押井守監督の「スカイ・クロラ」は予想以上にきつかった

今日は先々週の「ひとりポニョ(一人でポニョを見る)」に引き続き、「ひとりスカイ・クロラ」で一人でスカイ・クロラを見てきました。もっともいつも映画は一人で見に行きますが、世間の方は(特にポニョは)誰かといくものみたいですね。

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(1/2スケール 散香)

(以下ネタばれあり。ご注意)

押井守監督の完成披露試写会の話や、笑っていいとも、BSの特集などを事前に見てたせいで、多くのシーン、そしてストーリーの概要がわかった状態でみたのがいけなかったのでしょうか。随分と事前知識の範疇に収まってしまいました。とはいいつつも、涙がこみあげてくるシーンもあり、なかなかこれは評価が難しいです。言葉に言い表せない。

とにかくキツイ。

テーマが愛とかなんだとかじゃなくって、「生きること」。逆説的にとらえると誰もが死ぬことからは逃れられないということ。キルドレという名前の、永遠に年を取らない主人公たちは同時に、死ぬことができない。たとえ死んだとしても、記憶を失っているだけで別人として再び現れることになる。この死ぬことができないというテーマは手塚治虫の「火の鳥」で扱われてますが、死ぬことができないとなんのために生きているのか見失うんでしょうね。毎日の繰り返しが怖しくなる、繰り返しても何も変わらない毎日。その重圧に押し潰されてしまいそうになってしまう。

そんな苦悩がなんだか伝わってきて、つらかった。

この「平凡な毎日」に対する回答は主人公の口から語られるわけですが、それは映画を見てのお楽しみにしておきます。

さて映像はというと、、、まー、一言でいうと次回はぜひ実写でお願いします、という感じです。押井守監督がかたくなに守ってきた、アニメには声優を使うという原則を今回破って俳優・女優を使っていますが、これは実写映画の布石ととらえています。というかですね、もうこの空気感はアニメだとキツイ。ものすごい雰囲気が出せているからこそ、アニメとしての完成度は確かに高いのですが、高すぎるからこそじゃあその先はどうするの、となったときに実写しかないんじゃないの?と思ってしまうわけです。

宮崎駿監督のポニョは手書きアニメーションですが、あれは「動く絵本」だからアニメしかないし、アニメじゃなきゃいけないんですが、スカイ・クロラみたいなリアルものはリアルを追求していくと最終的にはやっぱり実写なんでしょうね。押井守監督は「アヴァロン」などで実写もやっているので全然いけるはずなんですよ、あとは予算とか大人の事情の問題だけで。

3DCGによる空中戦はとても綺麗です。動きもいいし、空も綺麗。特に素晴らしいのは全翼機の爆撃機を中心に編隊を組んだところ。シルバーの機体が空に映えて、これはとても美しいです。ただ戦闘シーンは明らかにですね、動きが物理法則にのっとり切れてないのが気になってしまいます。

特に今回プッシャーという、後ろにエンジンをつけてプロペラで押す飛行機「散香」を使っていますが、このプッシャー式だと重心が思いっきり後ろになるんです。これに対して通常のトラクター式、前にエンジンがあってプロペラで引っ張るタイプはフロントヘビーになります。車にたとえるとRRとFFの違いみたいなものです。

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となると自由落下したとき、動きが全然異なるはずなんですね。しかしそれが伝わってこないんです。設定上はプッシャーの特性をうまく使った「必殺技」で相手を撃墜するんですけど、それが映像になりきれてないんですね。どこに重心があるか、自由落下して回転したときどこを軸にするかとか。

同じことが他でもあって、例えば慣性の法則。右にいって、左に戻るときには慣性で左に戻りにくいはずなんですけど。スーパーマリオが凄いのは、あんなアニメっぽいゲームなのに放物線を描いたり、自由落下したり、慣性の法則とか摩擦とか物理法則が全部シミュレートされてるんですよ。だから実はリアル。

スカイ・クロラの場合はリアリティを極めようとしているので、かえって動きの不自然さが逆に目につきやすくなりがち。これがガンダムとかなら「ミノフスキー粒子」とか「GNドライブ」といった”設定”で多少無茶な動きをしてもそれもリアリティの範疇の中にしたり、手書きアニメーションで無駄にパースをつけてそれを「演出」にしてしまうこともできるのですが。スカイ・クロラのようにアニメや3DCGで実写のような表現をしようとしてしまうとマイナスになってしまってキツイ。

あと空気の壁とか、流体としての空気の感覚。ここはナウシカで「風を読んで、風に乗る」ことを表現した宮崎駿監督の方がより上手です。

そうなると空中戦も実際のレシプロ機を使って撮影したほうが絶対いいんですよ。


【RF-4Eによるローパス展示飛行(低空飛行)】

ただ低空飛行するだけなのにこんなに迫力。


【ゼロ戦の飛行】

エンジン音が独特でいいですね。


【震電】

散香のモデルともいえる、前尾翼機「震電」の貴重な映像。

・・・

そうそう、音楽と効果音はものすごく良かったです。もうほとんどそこにいるかのような雰囲気。だからやっぱ実写がいいなあ。

ということで押井守監督の次回作は完全実写のアクション映画で是非よろしくお願いします。