顕在化した電力危機! ゼロリスク探求症候群と洋上風力発電の可能性

まさかこんなに早くエネルギー危機が訪れるなんて。

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(計画停電でとまった信号)

原発事故と火力発電所の損壊により東京電力の需給バランスは大きく崩れ、需要が供給を明らかに上回ってしまいました。ここで顕在化したのがエネルギー不足による都市生活の不自由さ。

都市とはそもそもエネルギーが24時間365日体制で間断なく供給されることで成立する特殊空間。

「都市化」によってもたらされた「少子化」 ([の] のまのしわざ)

「都市化」とは?「都市」とは?

簡単に定義すると「都市」とは自給自足できない街空間を指します。自給自足とは食物と考えやすいですが、最も重要なのは「エネルギー」です。つまりインフラと呼ばれる電気・ガス・水道・通信のうちの「電気・ガス」です。こう定義するとあら不思議、すでに日本という国家全体が都市化が終了している気がしませんか。実際その通りで、国外からこれらエネルギーを供給されない限り日本という国家が平穏ではいられないでしょう。エネルギー革命以降の歴史は都市化の歴史といってもよいです。

いわば砂漠の中のオアシスといってもいいでしょう。一歩外は砂漠、水も草木もない世界で死と隣り合わせの空間です。

今回の電力危機はこのオアシスの水が半分になった、という状態。いままでお風呂も入り放題、パスタもうどんも茹で放題だったのに水不足によってそれができなくなったようなものです。

例え話は一旦おいて、電力不足に陥って明確に分かってきたのが、停電が与える社会的影響が甚大だということ。電車はもちろん、信号機もとまることで交通機関がすべてマヒする可能性があります。予測できない停電を回避するための苦肉の策として「計画停電(輪番停電)」を打ち出し、事前に予告することで市民が準備する時間を作り社会的影響を最小限にとどめようとしていますが、それでも通勤はもちろん各所に影響がでています。

一方の街ではいっせいに節電モード。今まで煌々とともしていた看板をすべて消すなど、夜の暗がりを取り戻しつつあります。

夜が暗い。

この実に当たり前で、普通のことが「都市」においてはしばらくぶりのことです。ここに「都市」の特徴が現われます。

「都市化」は毎日が「祭り」

一日には昼と夜があります。昼は人間が活動し、夜は寝るものと決まってました。ところがどうでしょう、24時間化することでいつでも活動できます。24時間化するためには当然電気というエネルギーが必要ですね。夜はそもそも「恐怖」だったわけです。その恐怖は「死の恐怖」に近い意味づけがあり、「死の恐怖」を切り離した都市では当然夜は昼間と同じかそれ以上に明るくすることで死の恐怖を追い払うことが出来るのです。

「都市」にないもの、それは「死の恐怖」です。

「都市化」によってもたらされたもの

自給自足できない街空間では簡単にいってしまうといくつかの機能が切り離されています。もっとも簡単で分かりやすいのが「死の恐怖」です。これは人間の死だけではなく、生命の死も含みます。食物となっている動物は工場で加工されて「食品」の形で都市に現れます。田舎で飼っている鶏をその場で絞めて夕食のご馳走にする、なんて光景はありえません。

人間の死もどんどんと生活の場から遠ざけられています。死ぬ場所は病院、葬られる場所は墓苑でしょう。ちょっと田舎なら家で死の床を迎え、家の裏の墓地に納められることが多かったはずです。「都市」を死の恐怖を遠ざけ、隠蔽することで安心して人生を送ることができるのです

「死の恐怖」を徹底的に排除した結果、都市生活者は「死の恐怖」から解放されたはずでした。ところがそれによりかえって「死の恐怖」に過剰に反応する結果をもたらしたのです。それが

ゼロリスク探求症候群

Massie Ikeda:BSE

はじめに:ゼロリスク探求症候群とは?

