FD2 新型シビックタイプRを見てきた

今日は時間ができたので、家の近くの、といっても車で30分ほどのディーラーまでシビックタイプRの実車を見に行ってきました。

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以下感想をメモ(かなり長文)。

佇まいがなかなか良い感じ。フロントグリル回りがグロスブラックでブラックアウトされたり、エンブレム回りはクロームメッキとスポーティでありながら高級感あり。

運転席はホールドがなかなか良さそうなバケットタイプシート。シートリフターも付いているので背の低い人でも調整可能。シート座面の前方はけっこう厚みがあり、クラッチを踏むとモモが圧迫される感じ。クラッチの踏力は物凄く軽く、パカパカ。アクセルペダルはオルガンタイプ。シフトレバーはNSXタイプRと同じく球体のシフトノブで、なかなか操作しやすい。ただ問題はシフトレバーの位置が随分と左にオフセットされていること。サイドブレーキが右側、その左側にシフトといった配置で遠く感じる。着座位置は一番低くしても高い感じ。視界はオデッセイと同じようなミニバンタイプでダッシュボードが広く奥まっていて、その先のボンネットは見えない。乗降はドアが広いため結構しやすい。

後部座席は座面が若干短い印象も受けつつ、まあまあのレベル。クッションが結構柔らかく、乗り降りもしやすい。足元は結構余裕があり、前よりにセットする運転席の後ろはかなり楽。フロアはほぼフラットで左右の移動もしやすいが、4人乗りなのでセンターに人が乗ることはない。

助手席はごく標準的。嬉しいのは4人分のつり革ならぬ、補助ハンドルがきちんとついていること。これがあると乗降しやすいし、ジムカーナなどのスポーツ走行のときにつかまる場所があって体をホールドしやすい。これがないと両手で左ドアを掴まなきゃいけないくなる。

助手席をゆったりセットすると、後席はかなり狭い印象。とはいえ足元はつま先も入るので極端に狭いことはない。

トランクはスルー機構が廃止され、とてもシンプル。スペアタイヤもなく、ジャッキ、エアコンプレッサーなどが発泡スチロールの型に整然とセットされ、残りの空間は小物入れになっている。トランクの容量はまあまあで、入り口は狭めなものの奥行きが結構ある。これならラジコンの大荷物が十分収納できるし、タイヤも2本入るかと。

タイヤはインプレッサと同じRE070で、外側の溝が少ないタイプ。スパルタンな印象。ブレーキはブレンボでとってもでかい。でも17インチホイールはギリギリ入るような感じ。リアは普通の片もちタイプで、赤塗装。リアナックルがシルバーなのでアルミかも?

下回りがかなり凝っていて、フロントストレーキはセンターと外側の3枚分割タイプ。さらにディフューザーも装着。リアディフューザーはインプレッサにもついているけどそれを上回る大きさと形状。リアサスペンション直後からボックス形状で構成して、リアバンパーまでスムースにつなげている。これは効果がありそう。

フロントエアダクトでブレーキにエアを取り込むようになっているけど、うまくゴミなどは入らないようにしているよう。

ボンネット内に納まるエンジンは一見普通のK20A。しかしDBW採用、フェンダー内インテークのためバッテリーを巻くようにエアダクトを取り回していてかなりここで空気をためこんでいる模様。エンジンマウントにも工夫があって、向かって左側(進行方向右側)のエンジンマウントをさらにストラット上部とアームで直結、エンジンの前後方向の揺れを止めるようになっている。エンジントルクダンパーと同様の効果を狙っている?

ボンネット自体は軽量化されていない。フロントガラスがかなり前に伸びているのでストラット上部はおろか、エンジンにまでかかっている。これはサスペンション交換はもちろん、エンジンを吊るすとか下ろすのはとても面倒そう。


とまあ結構カタログに載ってないようなところまで観察できました。一言でいうと「芸が細かい」という印象です。元々はふつーの4ドアセダンなのに、こだわりと情熱を傾けてスポーツカーに仕立てようという熱意が伝わってきました。特に空力関係はかなり凝っていますね。エンジンルーム内もDC5/EP3から一段レベルアップしています。

コックピットの配置はシフトレバー位置やアクセルペダルがオルガンタイプといったところからアコードEuroRといった印象で、助手席からシフトしやすいシフトレバーの位置はちょっといかがなものかと。正直遠いです。さらにでっかいセンターコンソールボックスが控えていて、肘があたるそうです。着座位置もS2000から比べると高く、リフターがあるのならもっと低くても良いのではと。しかしそうなるとセンターコンソールに確実に肘があたるので、困ったものです。

以前シビックハイブリッドに乗ったときはオデッセイから乗り換えたので随分と低くスポーティな印象だったのですが、今日はS2000で行ったので逆にオデッセイに乗っているような感覚になってしまいました。

今日はタイプRを購入しそうなユーザー像を演出するべく、雨模様のなかわざわざS2000で行ったわけですが(w まったく反応ナシ。展示車も基本は販売用で売れたらもう入荷するつもりはないようなことを言ってました・・・って1台しか売らないつもり?

随分と淡白なディーラーで、20分くらいにわたって隅々まで観察していたのですが、まったく相手にされず。せっかく下取り査定、見積もりまで出してもらうつもりでS2000で行って、さらに車検証をトランク内の分かりやすい位置まで出したというのに、その努力は徒労に終わりました。それならオデッセイで行けばよかった、とガッカリしてしまいました。

結局売り込むつもりがないんでしょうね。確かに売れないモデルなので積極的に売る努力をしても報われないことを体感しているので、冷めているのでしょう。どうせ買わないし、買ったとしてもここで買う客じゃない、みたいな。さらにいうとディーラー自体もスポーツカーディーラーではなくって、すでにファミリーカーディーラー。スポーツカーの売り方、売り文句が全然わからないのかも知れません。だって、これだけ細部に拘って作りこんだ車であればもう商品説明だけで軽く1時間は説明できるはずだってのに、それをしないなんて。商品マニュアル、セールスマニュアルがすべての知識で、ドキュメントに現れない行間の部分、熱い情熱や、思い入れがそもそも分からない。だから冷め切ってしまうと。

比較するわけではないですが、BMWとか明らかにターゲットユーザーではない客に対してもBMWの素晴らしさをエヴァンジェライズして、挙句の果てに2台も試乗させてくれたりとある意味サービス過剰だったりするわけですが、自分たちの商品を誇りに思ってそれを伝えたいという熱い思いとは大違いです。レクサスだって貧乏人がやってきた、という扱いをせずに丁重におもてなししてくれるわけですが、それはやはり商品に誇りをもち、それを知って欲しいという気持ちからでしょう。

10年前、EK9型シビックタイプRが出て見に行ったときのディーラーは、買わないであろう客であってもとても嬉しそうに「どうぞ見てってください」とニコニコしながら応対してくれましたが、誇りにしていたのでしょうね。それと比べると隔世の感があります。

今のホンダディーラーは利益追求型になりすぎて、売れない車は軽んじているような印象をうけました。せっかくメーカーが熱い思いを抱いているのに、ディーラーは思いっきり冷めている。メーカーとディーラーの温度差を感じつつ、ディーラーを後にしたのでした。