internavi Sound of Honda アイルトン・セナ1989とライフログ

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東京モーターショー2013のホンダブースの片隅に置かれていたのが internaviのプロジェクト、Sound of Honda.

アイルトン・セナが、1989年の日本GP予選で樹立した世界最速ラップの走行データをもとに、新しい体験を生み出すプロジェクトです。 Ayrton Senna 1989

こちらはライゾマ真鍋さんが手がけたことでもよく知られていますが、今回internavi担当の方に色々裏話を伺いました。

ライゾマ真鍋大度さんに聞く、ライゾマ展 inspired by Perfumeの舞台裏 : ギズモード・ジャパン

これは1989年にアイルトン・セナが予選でコースレコードを樹立したときのログデータから音と光を使って再現をしたプロジェクト。全長5.8kmのコース全周にLEDとスピーカーを配置するため、DMXコードを6km分!手作りしたのだとか。

ログデータはテレメトリーで無線を通じてピットに送られ、それをプリンタに直接出力したもの。デジタルデータがフロッピーディスクに保存されていた、なんてありません、1枚の紙のみ。それどころか、そのプリントアウトを探そうと思ったら、ちょうど311で建屋が被害をうけ、建て替えをするために資料一式物置へごっそり移してしまってどこに何があるか分からない、ということでゼロから捜索、ようやく見つけた貴重なデータはライゾマ真鍋さんがスキャンしてデジタルデータ化しました。

次に問題なのは音データ。MP4/5自体の音データはすでにあるということで安心しきっていたのですが、なんとそれはMP4/5B、1990年モデル。一般人にしてみたら、大した違いではないと思いがちですが、F1ファンからしてみたら完全に別モノ。そこで慌ててホンダ・コレクションホールへ問い合わせてみたらMP4/5があるということで、それを録音しに行くことになりました。

しかしこのMP4/5が不調で実走できず。修理してツインリンクもてぎを走行して音データを様々な状況で録音してサンプリングしています。

そしてメインは鈴鹿サーキットでの音と光の再現。

普段営業している鈴鹿サーキットを占有して使えるのは清掃日として設けられた4月の日のみ。本当はその日は誰も入れないのを無理やり予定を押し込んで予約。しかし雨だったらどうしよう、延期になったらもうできるチャンスはない、と切羽つまった状況だったのですが天候は我に味方、無事再現が可能となったわけです。

こうして半年に渡る壮大なプロジェクトですが、このプロジェクトの根幹はたった1枚の紙、資料の山から捜索して出てきたログデータです。これがなかったらまったく成り立たなかったのです。

これは何を意味するのか。

記録=データは時代によって、表現力が変わるということ。

ホンダがセナの走行データで世界最高レベルのAR技術を使ってみせてくれたログデータのすごさ:[mi]みたいもん!

そんなわけで、当時のホンダがすごかったとか、セナがすごかったなんてことは、当たり前すぎる話で、ログデータを残すということが、どれだけ未来に夢を残すということなのかという意味で、この「Sound of Honda/Ayrton Senna 1989」のメイキング動画をどうぞ。

「データの残り方は、どうでもいい。紙でもなんでもよくて、とにかく残っていることが大事なんだ」ということが、ホントによくわかるメイキングです。

極論すると、

「つべこべいわず、データとっとけ!」

ということです。そのデータがいつか、誰かの役に立つ時がくるのです。

えー、そんなこといったってー、と思うひとがほとんどだと思いますが、でもみんな自然にこれをやっているものがあります。そのひとつが写真。子供の成長記録だったり、食べるご飯の記録。

ブログ初期には「毎回ごはんとって、変なの!」とまで言われた慣習は、今では miilといったソーシャルアプリへと昇華しています。

写真館で家族写真をとる、というのはオールドファッションで今ではあまり見向きされませんが、実は定点観測という意味で非常に意味を持ちます。

高尾山~小仏城山を縦走 ([の] のまのしわざ)

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(2013年 帽子は鈴鹿サーキットのコース)

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(2005年)

データは時間を重ねることでさらに深みをもつのです。それを家族写真で実現した作品があります。

第2回 ヤマハグラフィック・グランプリ最終審査・表彰式開催レポート ([の] のまのしわざ)

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グランプリはTwitterやFacebookの反響が大きかったオーディエンス賞を受賞した岡部さんの作品「行ってきます」がダブル受賞。

作品内容自体は非常にシンプルで、約4年間、毎朝「行ってきます」といいつつ撮りためた700枚の写真を集めたもの。最初家族はイヤイヤやっていたものの、そのうちに習慣づいて積極的に参加するようになったとか。これが一般の人と審査員の「共感」を呼び、今回の受賞につながりました。

写真、家族写真を時系列に並べるというだけの作品ですがここにポイントがいくつか含まれています。

・毎朝
・場所を問わず(家でも、帰省中の実家でも)
・誰も写ってない写真もある(家族が寝坊、病気などで欠席)
・途中家族が増えた(誕生)

特に大事なのが時系列ということ。

写真というのは時間を切り取る装置だということを再認識させられます。また家族の群像という、我々が社会生活をする上での最小で最短のコミュニティ「家族」の姿をとらえるといったことも、手軽さを感じさせます。

ようは誰でもできそうなのです。

ホンダのライバル、ヤマハ(ヤマハとヤマハ発動機)主催のグラフィックグランプリなのですが、実は見えている景色は同じなのではないかという気がします。

そしてアイルトン・セナのプロジェクトに戻るとすると、たった一枚のプリントアウトが感動を呼び起こす理由がよくわかります。

第2回 ヤマハグラフィック・グランプリ最終審査・表彰式開催レポート ([の] のまのしわざ)

記憶を記録。 共感を呼んだのは記録という手段だけではなく、私たちの記憶が刺激されたためでしょう。

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映像とともに記憶を呼び起こすのは音です。それは声であったり、エンジン音であったり。その音を聴いた瞬間、当時の気持ちになれます。

ホンダは2015年F1復帰、NSXにS660とSシリーズの復活と、過去から未来へと今再び踏み出そうとしています。ホンダファンとして、こんなに嬉しいことはありません。ホンダの真髄をぜひまた見せて欲しいものです。