狂牛病騒ぎの背景には,私が,”ゼロリスク探求症候群”と呼んでいる普遍的な社会病理があります.これは,一言で言えば,”ゼロリスクを求めるあまり,リスクバランス感覚を失い,他人が犠牲になることも理解できなくなる病的心理”です.この症候群は,これまで,しばしば重大な社会問題を起こしてきました.らい病患者の隔離,ダイオキシンの風評被害による埼玉県産の野菜拒否,MRSA保菌者隔離といった問題がその代表例です.ゼロリスク探求症候群の特徴は次の通りです.

1.感染症・中毒といった病気や,食品・飲料水といった生存に必須な物資の安全性を求める行動が根本にあるので,正当化されやすい.例:病気になりたくない,生活必需品を確保したい.

2.リスクを過大に評価する誤解やデマが背景にある.例:らい病は不治の病であり,接触によりうつる,MRSAは凶暴なばい菌だから,保菌者は隔離しなければならない.BSEの牛の肉を食べると必ずクロイツフェルトヤコブ病になる.

3.個人レベルでは影響がないか,ごく小さい.例:らい病患者が隔離されても,自分は痛くも痒くもない.自分一人が牛肉を控えることと,焼肉チェーン店が倒産して大量の失業者が発生することとは直接関係ない.

4.しかし多数派化・集団化によって社会問題化する.例:らい病やMRSA保菌者の隔離問題は言うまでもなく,炭疽菌感染の予防にと,たくさんの健康な人が抗生物質を要求することによって,本当に必要な人に行き渡らなくなるような事態もそうです.

5.ゼロリスク探求により生じた社会問題の責任を,行政やメディアに求める. 例:らい病患者の隔離はすべて旧厚生省が悪い.BSEの発生はすべて農水省が悪い.BSEの風評被害はすべてメディアが悪い.炭疽菌用の抗生物質が足りなくなるのは,すべて厚労省と薬品会社の対応が遅いからだ.こういった論理の背景には,自分自身の責任を認めたくない,自分はあくまで無垢な一般市民であると考えたい心理が働いています.そのためには,役所のような,決して反撃してこない公組織は絶好の攻撃対象です.

ゼロリスク探求症候群への対処がやっかいな理由も,以上の特徴で説明できます.すなわち,1の安全を求める行動は非難できないばかりか,しばしば正義を主張します.2の誤解やデマは,正しい情報へのアクセスを確保することにより,ある程度対処できますが,社会的なパニックの時は,間違った情報の方が大量に出回り,正しい情報が埋もれて見えなくなってしまいます.また,パニックの時は行政機関が非難の対象になっていることが多く,そこからの情報が信用されません.数少ない中立機関が情報発信すると,各方面からの問い合わせが殺到して,機能が麻痺してしまう恐れもあります.3,4の,個人の行動が社会問題を引き起こすということは,理屈ではわかっていても,1の安全を求める行動が優先して,しばしば抑制が効きません.このため,5の,行政やメディアといった組織を非難の対象にして,個人の責任を問わないという逃げ道が作られます.

まさに原発事故における、放射性物質漏れはこのゼロリスク探求症候群に相当します。BSEの時と同様発生した国、日本だけでなく世界中にデマが飛びまわり、全世界的パニックを引きおこしているのも共通です。

パニックを起こした人々の行動は様々ですが、東京から疎開したり、放射性物質が検出されていない農作物や畜産物すらも廃棄処分したりと「リスクをゼロにしよう」とする点では同じ。

こうしてリスクのバランス感覚を崩してしまうのが特徴的。

Massie Ikeda:BSE

例えば,日本では毎年1万人以上が交通事故で死んでいますが,自動車をこの世から無くしてしまおうとは誰も主張しません.しかし,そういう馬鹿げた主張をしない人も,牛乳は飲まない.車の場合には,対向車線からダンプカーが突っ込んでくるような,自分ではコントロール不能なリスクもあるわけですが,そのリスクもふまえて乗るという理性的な行動ができる.これは車の他に代替手段がないからです.開き直りですね.しかし,BSEの場合,交通事故と比べ物にならないくらいリスクが低くても,そのリスクを冒そうとせず,豚,鳥,魚などの代替手段が容易に手に入るから,そちらへ逃げてしまうのです

また,タバコは年間9万5000人もの日本人を殺しています.自分は非喫煙者だから関係ないというのは,大きな間違いです.喫煙者が吐き出す副流煙には,発癌物質を含めた有害物質が,喫煙者自身が吸い込む煙よりも高濃度に含まれているのです.その結果,タバコで殺される日本人の非喫煙者は年間数千人以上に上るでしょう.ですから,非喫煙者がタバコで殺される確率は,BSEの数千倍以上です.しかし,禁煙席のないレストランに文句をいわない非喫煙者でも,そのレストランで牛肉料理を避ける.また,子供に間接喫煙させている親が,学校給食に牛肉を出してくれるなという.どちらも格好の漫画ネタです.

