石原慎太郎とブロガーが議論(4)

今日のトピックスはマスコミVSブロガー。そしてブロガーの行動原理。

[の] のまのしわざ: 石原慎太郎とブロガーが議論(2)に関連してますが、石原選挙事務所の取り計らいで

・ブロガーとの会談前までマスコミ取材あり
・会談中はマスコミシャットアウト

となったわけですから、イベント終了後マスコミはブロガーに突撃取材になるのも当然です。

SANSPO.COM > 社会

交流会は報道陣には非公開だったが、小説や芸術などの話が多く選挙戦の話題はほとんど出なかったとか。

OhmyNews:【動画】4日の石原氏

メディアの取材陣は、石原氏が登場して数分で外に出されてしまったため、中で何が話されたのかは不明だ。

マスコミの取材内容はだいたいこういったものでした。

病院行けよ: 「石原慎太郎に会わない?」

「今日はどのような呼びかけで呼ばれたんですか?」 「あのひと(友人を指差して)から、  しんたろうみにいこうぜ!ってメールもらいました。」 「・・・今日の会のことはブログにかきますか?」 「かきません(きっぱり)。」 「なぜですか?」 「せーじのはなしとかするとモテないから☆」 「・・・どんなブログをやってるんですか?」 「昨日食べたおいしいご飯や、  昨日買った可愛いものを紹介するブログです☆」

そうか、道理でもてないわけだ・・・(w

私もいくつかマスコミから質問を受けましたが、主なものを。

・石原慎太郎はどんな人でしたか?
・誰に呼ばれましたか
・なぜ選ばれたのですか?
・話した内容でもっとも印象的だったものは?
・投票活動に影響がありますか?
・対立候補の悪口はありましたか?

これらの私の答えはこんな形。

・誰に呼ばれましたか

知り合い。あそこに立っている人(と指差してみた)

・なぜ選ばれたのですか?

(私が)暇そうだからじゃないですか?
(というか、誘った人に聞けばいいのに)

・話した内容でもっとも印象的だったものは?

(正直、なんも印象がなかったんだけど)
政治家じゃないってのがよくわかりました。モノ書きが本業で、「余っている」ものがあるから政治家をやっている。

・投票活動に影響がありますか?

そりゃあるでしょう。一次情報なわけですから。

・対立候補の悪口はありましたか?

(どの対立候補のことか分からなかったのだが、どうやら元県知事のことをいっていたらしい。で、よく聞いてみたら情報公開についてのやりとりがあってコトあるごとに批判していたらしい)

話の内容をざっと要約していたら、

「ああ、官僚批判ですね」

とまとめるシーンも。

自身マスコミからのインタビューを受けるのは二度目。最初はあの911、ニューヨークのテロのときのこと。そのときに受けた印象と今回の印象はまったく同じで、一言でいうとマスコミはコンテキストにのせるためのコンテンツを探す、というもの。別の言葉でいうと、シナリオがすでにあって、それに合う俳優を求めている

911の場合の質問はこんな感じ。

「どれくらい混乱しましたか?」
「水、食料とか枯渇しませんでしたか?」
「治安は悪くなりませんでしたか?」

答えはすべてノー。混乱したのはWTC近辺の人たちだけで、他の人にはほとんど影響なし。お店も普通にやっているし、地下鉄だって当日を含めて動いていたし。問題なのはマンハッタンからの出入りができなくなってしまったくらい。生活上は余り困ることはなかった、例えば食事など。お店が売り切れにもならないし、ちょっと不自由で、やることなくなって暇で友人と公園をプラプラしていたら報道陣に捕まったという経緯です。

このとき感じたのは、マスコミが求めているのは

・パニックになっているNY
・水・食料がなくなって不自由を強いられるニューヨーカー

という証言だということ。まるでオイルショックの時にトイレットペーパーに殺到して品不足になるような、極端な行動がニュースになるように。そんなのはnewsでもなんでもないのですが。

ですからマスコミへの模範解答はこんな感じになるはずです。

・石原慎太郎はどんな人でしたか?

「いやもう、TVのイメージどおり。頑固で、口が悪くて、頭ごなしで人の話をきかない。もうふざけるな、ですね。」

または

「いやもう、石原慎太郎は素晴らしい。こうしてブロガーを招いて私たちの意見を聞くんですから」

・投票活動に影響がありますか?

