今話題の、中国との国境の島に上陸してきました。

といっても中華人民共和国と争っている中華民国(台湾)が実効支配している金門島(金門県)というところで、しかも11年前の2001年にです。


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場所はというと中国大陸のすぐそば。なんとたった2.1kmしか離れていません。

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(中国本土が見える)

金門県 - Wikipedia

九龍江口や廈門湾口を望む大金門島、小金門島および大胆島や二胆島など12個の島から構成される。総面積は150.3397平方キロメートルである(代理管轄の烏坵郷を含まず)。中華人民共和国側の厦門市とは海を隔てて接する。中華人民共和国支配地域とは最小2.1kmしか離れておらず、国共内戦期間中は最前線となった。

余りにも近いために中国本土からの激しい砲撃にさらされ、激戦となった地です。場所は中国大陸のすぐそばとはいえ、ここを突破されたら一足飛びに台湾本土上陸。つまり台湾にとってはここは最後の防衛戦、ガンダムでいえばア・バオア・クー的存在。

金門砲戦 - Wikipedia

そこでアメリカは事態の打開のために、第三国を通じ金門防衛の戦闘の中で戦術核兵器の使用を示唆し[1]、また同時に中華民国軍に対し武器供与を実施した。ソビエト共産党のフルシチョフ書記長は「米ソ間の核攻撃を触発しないように」と中華人民共和国に警告を発した。

アメリカも陰で介入するのはもちろん、歴史の陰で一人の日本軍人が活躍した場所でもあります。

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(四維坑道:高速艇の秘密発進基地。地下に掘られている)

台湾・金門島の人々から"戦神"と呼ばれる日本人とは... | テレビ関連ニュース [テレビドガッチ]

昭和24年、蒋介石への恩義に報いるべく根本は、毛沢東の中共軍と戦い敗走を続ける国民党軍を助けるために、宮崎・延岡から釣り人に変装して台湾に密航。台湾国民党軍の軍事顧問として台湾の金門島で3万人の人民解放軍を迎え撃つ作戦を立案し、1万の兵力で撃退する。

根本は、「中共軍が上陸して古寧頭村を占領した場合は村ごと焼き払ってしまおう」という国民党軍の作戦案に対し、「それでは村人が犠牲になってしまう」と主張し、村の北側から沿岸に向かう一カ所を開け、そこへ中共軍をおびき出して、海岸沿いまで移動させ陸と海から挟み撃ちにするという作戦を提案する。その結果、村人も救いながら中共軍を降伏させた。

村ごと焼き払うという乱暴な作戦はさすが蒋介石の国民党軍といったところ。多勢に無勢にも関わらず、まるで上田城での戦いのように挟撃することで相手を屈服させるところが日本的です。

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(地下塹壕)

この激戦のおかげでこの金門島は戦争遺産が今も残され、公開されています。今では台湾だけでなく中国本土からも直接観光に訪れることができるようになっていますが、海にはトーチカや秘密港、地下塹壕などが残され、戦勝記念館が激戦を今に伝えています。

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(トーチカから中国本土をみる)

綺麗なビーチには今も水中機雷が残され、砂浜には錆び付いた戦車がそのまま。泳ぐどころか艦船が近寄ることができません。

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海沿いは戦争の後が色濃く残されていますが、一方で風土文化を伝える古い街並もあります。ここはすでに人は住んでおらず、文化遺産として保護、整備されているとのこと。沖縄同様、やはり石畳が基本みたいですね。

なぜこの金門島に訪れたかというと、以前から知っていて興味を持っていたところに、留学時の台湾人の友人が徴兵されていたときに派遣されていたのがこの最前線の金門島だったことが判明。台湾旅行に行った時、訪れてみたいといったところ、快く連れて行ってくれました。その友人には本当にお世話になりました。

ちなみにその友人、徴兵されていたとき何をやっていたかというと、塹壕を掘ったり、埋めたり、掘ったり埋めたり。訓練の一環で塹壕を掘るのだそうですが、掘っているとそこらじゅう穴ぼこだらけになって不便、危ないので、埋め戻すそうです。生産的ではないけど、そもそも戦争とは生産性がまったくないのですから、しょうがありません。

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今ではすっかり平穏な島。しかし激戦があり、その後も毎日のように砲撃があったとのこと。そして今でも戦争遺跡は残り、海には機雷が敷設されたままです。今は融和政策が進んでいるのですが、いつまた対立が深まるか分かりません。

