ホンダCR-Z試乗レポート:「スポーツ」を再定義したCR-Z

だんだん、気になる、気になる、気になる、気になる・・・ホンダCR-Zです。時間がちょこっと出来たので速攻でいつもお世話になっているホンダディーラーさんへ突撃。

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「試乗させてくださーーーい!」

と頼むと、「まだ1台しかなくって、あの展示されているものなんですけど、、、」

あ、まだダメかな・・・

「特別に出しちゃいますね。」

ありがとうございます。ありがとうございます!ということで早速試乗させてもらいました。

まずはエンジンスタートのメーターパネルアニメーションから。

どうですか、この未来的な雰囲気。ガンダム世代にはたまりません。

え、エネルギーゲインが5倍以上ある

と思わずつぶやいてしまいそう。

未来的なコックピット、そう、あえてコックピットと呼びましょう。これに収まって走り出しはコンベンショナルな手順。今回試乗したCR-ZはCVT、シフトレバーをDレンジに入れて走行開始。軽やかなエンジン音で、シビックやオデッセイと雰囲気は似てます。

が、段差を超えるたびに感じるこのサスペンションのしっかり感。ゴツゴツしてなく、乗り心地も悪くないけどまさにヨーロッパ風スポーティカーのそれ。コツコツ、タタンといったいなしかたで非常に好感がもてます。ステアリングもしっかり感があり握った感触もよいです。

走り出して気になったのはフロントウィンドウが非常に寝ていること。そしてハンドルが低い(太い)ためにメーターコンソールが多少隠れて見えにくいこと。これはハンドルの位置調整すれば直せます。そして車幅が結構あります。狭い道だと結構気になる幅ではないでしょうか。

そして次にびっくりしたのが、ブレーキの効きのよさ。アクセルオフは普通ですが、ブレーキをちょっと踏むとまさにスポーツカーの減速G。ディーラーさんいわく回生ブレーキの賜物だそうですが、このしっかりしたタッチと効き味は安心感があります。ブレーキがよくきいて効きすぎと思うBMW MINIよりも効くくらい。もちろんプリウスのようにすっぽ抜けることはありません!?w

信号でとまると自然にアイドルストップです。エンジン音が完全に消え、車内が静寂に包まれます。メーターパネル内のエンジンストップマークが点滅してソレと知らせてくれますし、ブレーキをはずしアクセルに足をやれば自動的にエンジン始動します。慣れないうちはびっくりすると思いますが、慣れればそんなもの。

そしていつもの坂道です。

ツインチャージャーのVW Golf 1.4GTや280psのSUBARU インプレッサSTi A-Lineなどの試乗で攻略したこのなだらかな長い坂道を1.5L+モーターのCR-Zはどうこなすでしょうか。モードはスポーツモードへ変更。

アクセルを開け気味にするとエンジン回転数は3000回転へ、エンジン音は高まるとともにグッグッという異質なパワーを感じます。もちろんその元はモーター。まるで電車の加速のような力強さのおかげで坂道を坂道とも思わず上がれます。

この近辺は丘陵地帯で、かなりのアップダウンがあります。普通の車であれば坂道ではエンジン回転数をあげて上らなければなりません。しかしCR-Zは3000回転という回転数のまま、CVTで適切にギア比を変更してスルスルとスピードだけあげていきます。

そして下り坂ではエネルギー回収、発電してバッテリーに蓄電します。その電力をまた坂道でモーターアシストとして利用する、、、まさに丘陵地帯にぴったりな仕組み

エンジン全開にはしませんでしたが、アクセルを比較的ラフにあけてみると、即座に引き出されるパワー、一気に速度が乗っていきます。そしてよく効くブレーキとしっかりとしたサスペンションときびきびしたステアリングでスポーツ気分を味わえます。なるほど、これはスポーツカーです。

