音楽が売れない、CDが売れない、と言われて久しいですが、その理由にインターネットの発達によって違法ダウンロードがあると言われています。
一方で、新曲が売れなくなったもうひとつの理由として、もう新曲が飽和した、という指摘がありました。その理由はこうです。
元々音楽の流通の手段はライブであり、生中継(ラジオ、TV)が中心でした。その後レコード、カセットテープでのメディア流通が盛んになることで音楽は爆発的に普及していきます。
ここにCDが出現するわけですが、それまでのメディアは繰り返し再生すると破壊される時限メディアだったため、古い音楽は自然と消耗し、消えていきました。レコードにしてもカセットテープにしても何十回も聞いていると音は劣化し、場合によっては音飛びなど聞ける状態ではなくなるためです。
ところがCDは半永久的。いつ聞いても最初にきいた時と同じままです。
このCDが爆発的に普及したことで、世の中に名曲があふれかえりました。その後いくら新曲を出そうと、すでに名曲が世にあり、それを劣化することなく聞ける環境があるため、いい曲かどうかも分からない新曲にお金を払うことに抵抗が出たり、どの曲ももう似たり寄ったりで音楽のバリエーションとしてやりつくした、飽和したといってもいい状況になっているのでは、というものです。
確かに自分の例でいえば80's 90'sの音楽を聞いてさえいれば幸せ、なんてところがあり、新曲で追っているのはPerfumeくらいなもので、あとは普通にTM NETWORK、南野陽子、森高千里を聞いています。
今年デビュー25周年で勢力的に活動する森高千里さん、しかし新曲はありません。現在の活動は200曲セルフカヴァー、それを無償でyoutubeで流しているのです。
この森高チャンネル、現在では入手困難となった過去のPVやライブ映像まで流しており、マニア垂涎の映像満載です。
昔のファンにとって、昔の曲を何度でもきいても飽きないし、現在の森高千里が新しいアレンジで歌うことはとても新鮮。
NEW SEASONはデビュー曲ですが、この年で改めて歌うことで、まさに新しい「NEW SEASON」の意味を指し示しているといえます。
さて、無料提供の森高チャンネルの目的はなんでしょう。
ここに新しい音楽ビジネスのヒントがあるように感じます。
明らかに低予算な映像の作り、チープな合成で作られたセルフカバー映像。映像でいえば今話題のギャモンの方が圧倒的に予算も手間もかかっていることでしょう。
▼ギャモン(GAMON)-COME BACK HERO - YouTube
そして蔵出しPV、ライブ映像。過去のCDやLD/DVDを販売したいという意図はなさそう。あくまでも「森高千里」ブランドの再構成、プロモーションが目的でしょう。
森高千里は過去ではない、現在なのだと。
TV、CM出演、ドラマ...それだけはないな... そしてライブと他の活動でビジネスとして成立すればそれでOKなのです。
今回ライブ公演が決定しファン感涙なのですが、音楽の原点とは「ライブ」。
エジソンがレコードを発明し、メディアに記録し、それを販売することが音楽ビジネスの主流となってしまったことで「ライブ」の価値が見失われましたが、今こそライブが復権するのです。その復権を日本全国県庁所在地ツアーをやった森高千里だからこそ理解し、今この時代に再びライブに取り組むのです。
落語にしても、プロ野球、サッカー、相撲などスポーツにしても、ライブが一番。時間と空間を共有することで、感情も共有できるのです。
やはり森高すげえ、という話でした。
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森高千里としか言えない