「New Audi S4 & A4 Avant 2.0TFSI quattroに試乗しました(その1) 」の続き。今回は新型アウディA4 Avantに追加されたグレード、2.0TFSI quattroの試乗です。
(B8) New Audi S4がV6 3.0リッター・スーパーチャージャーで過給するのに対し、この2.0TFSIは 直列4気筒2.0リッター、ターボで過給します。国産四輪駆動2リッターターボが軒並み280馬力やら300馬力やらというのと比べると、スペック的には211馬力と大人しめなので、走りも大人しいのかなと思いきや。
不思議なことにこのA4 2.0TFSI quattroも十分以上の加速力を見せつけるのです。S4が刺激的な加速力だとすると、このA4は予想外の加速力。まったくもって重量級の車体をものともしません。正直、普通の人にはこの加速力は十分だと思うし、乗り味もS4と遜色ないほどでした。
そういえば試乗前にAudiの方が、
「Audiはどの車、たとえ一番小さな車体とエンジンのグレードであっても、同じようなテイストを味わえる」
とおっしゃっていましたが、まさにそんな感じで、同じ軸上にあるんですね。エンジンも違うし、価格も違います。しかし車の味付けはまったくもってブレがないというか、「Sと比べるとこんなもんですよ」といった妥協はまったくなく、かえってお買い得感が増すという印象です。
ですから New Audi S4のパイパフォーマンスにビックリした後にのったA4 Avant 2.0TFSI quattroは、そのリーズナブルさに再びビックリしたのでした。
A4 Avant 2.0 TFSIが211馬力の割りにどうしてこうも気持ちよく加速するのか後で色々考えたのですが、やはり7速になったSトロニックの恩恵かと。クロスしたギア比で、最適なギアを使い、クラッチを直結した状態でダイレクトに四輪に駆動力を伝える、この効率のよさで重い車体を軽々とひっぱりあげたのでしょう。
さらによく調べると、スペック上50kg(セダン同士だと100kg)軽量でかつ、ファイナルギア(最終減速比)がS4の3.875/3.888に対し、A4は4.092/4.111とローギアな設定です。エンジンも最大トルク350Nmを発揮するのは 1500rpm-4200rpmと、低い回転数で出してくるので軽快に加速するのでしょうね。
とかくエンジンの出力に目がいきがちなのですが、「車はエンジンとミッションの組み合わせで決まるというお話 」で詳しく書いていますが、どんなにいいエンジンでもミッションがスポイルしては性能を発揮できません。そういう意味で、このAudiはS4にしても、A4にしてもエンジン、ミッションともにしっかりと考えられて作られているのでしょうね。S4はA4と比較して、最高速度の向上や、より高速域での加速力を狙っているものと思います。
そしてA4がまた物凄いのはこの2.0TFSI quattroだけではありません。
A4のエンジンバリエーションは3つあり、1.8TFSI、2.0TFSI、3.2FSI (V6)なのですが、なんとそれぞれ組み合わせるミッションがまったく異なるのです。
1.8TFSI + CVT(FF)
2.0TFSI + 7速Sトロニック(ツインクラッチ)
3.2FSI (V6) + 6速ティプトロニック(トルクコンバータ)
しかも上記のA4用エンジンは縦置きで、同じ名称のエンジンがさらに小さな車体のS3/A3に搭載されているのですが、そちらは横置き。そのためエンジンは別設計とのこと・・・
もちろんS3/A3に組み合わせられるミッションは横置きエンジン用のミッションということで、2.0TFSI+6速Sトロニックだったり、1.8TFSI+7速Sトロニックだったり、、、
いくら「車はエンジンとミッションの組み合わせで決まる」といっても、ここまでグレード毎に細分化してくるのはやりすぎです!(笑) マニアックすぎだし、カタログを熟読したり、人から聞かないと知ることも難しいほど。
日本人的考えだと、エンジンとミッションは出来合いのものを流用し、適当に組み合わせればコストダウンになるという気がするのですが、頑なに車種・グレード毎に最適化したものを出してくるのは職人芸といってもいいでしょう。お値段がそれなりに張りますが、そのお値段に見合うだけのコダワリを感じました。
アウディは今年で創立100周年を迎えるとのこと。100年もの長い歴史の間には色々なことがあったことでしょうし、企業DNAが失われやすい昨今ですが、Audiには一貫した何かがあり続けたのでしょう。
次回はそのへんを考察してみたいと思います。
(続く)