クルマを買うときのコツ:カタログの見方(3)ミッション編


クルマを買うときのコツ:カタログの見方(2)エンジン編 」のつづき。

【ミッション】

エンジンに目を奪われてしまい忘れがちなのがミッション。当然ですがミッションがなければエンジンの出力はタイヤに伝わりません。この大事なのがミッションで、大きく分けて

・変速ギア
・ファイナルギア(最終減速)

に分かれます。

変速ギアというのは6速であれば6段階あるということで、これは自転車でもお馴染み。

ギア比で重要なのはこの多段ギアそれぞれのつながりの良さ(ステップレシオ)。



AudiとVWの6速DSGギア比の比較 ([の] のまのしわざ)

比較表をみて分かるように、2.0TFSIエンジンはA3, Golfともに同じ(上段)。

これに対してGolf 1.4TSIエンジンは最終減速比(ファイナルギア)がローギアード化されています。
4.058 -> 4.117
しかし5,6速は逆にハイギアード化されています。
3.136 -> 3.043

そしてA3 1.8TFSIエンジンは1速以外のギアがすべて変更されて、ワイドレシオに変更されています。
一方のファイナルギアはさらにローギアード化され、2.0TFSIに比較して
4.058 -> 4.375 (1-4速)
3.136 -> 3.333 (5,6速)
とかなり低くなっています。ですから出足はローギアード、高速巡航ではハイギアードとなるように設計されていて、ギアのつながりは上記2モデルよりもダルな印象でしょうか。特に4速以下はワイドです。

つながりの良さは「ステップレシオ」と呼ばれますが、例えば 1速と2速のステップレシオが60%であれば、1速で5000回転まで回して2速にシフトチェンジすると 5000回転 * 60% = 3000回転になるという話です。

ステップレシオが高ければレースカーのように頻繁にギアをチェンジしながら加速する、加速がよいことになりますが最高速が伸びません。昨今では高速巡航の燃費を稼ぐために回転数を低く設定したいのとも背反するので、ワイドにしたい、どうしよう、となると

・ファイナルギアをハイギアード化する
・変速ギアを増やす

という手法をとってきています。ドイツ車はアウトバーンを超高速で走行する必要性があり、小型車でも 6速、7速を用意しているのはこういった理由からです。

オートマにしても、マニュアルにしてもチェックしたいのはこのギア数とギア比、CVTであれば変速比がワイドレンジかどうかといったところ。

▼各車種でのギア比、ステップレシオを表にしたもの

ステップレシオが高ければ高いほどいいというわけでもありません。エンジンの特性と合わせてセッティングをしなければ燃費も加速のバランスがとれません。

経験的には日本車は全体的に0-60km/h加速重視のギア比となっており、街中では60km/hから、そして高速道路では100km/hからの加速が鈍る傾向にあるようです。まあ法定速度がそれだから仕方がないといえばそれまでなのですが、実勢とは多少かけ離れている印象です。

一方ドイツ車はアウトバーンがあるからか、小型車でも最高速200km/hオーバーは普通で、その速度が出せるギア比を設定しています。そのため100km/hからの加速も割合俊敏。

エンジン出力も大事ですが、走るステージに合わせて適切なギア比が設定されているミッションを選ばないと結構ストレスがたまります。ブーーーーン!(シフトアップ)モォーーーー...(加速しない)ということがままありますので。

日本車で多く使われるCVTは滑らかにギア比を変更することができるので、ステップレシオは関係ありません。簡単にいうと原付と同じような構造です。

教えて!AT・CVT・ハイブリッドシステムの仕組み:CVT|駆動系|製品事業|アイシン・エィ・ダブリュ株式会社

CVT(無段変速機)の仕組み、メリットは? : 性能・安全・仕組み : 質問BOX : クルマとエコのなるほどBOX : @CARS : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

通常のオートマチックは、歯車の大小を使って変速しています。これに対し、CVTはプーリーの直径に応じて変速するため、段差なく無段階に、滑らかな変速ができるのです。

 例えば、坂道を上る時、通常のオートマチックで2速ギアではエンジンが回り過ぎてしまうのに、3速ギアを選ぶとエンジンの回転が下がり過ぎて力不足になるといった経験をしたことはないでしょうか。こうした場合でも、CVTは2.5速というような変速状態をつくりだすことができるので、エンジン回転が上がり過ぎず、それでいてちゃんと力を発揮でき、坂道を快適に上ることができます。

 エンジンの効率がよく、力を発揮しやすい回転数をいつも利用できること、オートマチックでギアが切り替わる時のようなショックもなく、滑らかに加速できることが、CVTの長所です。

CVTはベルト駆動で変速が滑らかなので、いわゆる変速ショックがほぼ皆無であると同時に駆動力が途切れることがないことから燃費がよいとされています。

さてCVTには最大の弱点があります。それはいまどの減速比なのかサッパリ分からないという点です。

すべてはクルマ任せ、エンジン出力の美味しいところを引き出すというのが謳い文句なのですが、減速比が分からない状態ではエンジンの回転数と速度との関係性がドライバーに伝わらないのですね。

例えば3速3000回転で何キロでる、というのは減速比が分かっていれば予め分かるので、走行中に意識すれば速度域をドライバーが制御できるのですが、CVTではできません。必ずスピードメーターとにらめっこする必要があります。

スピードメーターを見てればいいじゃないか、という話もありますが、そうなると前方不注意ですし、なによりドライバーが上達しません。

最近はCVTでも減速比を何段かに分けて7段ギアというような使い方をするものも出てきていますが、その方が今何速、何回転で、何キロ出ていると分かりやすいので好ましいと思います。

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