「もちろん対立候補に投票しますよ。ブログにもバンバン書いて、ネット上でダメなところを伝えますよ。私のブログは毎月1000万PVあるので、軽く100万票くらいは減るでしょうね。」

または

「もちろん石原慎太郎に投票しますよ。ブログにもバンバン書いて、ネット上で石原慎太郎の素晴らしさを伝えますよ。私のブログは毎月1000万PVあるので、軽く100万票くらい上乗せされるはずですね。」

とか。そんなキャッチーなのがあれば良かったのに残念でした。
この件の扱いが少なかったことからも、マスコミが期待したものが得られなかったことが伺い知れます。
もっともイベント自体の仕込みが手薄な「もったいない」ものであったこともその要因のひとつでしょうが。

参考リンク:

石原慎太郎選挙事務所のブロガーイベント (カレン次世代ビジネスリサーチ室ブログ)

結論から申し上げると、せっかくブロガーを集めたにもかかわらず、実に惜しい、もったいないイベントに終わっていました。

統一地方選 前半戦もあとわずか ちょっと早い総括の一部|安曇信太郎の「イヤならやめろ!」

4日に、石原陣営は「ブロガー懇談会」を行ったらしい。どこの誰が企画したか知らないけど、全く意味はない。おそらく総選挙の時の成功体験から二番煎じを思いついたのだろう。世耕さんだったらやらないよ。あれは「インターネットユーザーの声にも耳を傾けますよ」というアピールが、マスコミを通じて流れることに意味があり、今回思いつきで適当にブロガーを集めたところで、当の石原さんがネットユーザーに対して好意を持っていないわけだし、呼ばれて来たブロガーだって、ホイホイ提灯記事を書くわけがない。ブロガーを馬鹿にするのもいい加減にしろ、というイベントだった。

補足すると、興味深いことに石原慎太郎自身はブロガーに対して理解とシンパシーをもっていること。また石原選挙事務所は少なくともネットユーザーを2chユーザーとブロガーで区別しているということ。

[の] のまのしわざ: 石原慎太郎とブロガーが議論(3)

どうも石原慎太郎はこの場は政治家の顔ではなく、物書き、アーティストとしての石原慎太郎だった模様。ブログ、ブロガーの行動原理について理解とシンパシーを持っていると解釈しました。

議論の前座にお話された川上教授は公職選挙法やネットユーザーについて、こう言っています
(以下メモより転載)。

公職選挙法
    特定候補者の支持・不支持をあおるのはダメ
    HP, textで更新するのが選挙期間中できなかった。だから昔は音声でやっていた。
        総務省が解禁の方向へ(本当?)
2chは余りよくない。匿名性が高すぎるなど。
ブログはアメリカで(メディアとして)注目&重要視されてきている。
    影響力がある
    しかしメディアが情報のベースとなっている
    新しい発見がない
    ネットで拡散するだけ
(ネットユーザー)はマニフェストで評価
    TVみない
    ネット世論が大きな影響
ネット・ネットユーザーが力を持ってきている
ブロガーは自立(自律)している
    自己編集能力を持っている

おそらくこういったことを意識して、今回ブロガーを呼んだと推測するわけですが、まあ結果からいうと「もったいない」イベントなわけです。

というのも「ブロガー」というふうにくくってますが、ブロガーは自立していると同時にそれぞれが別人格です。行動様式も行動規範もそれぞれ独自です。このイベントに対してどういった動機で参加しているかもすべて別です。ブログという形式は、取材、執筆、編集、出版、ユーザーサポート、すべてを自分ひとりで行うものです。扱うネタは人それぞれ、気分次第。エントリー内容のリスクも自分ひとりで負う必要があるし、実際危険な目にあう人もチラホラ出はじめて来ていると聞きます。プライバシーや著作権など法律への意識も高い。そんな中、なにをどうエントリーするか(しないか)は各ブロガーが判断してやっているので、当然強制されたり、お金もらったとしても提灯記事を書くかといえばそれはもちろん違います。

ブロガーの行動原理について、詳しくはこちらの本で詳しい解説されていますので、必見です。

クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティング
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ましてや政治・選挙期間中ですからね。センシティブにならざるを得ないのも仕方がないでしょう。ブログと選挙については、ひらたさんのエントリーが参考になります。

ブログと政治活動と選挙活動 [dh's memoranda]

会合中、写真も取りましたし、メモもとってはありますが、内容やそれについての意見は選挙期間中は書く気はありません。選挙終了後にちょっと書くかもしれませんが、どうしようかなあ。

去年くらいからブログという言葉は一般化しましたし、ブログを通した政治活動はかなり一般的になりつつあると思いますが、ご存知のとおり選挙活動については法令により制限されています。会場でも説明されていた方がコンプライアンスが大切と何度もおっしゃっていました。個人的には、法律の改正などを通して、ブログというか、ネットを選挙活動にも使えるようになるほうがよいと考えます。これからの選挙では、一方的に政策を伝えたり、ましてや名前を連呼するのではなく、対話を通して、政策を磨いていくことが重要だと思います。そう、マーケティングがマス広告だけでなく、インタラクティブなものが広がっているようにです。せっかくネットという新しいメディアを手にいれたのだから、活かされるべきでしょう。

政治は生活と切っても切れない関係なのですから、もっと表立って対話・議論できるようになりたいものですね。それが本当の言論の自由だと思います。

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