業績悪化に苦しみ、激しいリストラ策を打ち出している古巣ソニーですが、案の定役員体制が変わりました。簡単にいうと社長リストラです。
ソニー社長交代。ネットワークを軸とした新経営体制に -AV Watchソニー株式会社は27日、グループ構造改革と新経営体制を発表した。4月1日付で中鉢良治現社長が副会長に退き、ハワード・ストリンガー会長兼CEOが社長も兼任。同時に事業グループ改革にも着手し、PC/ゲーム/ポータブル担当のネットワークプロダクツと、コンスーマプロダクツの2つの事業領域を定義した新経営体制を構築する。
ストリンガー・中鉢体制になってから、この二人の不仲、というよりもディスコミュニケーションは浮き彫りとなっていましたが、その関係に終止符が打たれた形です。
ストリンガー氏の全権掌握、ソニーの「モノ作り遺伝子」に変化も | Reuters両氏の発言や主張は経営上の役割分担を反映していると言えるが、そこからは現状への対応をめぐる路線対立の存在もうかがえる。27日の会見でストリンガー氏は、中鉢氏が隣に座る中で、「次のレイヤー(階層)を設ける必要はない」と断定。「世界ではサイロ(貯蔵庫=縦割り組織)の壁を壊したが、日本ではまだ強固に残っている」(ストリンガー会長)と、エレクトロニクスが主流の日本側の改革の遅れを批判した。
簡単にいうと、こんどはエレキ(注:エレクトロニクス事業のソニー用語)をぶっこわそうということですね。そしてストリンガー会長が得意とするコンテンツ業にシフトしようということらしいです。
しかしこの新体制、みてみると余りにも「暫定感」が漂います。まずストリンガー会長兼CEOが社長職を兼任。
ソニー社長交代。ネットワークを軸とした新経営体制に -AV Watch同時に事業グループ改革にも着手し、PC/ゲーム/ポータブル担当のネットワークプロダクツと、コンスーマプロダクツの2つの事業領域を定義した新経営体制を構築する。
そして2分野に分けるとしていますが、このうちPC/ゲーム/ポータブル担当のネットワークプロダクツ&サービスグループ(NPS)のトップが2名。PlaystationとVAIOのトップでツートップです。
この中途半端な体制はずばり、もう一回体制変更があることを予言しています。そしてその時期は間違いなく株主総会がある2009年6月と読んでいます。
その体制変更とは・・・
久多良木(久夛良木)氏の復活、そして社長就任。
すでに週刊文春(注:記事中も「エレキ」と社内用語が使われていた)でもすっぱ抜かれているとおりですが、久多良木氏ほど今のソニーに最適な人材はいません。
(旧来の)ソニーをぶっ壊す
ソニー副社長時代に、そのアクの強さと経営批判、さらに事業(久多良木チップ入りTV、PSX)の失敗などでソニーを終われ、SCEIに戻ったあと、PS3の過剰投資でSCEIも終われました。もともとソニーのエレキを再構成するのが生きがいだった久多良木氏ですから、ストリンガーCEOの「日本のエレキをぶっこわす」のに最適な人材です。
久多良木氏の野望はシンプルです。すべてのコンピュータ化すること。ソニーでいえばTVからビデオ、オーディオまですべてコンピュータ化し、ネットワークすること。そしてエンタテインメントを提供すること。
ソニー副社長時代に狙っていたのはその前哨戦として久多良木チップをソニー製品に搭載することでした。
久多良木チップとは、PlayStationシリーズのCPU/GPUなどのことで、実際にXMB(クロスメディアバー)搭載時にむりくり液晶TV BRAVIAに入れ込みました。ただ志半ばにして夢は絶たれ、今はソニーから離れています。
ただこのソニーから離れている期間は、ストリンガー会長が冷却期間として、ほとぼりが去るのを待っているようにもとれます。つまり実際問題、PSXやPS3などの失敗が社内的に問題となり、その責任を取らなければ次にステップにいけなかったわけです。
そしてチャンス到来です。
今のソニーが復活するには次のことが必要です。
・強い製品を作る
・製品を強く世間に知らしめる
まず強い製品を作るには、技術的なアドバンテージを持つと同時に、未来を見通す力が必要です。
次にその製品を世間に強くメッセージングするには強烈な個性と、強靭な精神が必要です。
以上2点ができるソニーの人材といえば、もはや久多良木氏しかいません。
任天堂全盛だったゲーム業界に打って出たこと。3Dチップを作るといいつつ、しまいにはCPUまで作り、マルチコアのブームを引き起こしたこと。さらにPSPのボタン配置ではデザイナーはオレだから、オレが決めたことにケチつけるなと世間を敵に回しても自己主張すること。製品についてこれほどまでに自信をもち、世間を対して強くメッセージを出せる人は他にいません。盛田、大賀氏は「この製品はオレが作った」といい、松下と死闘を繰り広げ、タイムシフト論争ではアメリカを敵に回して戦ったソニーを作った男たち。そのソニーのDNAを受け継いだのは何を隠そう久多良木氏なのです。
しかしそれが裏目に出て、その結果自ら立ち上げたSCEIをも追われました。
ところがここでもうひとつ、大きな前例があります。それは
スティーブ・ジョブス。
アップルのスティーブ・ジョブスは自ら立ち上げたアップルを終われました。そして数年後、華麗に復活し、iMac, iPodと次々とヒット商品を出し、現在に至ります。ブランクがあって復活するというのがいかに強さを発揮するかというのは周知のことでしょう。
そして久多良木氏は日本のスティーブ・ジョブスに今、なろうとしているのです。もはやこのシナリオ以外、ソニーが復活するてだてはありません。
久多良木氏がソニーに復活した時には、製品ラインナップの統廃合、商品数の削減が行われるでしょう。それは売り上げが大きい、小さいというここ10年来ソニーがとってきた判断基準ではなく、その商品はユーザーにとって必要かどうか、他の商品にとってかわれるかどうか、で判断されることでしょう。結果的には久多良木チップを中心としたコンピュータがすべてのHUBとなり、オーディオ、ビジュアル、エンタテインメントが統合された世界になるはずです。XMBが載っているかどうかなんて、些細なことなのです。
そしてこの夢を具体化しているのが社名、「ソニー・コンピュータ・エンタテインメント」です。ゲームのプラットフォームなのに、ゲームカンパニーじゃないのです。つまり20年後を見越した上での命名なのです。
もうひとつ、久多良木氏がジョブスに似ている点。それは
「おまえなんか、首だ首!」
といいまくる点。アップルではエレベータにジョブスと乗り合わせたとき、ジョブスからの不意な質問に答えられないと「おまえなんか、首だ首!」とクビになってしまうという都市伝説がありますが、非常によく似ています。ただ久多良木氏に100回以上クビと言われたひともまだSCEIにいましたが。
そしてさらにいうと久多良木氏がジョブスの自伝を読んで時の感想が、
「(ジョブスは)オレに似ているな!」
だったそうです。そうなるとやはり久多良木氏の復活がソニー再生の鍵となることでしょう。
6月の株主総会に注目です。
●「美学vs.実利」は久夛良木クロニクルである:[mi]みたいもん!