ニュルブルクリンク北コースでは色々なクルマが走っています。その中でもっとも目立ち、多かったのが911 GT3、しかもRS。
もはやニュルブルクリンクのカローラ、と呼びたくなるくらいの頻度で目にします。911以外ではルノースポール、メガーヌやクリオが多く、他にはフェラーリやBMWなどなだたる名車がずらり。GT-RやS2000は1台目にしました。やはりこの中で911の人気度は高く目につきます。逆に見なかったのはAMG系。不思議です。
これだけ911が人気なのはなぜでしょう。もちろん速いというのはあるでしょうが、インストラクターいわく「楽しい」ということ。
ニュルを走って分かったのが、その山坂道具合。平坦路はあまりなく、10%程度の勾配で下がっているか上がっているかです。
ブレーキを踏むと前荷重になり、リアの荷重が抜けますが、下り坂ではそれがさらに拍車がかかります。例えばFFのメガーヌだとただでさえリアが軽く荷重が抜けやすいのに、下り坂、しかも高速となるとリアがチョロチョロと逃げようとして薄氷を踏むような感じでブレーキを踏まなければなりません。
そこでリアエンジンです。
911はリア荷重で約1000kg。これだけの重さが後輪にかかっているので、下り坂でブレーキを踏もうともちょっとやそっとではリア荷重は抜けません。そもそも車輪の後ろ側に重量物であるエンジンがあるので逆にリア荷重が増えるくらいではないかと、予想されます。
逆に上り坂の場合、アクセルをあけて上っていきますがここでも荷重、トラクションが重要。FFではアクセルをあければあけるほど前の荷重が減ってトラクションが抜けやすくなる上、上り坂はさらに顕著に。しかしリアエンジン車であれば後ろに荷重がかかればかかるほどトラクションがかかるので、上り坂はさらに好都合です。
ということを考え合わせるとニュル北コースに911がぴったりなのです。
またクレストでのジャンプ、911はジャンプ姿勢が良く、4輪同時に着地することで安定性が高いという評判。このジャンプ姿勢をポルシェ博士が気に入って、RRにこだわっているという話も。
さらにGT3RSはというとギアがワイドで、パワーバンドが広いNAエンジン。3500回転から8500回転までトルクにのって走れて、シフトチェンジを頻繁にする必要がありません。特に緩やかなカーブでクレストがあるニュルのような場所で、ちょうどクレストでシフトアップ、着地後シフトダウンといった操作があるとただでさえクルマが不安定になるのに、さらに駆動力を切って、つなげてというのはできれば避けたいところ。
高回転型でパワーバンドの狭いエンジンで頻繁にギアをかえるのは、確かにドライバー的にはやりがいを感じますけど、実際にはそんなに速くもないし、危なっかしいです。
そう考えるとニュル北コースでのGT3RS人気もうなづけます。996GT3RSには若い女の子も乗って、普通に走ってたほど。
リア荷重、これが大事なんだなあとシミジミ感じました。リア荷重は正義。
実はGT-Rのアプローチも実は911と共通していて、リア荷重を増やすためのトランスアクスル構造で、ライバルは911といいつつも実はその狙いは同じなんじゃないかと感じた次第です。
RRは直進性が悪く、300km/hだと前が浮いてまっすぐ進まない、との批判もありますが、ということは逆にニュルくらいの速度域(150-250km/h)では曲がりやすく、一度曲がりはじめればその後のコーナリングが楽ということを意味します。どんなものでもメリット・デメリットが共通しますからね。
といったことを考え合わせると、「911は走って楽しい」という言葉は本当なんだろうなあ、一度911で走ってみたいです。
なお、インストラクターはこうも付け加えました。
「でも、初めてニュルを走る人に911はオススメしない(笑)」
まあ理由は分かりますね。まずはコースを覚えてから。
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この本の記事はとても丁寧で非常に分かりやすいです。
draco
ドイツレポート楽しませていただいています。
リア加重、最重要でしょうね。スマートでも、三菱iでもその片鱗を楽しめます。嘗てのアルフェッタ、トランスアクスルこれもリア加重のため。
ほとんどFFになってしまって、面白味に欠けるこの頃です。