ソニーのヘッドフォン MDR-EX510SL は素直で伸びやかなサウンド、NA高回転エンジン風

5年ぶりくらいにインナーイヤーヘッドフォンを購入しました。新宿ヨドバシにいって色々試聴した結果、今回もソニーの MDR-EX510SLに落ち着きました。

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MDR-EX510SL | ヘッドホン | ソニー

前回買ったのは同じソニーの MDR-EX90SL。

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MDR-EX90SLの音に驚いた ([の] のまのしわざ)

もういつ買ったか分からないですが、軽く9年、10年愛用していたソニーのインナーイアーヘッドフォンMDR-E888。

去年くらいから経年劣化でコードの皮膜は破れ、外装パネルの両面テープが弱くなって一部パネルが剥がれたりしてみすぼらしいことこの上なく、後継をずっと探していたのですが全然良いのが無くってずっとこれをiPodにつなげて使っていました。仕方ないのでまったく同じものを買おうと思っていたくらいです。

そしてようやく新しいヘッドフォンを入手しました。とても評判のコレ、MDR-EX90SLです。

とても満足して使っていたのですが、ある日突然右側(R)から音がでなくなりました。どうやら左右に振り分けるコード部分が断線してしまったようです。

ソニー・ヘッドホンのスペアイヤーピース ([の] のまのしわざ)

イヤーピースを紛失してもスペアを買って使い続けたほどなのですが、コード内部の断線となると修理するわけにもいかず。大人しく買いにいきました。

今回珍しく試聴して気づいたのですが、いまや世の中のヘッドフォン市場は大きく2つの軸があります。

・ファッション性

・重低音性能

ファッション性とはデザインそのもので、これは見てどうか、というよりも装着したときにどう見えるか、というもの。つまり「アクセサリー感覚」という言葉そのものの意味で、ここにきてガジェットの「アクセサリ」というジャンルが、ファッションの「アクセサリー」と符合した珍しいケース。それが理由に試聴場所には必ず鏡が設置され、どうみえるか、見られるのか確認できるようになっていました。

そしてもう一つは重低音がいかにでるか。インナーイヤーヘッドフォンは構造からして低音は出にくいのですが、それでもライブハウスにいるかのような低音がどうやら重視されている今日この頃のようでした。

audio-technica|"SOLID BASS"

オーディオテクニカも聞いてみましたがこれがなかなかにしてイイんです。名前のとおりインナーイヤーヘッドフォンにもかかわらず、重低音がナチュラルな感じで出ており、非常にライブ感が高いです。

クルマに乗る時はドンシャリ音、低音をきかして聞くのが好きな私ですが、とくに電車内での使用が前提のヘッドフォンとなるとちょっとためらわれます。そしてもう一つ、この「低音」重視の潮流は昔と重なるんですよね、ラジカセ時代の重低音に。

ラジカセの重低音時代は世の中全部が重低音になり、ソニーは「ドデカホーン」というラインナップを揃えました。アメリカではラジカセを背負い、アメリカ音楽をドンツク鳴らしていた頃です。アメリカでのユーザー層、屈強な体躯でラジカセを持ち歩き、低音バリバリの音楽を屋外で楽しむというライフスタイルに合わせて重低音性能が強化されたのです。

それまでシャリシャリの音だったラジカセがいきなり「ドーン、ズドーン」という音がでるようになり世界が驚愕、世の中重低音一色となってしまいました。

ところが一方でこの弊害が。低音が出過ぎたせいで他の音が聞こえなくなったり、中域から低域の音がボワボワと残るように反響したり。カンタンにいうと「音が悪くなった」んです。その理由はスピーカーの性能を超えた低音を鳴らしてしまったことにあります。

低音とは周波数でいえば低周波。数ヘルツといったように動きがとっても緩慢で、しかも移動量が大きいです。そのためラジカセ程度のスピーカーでは本来その周波数の音は出せないのに回路で無理矢理出しちゃったんですね。クルマでいえば軽自動車にターボで過給圧あげて150馬力出しちゃったという感じ。

確かにサーキットでは速いかもしれません。ところがサーキット以外では走りにくいどころか、乗り心地も悪いです。重低音主義のラジカセも同じことで、特定のサウンドではバッチリはまるのですが、クラッシックやアイドル曲などではマッチングせず。

その後しばらくは重低音の高音質化テクノロジーがもてやはされましたが、結局ラジカセ、ミニコンポの終焉とともにブームは去りました。

その重低音がまさかまたやってきているとは!

XBシリーズ | ヘッドホン | ソニー

ソニーではXB(エクストラベース)シリーズとしてラインナップされています。

確かに低音がでているとバランスがとれる曲があるのですが、Perfumeから小室哲哉、ガンダムからはてはクラッシックまで聞くことを考え1つ選ぶとなるとナチュラルな特性がいいなあと。で、結局モニターシリーズに戻るわけです。

モニターシリーズの良さというのは、スタジオで使うことを前提にしたナチュラルな特性です。ミキシングした音がミキシングしたとおりに聞こえること。そのため音の「解像度」が高く、どの音も平等に存在感を示すことができます。いわばサウンドの民主主義、市民革命。

ただその一方で物足りなさもあるのも事実。サウンドはとても平滑で、「面白味」は欠けます。

Perfumeのレーザービームで試聴したのですが、低音の出方ではひとつ下の機種 MDR-EX310SLの方がでておりややもするとそちらの方がノレます。

しかしEX510SLはどこまでも伸びていく広域のサウンド、ダイナミックレンジの広さが魅力。エンジンでいえばNA高回転型といったところでしょうか。6000回転からでもまだあと3000回転まわるぜといった余裕の伸び。確かに低速トルクは足りませんがそれを補って余りあるキメの細かな回転フィール。そうか、S2000のVTECエンジンが好きなのはそういう理由なんだなあと、ある意味このヘッドフォンに共通するものがあったのかも知れません。

最終的にはヘッドフォンは聞く音楽と、サウンドの好みで選ぶのがいいんでしょうね。あとは音楽に合わせてヘッドフォンをかえるとか。

まだ慣らし状態なので音が硬いですが、しばらくすると角がとれてまろやかになるのでしょう。楽しみです。


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