あまりにスムースに走るので、もっともっと走りたくなってしまったくらい。これはドライブに行きたくなる車です。

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街中ですし、雨だし夕方だったのでコーナリング性能などは試せませんでしたが、是非これはドライの昼間に試乗しなおしたいですね。自然なのに新しい、ドライブフィールは新鮮です。シビックハイブリッドに試乗していますが、CR-Zのスポーツモードはそのフィールとはまったく別物。CVTにはマニュアルモードもついていて、パドルシフトでシフトチェンジもできます。

帰り道MINI Clubman Cooper Sで同じコースを走って比較してみました。エンジンのパワー感はツインスクロールターボ 175psのトルク感と遜色ありません。3000回転以降ではさすがにターボのMINIの方に分がありますが、燃費計はリッター4km/Lを指してます。そうなんです、アクセルをあけるとものすごく燃費が悪くなるのです。

MINIの直噴ターボエンジンはアクセルをあけないとリーンバーンとなり燃費がよいです。ただアクセルをあけると一気にパワーを引き出すかわりに燃費も相当悪いです。そのため心臓とお財布と環境にやさしくありません。

ところがCR-Zでアクセルをあけると、同様に一気にパワーを引き出しますがさほど燃費は悪化しません。というのもそのパワーのほとんどはモーターによるもので、バッテリーにためこんだ電気を一気に解放しているだけです。

これは分かりやすいたとえでいうと、ターボは借金して豪遊、モーターは貯金で豪遊しているようなものです。

なので貧乏性な私としてはアクセルをどーんとあけるのは非常に「罪悪感」があって、MINIではなかなかできません。しかしCR-Zだと貯金を使うだけなので「解放感」があるんです。

ここにホンダの提案する新しい「スポーツ」の姿を感じました。

スポーツカーとは日常ではなく、非日常を感じるもの。とはいえその非日常があまりにも一般生活からかけ離れてしまうとともすれば「反社会的」な行為に近くなります。例えば燃費が悪い、CO2や騒音を撒き散らすなど。そんな、アスファルトにタイヤを切りつけながら暗闇走り抜けるのがスポーツだったのは20世紀のこと。もっともそういった「背徳感」が「快楽」につながっていたのも事実。

新時代、21世紀のスポーツは「反社会」ではなく社会との共存、環境との共存をはかりつつ俗世からの「解放感」を得られるものだ、というのがCR-Zのテーマではないかと感じた次第です。

回収したエネルギーをさらに燃費に生かすことだって技術的にはできます。例えばプリウスなどのシリーズ・パラレルハイブリッド方式では、発電モーターと回生モーターを独立して配置して充電しつつモーターで走行するといった芸当も可能。しかし1モーターで発電と回生をするホンダのパラレル方式では発電は発電、回生は回生しかできません。

しかし逆にこの制約の中、「普段の生活で倹約してこつこつと貯金」をして「年に一回ハワイに家族旅行」のような解放感、非日常感を出せている気がします。

シビック・ハイブリッドでも「普段の生活で倹約してこつこつと貯金」をしているのですが、パワーを出し渋るんですよね。だから全然解放感がなく、モーターでアシストされても非日常がまったくでてこないので「気持ちよくならない」のでした。

CR-Zはデザインでも、後席の狭さからも「割り切り」「非日常」を十分演出しています。エネルギーゲインが5倍以上ありそうなメーターパネル、車というよりもコックピット。それに加えての「スポーツモード」の走り。

絶対的な性能は従来のガソリン車に劣りますが、「スポーツカー」が性能を謳う時代は終わり、いかに「非日常感」を演出するか。type Rで「レーシング」を再定義したホンダですが、CR-Zでは「スポーツ」を再定義してます。ラインナップからみるとミニバンメーカーになってしまったかのようなホンダですが、これは未来に期待が持てます。

今やスポーツカーといえばヨーロッパメーカーの独壇場ですが、そこへ斬りこんでいけそうです。がんばれホンダ、負けるなCR-Z。

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