US版iPad WiFi使用は電波法違反にみる、三権分立と政治音痴の危うさ

そろそろiPad 3G版がUSで発売されますが、すでに発売になったWiFi版iPadを個人で輸入して日本で使う人が多くでています。得意気に自慢したくなる気持ちは分かりますが、こんな問題も。

【やじうまWatch】 US版iPadを国内に持ち込んでワイヤレス通信を行うと電波法違反? ほか -INTERNET Watch

その問題とは、技術基準適合証明が取得されていない海外製のワイヤレス機器を国内でそのまま使うと電波法違反になる可能性があること。現地で買われた機器がこれから国内に届きはじめると、あちこちでこの問題が表面化してきそうだ。本件についてはユーザーによるまとめがTogetterに掲載されているほか、総務省のページにもFAQがある。

Togetter - まとめ「US版iPadを輸入し無線利用すると電波法違反?」
Togetter - まとめ「US版iPadのWifiは日本で使えるのかどうか、総務省に電凸」
総務省 電波利用ホームページ | 技適マーク、無線機の購入・使用に関すること

Q5 技適マークが付いていない無線機を使用したらどうなりますか?

  A: 一部の無線機を除いて、技適マークが付いていない無線機を使用すると、電波法違反になる恐れがあります。
また、技適マークが付いていても無線局を開設するためには総務大臣の免許を受けなければならない無線機(アマチュア無線、パーソナル無線など)がありますので、使用には十分ご注意下さい。
(免許を受けずに無線局を開設若しくは運用した場合は電波法違反となり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金の対象となります。また、公共性の高い無線局に妨害を与えた場合は、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金の対象となります。)

結論からいってしまうと、現段階では電波法違反です。アングラです。アングラならアングラらしくしといた方がいいでしょう。

ところがアングラにも関わらず、総務省にかみつく方もいらっしゃいます。

「海外で購入したiPadを国内でWi-Fiに接続すると違法なのか。」への総務省の見解:IT’s Big Bang! -- ITビジネスの宇宙的観察誌 - CNET Japan

(問)
海外から多くの観光客が来ているが、海外のパソコンを持ち込んできていると思う。それらの観光客が日本でWi-Fiに接続したら、それも「不法無線局の設置」にあたるのでしょうか。

(総務省)
・・・・法規としてはそうなります。

(問)
1分でも2分でもそうなりますか。


(総務省)
そうなります。

(問)開発目的あるいは雑誌の編集部などが、レビューのために一瞬でもWi-Fiに海外のiPadを接続したらそれも「不法無線局の設置」ですか。

(総務省)
法規としてはそうなります。

(問)
申し訳ないですが、それは日常感覚と著しくかけ離れた法規ではないでしょうか?そう思われませんか。(苦笑)

(総務省)
・・・そうですね。ですが法規はそういうことです。

これだけ日常的に無線Wi-Fiの接続能力を持った機器が国際的に行き来している現状では実に馬鹿げた、形骸化された法律であり、実際問題として運用のしようがないだろう。もともとは

「悪質な不法電波利用を防ぐために免許制度があり、全ての電波利用者に免許を取らせるのは無理なので、技適マークがあるのです。あくまで悪質な電波利用を取り締まる法的根拠のためだと思います。」(@norio_nomuraさん)

それは法の基本理念だろうが、いかにせん、時代と合致しない。

ではあるが、悪法であっても法は法。

そこで三権分立です。

総務省は行政機関。つまり立法機関ではないので法律が常識からかけ離れようが、悪法だろうと、それを忠実に守ることが任務です。

ちなみに裁判所とは法律に照らし合わせて公正中立に判断する司法機関です。

ですからここで働きかけるべき相手は立法機関、つまり議会であり国会議員です。国会議員の方でも「わー、iPadすごい!」と迂闊にもtweetしている人がいたら、その人に言うのが効果的かもしれませんぞ。

さて。

この件に限らず、例えば改正薬事法訴訟についてもそうですが、日本人はこの三権分立を基本的に理解してないのではないかと見受けられます。簡単にいってしまうと、

お上

という単一の権力が立法、司法、行政を司っている、まだ江戸時代感覚。

改正薬事法訴訟の詳細は分かりませんが、国相手に訴訟をした場合、争点に対して十分な証拠と論理をもって望まないといけません。ですから最初から不利な戦いになることは十分予測できたはず。負けてしまうのも予測の範疇ですから、その場合は世論を味方につけるべく敗軍の将は語るべきでしょう。ところが司法(裁判所)を悪くいうことに終始してしまって、肝心の争点が見えてきませんでした。

この問題も電波法と同じく、そもそもの立法機関に働きかけるべきだった問題です。ネット販売を排除しようとする団体がうまくロビー活動を展開し、その結果の改正薬事法(=立法)ですから勝敗はそこですでに決してしまったんですね。

ITやネット系の人はどうしてもテクノロジーやビジネスといった側面ばかりに気をとられていて、政治から疎かったのが実情。しかしこれだけテクノロジーやビジネスがポリティクスやナショナリズムに接近してきた今、どうしても政治は避けて通れません。

テクノロジーやビジネスと同じくらい政治にも興味関心をもって、色々な働きかけをしていきたいですね。とりあえず政権与党をとるべく、インターネッ党でも立ち上げましょうか。