出産を考える人は絶対読むべき本「ノーフォールト」 ([の] のまのしわざ)を読んで、すっかり日本の産科医療の将来像が暗くなってしまいました。しかし来るべき崩壊の日に備え、まことしやかに囁かれているのが「出産都市構想」です。
1)人手不足
2)厳しい労働条件、過労
3)マスメディアによる偏向報道
4)逮捕、訴訟リスク増大
5)厚生労働省の誤った方策
6)なり手減少に拍車
7)さらに人手不足
というネガティブ・スパイラルに入っているのが現状です。5)について説明するとどうやら厚生労働省は
a) 医者の数は十分である
であるという認識と
b) 医療費の抑制
を進めようとしているそう。しかしa)については医師免許をもっている数をカウントするのみで、実質を見ていないというのが現場の医師の指摘。医師免許は死去して免許を返上しない限り登録され続けるので、すでに死亡してしまった、退職した、産休に入っているなどの医師までもカウントしているそうです。ひどいのは731部隊に所属してた悪名高い医師もまだカウントされているとか。
b)については全体的な方針で、今アメリカに比べて安い出産費用をこれ以上圧縮することは産科医療のレベル維持ができなくなるくらいのものだといいます。実際利益率でみてみると、現状でたったの1.5%。なにかあればすぐに赤字転落してしまうほどのギリギリのところでやっています。大企業ならいざしらず、個人医院で賠償請求された瞬間吹っ飛ぶくらいの数字です。
「ノーフォールト」で指摘していた保険制度ですが、これももうひとつ問題があって、保険料を医療費に上乗せしなければならないので医療費の抑制はままなりません。そもそもこれには裏があって、保険業界が医療保険に参入したがっているとのこと。つまり保険業界にとって商売としてオイシそうなので、そうなることを願っている、いやそうなるように暗躍している気配があるそう。
そんな中でほうっておくとどうなるかというと、せっかく死亡率が1/70に下がった産科医療のレベルが2分化、
・安かろう、悪かろうの出産
・安全性が高いけど高い
になるのではという予測があるそうです。助産婦さん、産婆さんでいいじゃない、という風潮は死亡率逆戻りの歴史です。高度な医療とは、医師、組織、設備、すべてが連携してようやく達成できたのですから。
さてこうなってくると将来がとても不安なのですが、それは産科医療の現場の人が最も切実です。そんな中冗談半分、ホンキ半分のアイディアが「出産都市構想」です。
これは医師、医療機関を中心に据えた都市で、妊娠が判明した瞬間にその都市に移住。無事出産が終わるまでその都市で生活するというものです。
医師、組織、医療設備すべてを集中させることで効率化を図り、なおかつ妊婦がいつでも最短の時間で医療機関に運ばれることのできる、理想の都市です。ある意味、里帰り出産に近い感覚がありますが、生活の主体を10ヶ月ほど移すということに多くの人は抵抗があるでしょうし、その間仕事のある夫と別れる必要が出てくる、仕事をもつ妊婦はそもそも臨月になるまで移動できないなど現実的な問題は多くあります。SFじゃないんだからそんなバカな、と感じる一方、そこまで発想してしまうほど現実が切迫しているという状況の現れでもあります。
孫は出産都市で産まれるのでしょうか。今後が気になります。