三通 - Wikipedia

三通(さんつう )は中華人民共和国(中国)と中華民国(台湾)の「通商」、「通航」、「通郵」を示す言葉。中国より台湾に対し両国交流のモデルとして提案したが、当時の台湾は中国に対して「不接触」、「不談判」、「不妥協」の三不政策を実施し、提案に応じなかった。2008年末、双方の合意により、一部を除き三通を認めることとなった。

国際的に中華民国は国とは認められておらず、中華人民共和国と台湾(中華民国)は同じ中国と見なされているのでさらにややこしいです。中国内の話と、さらには国際社会的な話はまた別ということです。

でそのややこしい関係の、元・紛争地域に行ってみたのは、やはり行くことで何かつかめるんじゃないかと思ったから。

金門砲戦 - Wikipedia

当時アメリカ合衆国政府は中華民国当局に対し「金門及び馬祖は『米華共同防衛条約』の防衛義務範囲に含まれない」とし金門の放棄を要求したが蒋介石総統はこの要求を拒絶している。

アメリカがいったように、そんな島、くれてやれというのはたやすいです。しかし領土問題とはそういうものではない、ひとつ譲歩したら、ふたつ、みっつ譲歩しなければならない。台湾の先に逃げる先がない蒋介石が、ここ中国大陸から目と鼻の先で砲撃にさらされた小さな島にこだわったのは、ここがやはりア・バオア・クーだからです。ここを突破されたら、もう本国(台湾)だからでしょう。

同じことは尖閣にいえるはず。尖閣のひとつやふたつ、大した話ではありません。いまだって何に使っているわけでもないですが、ここを譲歩したとたん、その数倍、いや数百倍の不利益が訪れるに違いありません。国益を損なう、というのはそういうことです。

とはいえ、実効支配を強めて駐留しようという話になるとこれまた別の話。それこそ毎日塹壕を掘っては埋め、をしなければならなくなり、トーチカができ、地下塹壕に秘密高速艇発進基地を作ることになりかねません。1945年の終戦以降70年近く、戦闘をしない、戦死者が出ていない世界的にも稀な超・平和的な日本の軍隊(自衛隊)を危機にさらすことになってしまいます。

だから本当は日本人らしく、黒とも白とも言わない、曖昧模糊な応答でそのままウヤムヤにするというのが本来の弱腰外交作戦なのですが、国力が低下しているために諸外国が調子に乗りすぎです。国威を示すためにもここはひとつガツーンとやってほしいのですが、やっぱりそうなると具体的な作戦行動を考える必要があります。

つまり交戦状態になったときにどうなるか、というシミュレーションです。なにせ訓練だけ60年続けてきた軍隊ですから、毎日毎日シミュレーションだけはやっています。そこで言えるのは、今やるとヤバイ、でしょう。ヤバイというのは戦耗率が高いってことです。なにせ60年間戦闘してこなかった、張子の軍隊ですからね、戦死者がでることに国民がどんな反応を示すのか。311を見ていれば、それこそアレルギーにヒステリーを起こすに違いありません。

となればやるからには圧倒するしかありません。しかし今の装備ではまったく圧倒できません、なにせ島嶼に上陸するのも、爆撃するのも、装備が脆弱だからです。あっちゃー、専守防衛装備にしすぎたなりー。

今の戦争、制空権が大事です。となればまず空戦で制空権を確保して、その間に島嶼を占拠、守りを固めるというのが常套手段でしょう。その制空権をとるために必要なのがステルス戦闘機です。

F-22を調達失敗し、F-35に決定したものの、いつ納入されるかもわからないとなると、そりゃ自衛隊も弱腰にもなるってものです。弱腰ではなく、丸腰に近いでしょうか。おそらく自衛隊も世論が強硬派にならないことを願っているに違いありません。

相手を刺激してはいかんと政府は弱腰外交を続けていますが、このままでは図に乗らせてしまいます。自衛隊を使わない範囲で犠牲者がでず、なおかつ国益を守る方法がないものか、それを考えていきたいですね。一応尖閣諸島は実効支配できているので、このまま曖昧模糊にしたままでも問題はないと思うのですが、竹島は相手に実効支配されており、なおかつ話が通じない相手でもあるのでさらにややこしいです。

▼観光情報はこちら⇒金門島特集 | 旅々台北

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