことに対して批判が集まったのか、その翌日に謝罪をしています。
時事ドットコム:リコール問題で謝罪=米国トヨタ販売社長【ニューヨーク時事】米国トヨタ自動車販売のジム・レンツ社長は1日、踏み込んだアクセルペダルが戻りにくいなどの不具合で包括的なリコール(回収・無償修理)を実施することについて、「心からおわびしたい」と謝罪した。
同社長は「リコールが大きな不安を呼び起こしたことを理解しており、素直に謝る」とした上で、「二度とこのようなことを起こさないよう(品質向上に向け)一段と努力するつもりだ」と強調した。(2010/02/02-01:12)
さらにその翌日の2月2日、本社役員(副社長)による謝罪がありました。
トヨタ 副社長が陳謝…大規模リコール、初の会見(毎日新聞) - Yahoo!ニュース1月21日の米国でのリコール発表以来、トヨタ役員が国内で事情説明するのは初めて。
「世界の顧客に心配をかけた」--。会見は謝罪で始まった。トヨタは1月21日にリコールを発表、26日にはカローラなど対象8車種の生産・販売の一時停止も決めたが、改善策発表は2月1日にずれ込んだ。この遅れが消費者の不安を拡大したとの指摘に、佐々木副社長は「顧客に注意喚起を一刻も早く行おうとした結果、リコールと改善策の発表に時間差が出た」と説明した。
すべてが後手後手です。
アメリカ当局や競合メーカーの陰謀の説もありましたけど、やはりこういった後手後手の対応をみていると自業自得の感が強くなってしまいます。繰り返しになりますが、不具合を把握してそれが重大事故につながるものであれば「隠蔽」するのではなく、きちんと情報公開をして迅速な対応をすべきでしょうね。
今も裁判が継続している、富士スピードウェイ訴訟も結局のところこの隠蔽体質が作用しているのかもしれません。
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