こうして,リスクバランスを失ってしまうのが,ゼロリスク探求症候群です.この症候群の特徴は,自分自身に正義があるとの幻覚妄想症状と,自分が差別や風評被害の加害者であることを忘れる健忘症状です. 他人の労力と犠牲のもとに,どんなリスクもゼロにしたい,あなたも,そんなの一人ですか? 狂っているのは牛ではなく,人間の方ではありませんか?

いま全世界的にこの症候群にかかっているので、過剰な反応がエスカレートしています。特に原子力発電(原子物理学、放射線)への無理解と得体の知れない恐怖は増大しており、一気に原発計画を停止する、自然エネルギーにいきなり転換しようという極端な議論も見受けられます。

例えば風力発電を犬吠埼の沖合に作れば東電の発電量全部をまかなえるという風説も出ています。

下記の議論は東北関東大震災以前の2011年2月末に行われていたもの。

以下は震災後の3月19日に公開されたもの。

田中優×小林武史 緊急会議(2) 「新しいエネルギーの未来」 - FEATURE - エコレゾ ウェブ

それともうひとつは、本当は風車を使うのに一番良いのは海の上なんですよ。何の抵抗もなくて風も強いから。ところが、日本は海がすぐに深くなっちゃうから風車を建てられないんだよね。

小林  浮かせる形もできるんじゃないかってことですよね。

田中  それを九州大学がもう作っているんです。それはカーボンファイバーというすごく軽い物質で作っていて水に浮くから、海の上に並べておくと勝手に発電して電気を送ってくれるという仕組み。日本は国土が狭いけれど、海の面積を入れれば12倍になるんですよ。そうすると、日本はすごく大きい国になれる。

小林  それは、漁業への影響はないんですか?

田中  今の電気をまかなうのに、そんなに本数はいらないからね。東京電力が東京大学に委託して、犬吠埼に風力発電を建てたらどれだけ発電するかを調べたそうです。そうしたら出てきたデータが「東京電力がまかなっている電気が全部作れます」というものだった。犬吠埼の沖合だけで、だよ。

↓ソースとなったと思われる論文

windeng.t.u-tokyo.ac.jp/ishihara/paper/2007-7.pdf

沖合に作った巨大構造物が固定式にしろ、浮体式にしろ大地震や津波の影響を受けないとは思えないんですけど、どうなんでしょうね。発電量にしても実証実験も行っていない、机上の話なので俄かには信じがたいです(この論文では計算上最大46%が賄えるとしており、全部ではない)。

福島第一原発は1970年に作られた古い設計の原発、耐用年数は40年でちょうど40年目を迎えたところに震度6以上の強震を受け、さらに津波で周辺設備を破壊されてこのような事態に至ったわけです。耐用年数を超えているので本来であれば立て替えるなど使わない方向でいくはずが、様々な理由により使い続けようとした矢先の事故ですから、なんともいえないものがあります。

私自身は原発推進派でも反対派でもありません。「許容派」とでもいえばいいのでしょうか。電気をこれまでどおり湯水のごとく使うなら原発は必要だし、今のように節電節電で不自由な思いをしてでも電気使用量を抑えることを社会が受け入れられるなら原発を作らない方向でいいと思います。自然エネルギーやスマートグリッドの可能性も興味があります。

今こそ冷静なバランス感覚が求められているのではないでしょうか。

今後の世の中がどう動くのか、とても興味深いです。

【関連リンク】

製品紹介「スパイラルマグナスの特徴」|風力発電の株式会社MECARO

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