「深海のパイロット」6500mの海底に何を見たか

深海のパイロット
深海のパイロット

先日の水中ロボコンで「しんかい6500」のストラップに釣られてつい買ってしまった書籍。

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しかしこれがなかなかにして良かったです。なにせ私たちはNASAなど宇宙開発の現場はいくばくか知ってますが、海底調査に関してはまったく知らないのですから。

地球上の60%以上は海だということは知られています。しかしその浅瀬はともかく、数百メートル以上の海底について知っていることは限られています。太陽の光も届かなくなった深海。そこに暮らす生物は、そしてそこで活動する地球は一体どうなっているのか、それを知る唯一の手立てが潜水調査船です。そして日本における潜水調査船といえば「しんかい2000」と「しんかい6500」。その名の通り、それぞれ2000m、6500mの深海まで潜れる潜水調査船、、、って余りにネーミングがストレートすぎやしませんか。


・宇宙の暗さと深海の暗さが違う

宇宙の暗さは物質がないもない暗さ。深海の暗さは波長が減衰する暗さで質が違う、というのは宇宙飛行士毛利さんの言葉。実際毛利さんは「しんかい6500」に同乗してそれを感じたといいますが、それを言えるのは宇宙飛行経験者だけですよね。

・人間の六感が大事

無人潜水船が発達してかなりの調査をできるようになって、有人潜水の意義が問われているそうです。コスト面もそうだし、事故のリスクも大きい。幸いなことに有人潜水での大きな事故は世界を通してほとんど無いという状況なのですが、だからといって今後も起きないとは限りません。しかしカメラとセンサーを通しての観察は情報のbandwidthが圧倒的に狭まってしまい、すでに発見されているものを確認するのには十分かもしれないけど、新しい発見ができるかどうかについて、現場は強く疑問視しているそうです。

機械相手に色々とやるのが職業ですが、趣味で車を運転していると思います。人間ほどよく出来た機械はないと。その最高峰がF1で、どこでどうブレーキかければギリギリなのか、人間業とは思えない正確さでできますからね。それが人間の秘められた能力で魅力的なところだと思います。

・飽和潜水

飽和潜水とは、生身の身体で水深数百メートルに潜るための方法のこと。水深300メートルは31気圧かかるので、数日かけて減圧室(加圧も可能)でダイバーが過ごします。また加圧すると空気に含まれる窒素がより多く入り、過飽和状態になるので、ヘリウムと酸素を混ぜ、窒素を含まない空気でこの問題をクリアします。

この方法を利用すると水深数百メートルでも生身の身体で潜ることができ、水中作業ができるのです。もちろん逆に地表にあがるときも、数日かけて減圧する必要があるので相当な手間がいるわけです。

この技術を実用レベルでもっているのは世界でも少なく、ロシア原潜クルスクの救難作業にあたったノルウェー位しかないそうです。

話題説明

ところで、「クルスク」の救難作業において、ノルウェーのダイバーが潜水艦のハッチを点検している写真が広く報道されましたが、このときの潜水方法は飽和潜水によるものです。ある日本のメディアに、プロならば素潜りでも到達できる深度にロシア海軍はなぜ潜れないんだ、というのがありましたが、それは酷というものでしょう。飽和潜水によらなければ、あんな風には108mの深さまで潜れません。ちなみに、飽和潜水の最も高度かつ実用的な能力を有しているのは、北海油田において豊富な実績を有するノルウェーです。

ドキュメント「原潜爆沈」―「クルスク」の10日間

この本を読むと宇宙同様、深海にも大変興味が沸いてきます。なんていってもPlayStationの「アクアノートの休日」が大好きでしたので。

ARTDINK BEST CHOICE アクアノートの休日2
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ところで、

独立行政法人海洋研究開発機構
2007<JAMSTECニュース<独立行政法人海洋研究開発機構 しんかい6500 通算1000回潜航

一般公開はぜひ土日にやってください。