「追い越し車線を走行し続ける車に追いついた場合」の法的解釈を調べてみました

道路交通法とは本当に摩訶不思議なものであります。

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最近よく見かけるのが、高速道路の追い越し車線をずっと走行し続ける車両。そして昨今のエコカーブームで走行性能が低下、またはドライバーの高齢化により制限速度に満たない速度で走行する車両たち。後ろから飛ばしてきた車はイライラ、渋滞発生の原因ともなります。

運転マナー云々の前に、そもそも法律的にはどうなのか、色々調べてみました。

秋田県警 道路交通法 第27条 他の車両に追いつかれた車両の義務についての回答 | 法律のQ&A【OKWave】

「制限速度60km/hの一般道にて
50km/hで走行するパトカーに追いついた場合、
パトカーは速やかに道を譲らなければならないのではないか?」
と秋田県警へ質問したところ、
いただいた回答が

『ご質問にある「60km/h制限の道路を50km/hで走行するパトカー」ですが、車両は、道路標識等によって指定された最高速度をこえる速度で進行してはならないこととされています。安全な速度での走行については、何ら問題ありません。また、「他の車両に追いつかれた車両の義務」についてですが、道路形態や交通規制等により「進路を譲る義務違反」の成立が左右されます。この場合、「追いついた車両」についても追越し時における注意義務が生じることとなりますので、違反にならないよう安全運転に努めてください。』

という内容でした。

さすがは警察、とても玉虫色な回答で、法解釈以前に回答の解釈の仕方がたくさんあるという時点で合格点です。簡単にいうと、

プーチン「お前はなにをいっているのだ

状態で、まあ結局は暗にスピード出すなよ、出したら責任発生するぞ、というようにもとれます。

法律の条文は以下です。

道路交通法

(他の車両に追いつかれた車両の義務)
第二十七条  車両(道路運送法第九条第一項 に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者による同法第五条第一項第三号 に規定する路線定期運行又は同法第三条第二号 に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度(以下この条において「最高速度」という。)が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

2  車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

この条文は以下のように解釈されます。

(他の車両に追いつかれた車両の義務) 第二十七条 車両(道路運送法第九条第一項... - Yahoo!知恵袋

この義務は、車両によって異なる最高速度がある為、最高速度が遅い車両は、追いつかれたら道を譲るようにというものです。

また、最高速度未満で走行している場合に追いつかれた場合は、相手が同じ最高速度の車両や最高速度が遅い車両でも道を譲る義務が発生します。

条文の1は追い越そうとする車両がいる場合はそれが終わるまで加速してはならない規定で、条文の2は狭い場合は左端に寄って道を譲るようにとの規定です。

車両には、自動車や原動機付自転車等の区分により最高速度が決められており、自動車の最高速度は60キロで原動機付自転車は30キロとなっています。
この最高速度を前提として、追いつかれた車両の義務が発生します。
なお、あくまでも一般道を走る「車両」の最高速度ですので、最高速度が制限されている「道路」の場合は、そちらが優先されます。

(中略)

これはあくまでも最高速度以下での話で、それを越える速度を出している車両には当てはまりません。
速度超過している時点で、法律違反ですので、そういう車に対して譲る義務は発生しません。

(中略)

【補足】
車両通行帯がある場合というのは、道路が2車線以上である事を意味します。
通常であれば一番右側の通行帯が追い越し車縁として使用できますので、そこを使って追越が出来る為、追いつかれた車両の義務は発生しない事になります。
その場合でも最高速度という上限は変わりませんが。
また、最高速度未満で走っているにもかかわらず、追い越し車線を走り続けるのは駄目ですけどね。

ここでいう追い越し車線を走り続ける行為は「通行帯違反」で、高速道路の違反の中では速度違反、シートベルト装着義務違反(現在は全席シートベルト装着)に次ぐ第3位の検挙数とのこと。

ご存じですか?通行帯違反 [自動車保険] All About

20条 1項

車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。

と定められています。要するに、「通行帯が2つある道路では左側の通行帯を、また通行帯が3つ以上ある場合には一番右側以外(つまり中央または左側)の通行帯を走らなければならない」ということです。

2/2 ご存じですか?通行帯違反 [自動車保険] All About

第20条 3項
車両は、追越しをするとき、第二十五条第一項若しくは第二項若しくは第三十四条第一項から第五項までの規定により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、第三十五条第一項の規定に従い通行するとき、第二十六条の二第三項の規定によりその通行している車両通行帯をそのまま通行するとき、第四十条第二項の規定により一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前二項の規定によらないことができる。この場合において、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。

ということで、基本的に

(1) 追い越しをするとき
(2) 緊急自動車に道を譲るとき
(3) 道路状況その他やむを得ないとき

に限って走行が許されるということになります。

つまり右側車線、追い越し車線は漫然と走り続けてはいけないことになります。これは法定速度以内であってもですし、当然法定速度を超えていたら法定速度違反と通行帯違反の両方を犯していることになります。

さてここで問題になるのがこの追い越し車線を漫然と走行し続ける車両の前に出たい場合。いわゆる追い越し・追い抜きをしたい場合です。

本来追い越し車線を使って追い越すのが正しいのですが、追い越し車線をブロックされていると追い越すことができません。なぜなら追い越しは右側からと決まっているからです。

【追い越しと追い抜きの違い】

道路交通法答え

左から追い越し(車線変更を伴い前方に出る行為)をする場合は違反となりますが、車線変更を伴わなければ抜いても構いません。

高速道路での「追い抜き行為」と「追い越し行為」の違いはどこにありますか? - Yahoo!知恵袋

教習所指導員です

道路交通法の第2条1項21号に『追い越しの意義』に関する内容がありますが...
追越とは『車両が他の車両に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。』と決められています

①前車に追いつく(自車と同一の進路上にいる前車に)
②進路を変更する
③その前車の側方を通過する
この全ての条件を満たした場合が『追い越し』です

進路の変更をしないで前車の側方を通過して前方に出る行為は追い越しに当たりません。このような場合を『追い抜き』と称して『追い越し』と区別しています。(追いつく前に進路変更した場合その行為には『前車との因果関係』が認められないのでここで言う『進路の変更をした』場合にはあたりません)

この『前車に追いつき...』とは具体的には『道交法26条』で決められた『必要な車間距離』まで近づいた時点で『追い付いた』となります。

その場合の具体的な距離は『時速50kmの時に18m・時速40kmの時に15m』などその時の走行速度が問題になります(この距離は過去の判例でその時の裁判で基準にされた『警視庁管内自動車交通の指示事項』の内容です)

つまり、たとえ進路を変更したうえで前車の側方を通過しその前方に出たとしても、その『進路の変更』が追いつく前に行われていれば『追い抜き』となります。

この事からご質問の『高速3車線で中央ラインをノンビリ走る車両を路肩側の車線から前に出る』は、その車両に「追いつく前」に走行車線(左車線)に進路変更していれば『追い越し』では無く『追い抜き』となるので、追い越し方法の違反とはなりません。

追いついたとみなされる距離=必要な車間距離より離れて走行車線に戻れば追い越しに当たらないという解釈です。

あと当たり前ですが、車線変更の場合は「手、方向指示器又は灯火」による合図を行い、行為が終わるまで合図を継続しなければなりませんので、マルドナドやグロージャンばりの車線変更はできませんのでご注意を。

法的解釈はこうですが、大抵の場合追い越し車線をずっと走っている車は「廻りを見ず漫然と走っている」か「オレの前は何人たりとも走らせない」という人が多いので、その前に出るのは色々な意味で危険をはらみます。こちらも気をつけた方が良さそうです。

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