城山発電所は神奈川県のダムを司る発電総合制御所だった

城山湖は普段からドライブコースとしてよく行っているのですが、今回城山発電所の見学会があるというので家族で行ってきました。

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【城山湖 2008年5月撮影】

(城山)湖の規模は小さいし、ダムもロックフィルダムでこう地味なのでさして気にしてなかったのですが、本日驚くべき事実を知ってしまいました。なんとここは神奈川県全域に位置する水力発電所を統括する、「発電総合制御所」だったのです。

歴史をさかのぼること昭和13年、相模ダム築造を機に神奈川県は「県営電気事業」に着手します。実は水力発電所、ダムのオーナーを調べてみるとわかるのですが、多くは国(国土交通省)、または電気会社に所属します。ところが神奈川県のダムはほとんど全部が県営です。宮ヶ瀬湖も所属は国になっていますが、建設費用の70%程度が神奈川県(実際には川崎、横浜など)からでており、利水権はすべて神奈川県で県外には出さないのだそうです。つまり神奈川県民から成り立っているのが神奈川のダムたち。

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【制御パネル】

この神奈川の水力発電を制御しているのがこの城山湖にある「発電総合制御所」。あいにくの雨で今日は発電していなかったのですが、その代わりにあちこちで雷、大雨で気象情報がレッドシグナル、酒匂川水系では放流していました。

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【発電パネル。0.00MWが並ぶ】

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【相模川水系】

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【酒匂川水系:放流中】

さて今回のメインはその城山ダムの発電施設の見学。標高330mの地表から津久井湖水位である120mよりも低いところに位置する発電施設の70mまでエレベータで一気に下がります。

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【城山発電所透視図】

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【エレベーター。ELは標高を指している】

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【4機の発電機】

そこには4機の発電機が設置されていました。面白いのはこの1,2号機と3,4号機はメーカーが違うこと。1,2号機は日立製、3,4号機は東芝製です。また昭和40年に作られて老朽化が進んだので、順次改修を加えているとのこと。

城山発電所

経年劣化により通常の補修では対応できなくなったため、平成8年度から平成13年度まで改造事業をおこないました

最近も2号機に改造を行い、今度1号機の改造作業を予定しているそうです。

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【交流同期発電電動機 日立製作所】

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【交流同期発電電動機 東京芝浦電気株式会社。右側は改造時のパネルで、株式会社東芝になっている】

発電方法は非常に単純で、本沢ダムの水をランナーと言われる羽根車を回し、羽根車にシャフトで直結している発電機を回して発電する仕組み。中は4階層に分かれていて、一番上の広い空間は整備用でクレーンが装備されています。

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【発電機の一番上の中身】

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【2機クレーン。これで発電機を吊り上げる】

下の階層へ行きます。

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【インクラインの坑道】

インクラインとは資材を搬入するための坑道。どこか地表につながっているのですが、入り口はよく分かりません。今度の改修のための資材はすべてここから運ばれるそうです。雨が入ってくるのですが、それは全部地下4階のどこかに貯められて、その後ポンプで吸い出されるのだとか。そうしないとこの施設ごと水没です。


この階層は実際のコア、発電のための回転子があります。

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【回転子】

その下はシャフトでランナー(羽根車)を連結しています。

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【シャフト】

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【ランナー】

さらにその下には放水路を制御するための弁があります。
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【水圧鉄管と弁】

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【水圧鉄管 日本鋼管株式会社】

毎秒(?)お風呂160杯分の流量だそうですが・・・実感がわきません。

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【バルブマニアにはたまらない、なんか色々なバルブ。圧力計つき】

水が流れ込まない純揚水式発電所なので逆に夜間は津久井湖から水を引き込み、モーターで城山湖へくみ上げます。ですから津久井湖よりも下に位置しているのですね。

くみ上げるときは羽根車を逆回転させるということですから、まあ仕組みは簡単なものです。が、250mをくりぬいて発電所をつくり、水路を通すってのは意外なメガストラクシャーでいいです。表に出ているのが地味なだけに、まさに秘密基地感覚ですね。

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【壁掛け型黒電話】

見学後、色々とお土産をいただきました。

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【さがみの水 神奈川県営水道】

クジ引きで最近流行の電灯型蛍光灯をいただいて、早速使わせてもらいました。こんなところもエコですね。

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【クイックボール】


説明をしていただいた職員の方からは、歴史があることや神奈川県が必要とする水、電気を自分たちが担っていることへの誇りと自信を感じました。石油高騰が叫ばれる昨今、揚水式発電による電力調整は先日から注目していたのですが、それを実際に見ることができてまた新しい発見がありました。

今日はどうもありがとうございました。


【関連リンク】

本沢(ほんざわ)ダム⇒本沢ダム - Wikipedia

相模川総合開発共同事業

なお、この事業の一環として本沢ダムを築造し、これを利用して最大出力25万kWの純揚水式城山発電所を建設し、昭和40年11月1日から営業運転をおこなっています。


ところで・・・
最初説明用DVDがあったのですが、TVK制作で、城山湖の水の量を「横浜スタジアム11杯分!」とどこまでも神奈川県だったのが微笑ましかったです。

説明用ビデオを私が演出するとしたらもっとアニメっぽくしたいですね。例えば、、、

「大変です、横浜の気温が36度を超えました!電力消費量の上昇に発電量が追いつきません!!」

「なにっ、至急発電総合制御所に連絡だ」

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「こちら城山発電所・・・なんだって、発電量が足りない?」

ウウーーーーーウーーーー(サイレン)

係員が意味もなく廊下を走る

「緊急発電、緊急発電。これより城山湖、発電を開始する」

「発電量、25万キロワット、準備よろし?」

「城山発電所、発電、いきまーーーーす」

・・・

回る発電機、うなる発電子

ミンミンミンミン・・・

「発電量80%、90%、100%、120%」

轟々と音をたてて濁流が流れ出す。

「発電量120%、送電開始!」

「送電開始!」

ピリピリピリーーーー(送電線に火花がちって横浜の街へ向かう)

「やった成功だ。これで横浜は救われた!!」

・・・

「沖田所長、大変です、このままでは5時間後に城山湖が空っぽになります」

「なに?」

「どうしますか、沖田所長?」

「・・・電報をうて」

「内容は?」

「ばかめ、だ」

(第二話に続く)

・・・続きません。