かにこうせん

[05/01/2002]

かにこうせん

北海の荒波の中、蟹を取り続ける猟師たち。網を素手であげ、網に絡んだ蟹を次から次へとつかんではザルの中へと入れていく。そのハードな作業は毎日続けられ、しまいには命を落としてしまうことも。しかし漁船の船長はそんなことは構わずに新人を入れては今日も漁へと向かうのだ。

あるとき、一人の若い蟹漁師が余りの疲労のために海に投げ出されてしまう。しかし冷たい船長はそのまま彼を見捨てていってしまうのだ。北海の海は余りに冷たい。その冷たさは人情以下だ。その中、若い蟹漁師は命を失いかける。

意識をうしないかけ、目も見えなくなってきたそのとき、一匹の蟹が近づいてきて、こういうのだ。

「人間ってひどい生き物ですよね。私たち蟹の命はもちろん、人間の命すら軽んじている。自分だけが豊かになればいい、周りのことなんてどうでもいい。そんなことが許されていいのかしら。あなたの命はここで尽きようとしている。でも私たち蟹はあなたを見放したりはしない。さあ、再び目覚めるのですよ・・・」

若い男は浜辺で意識を取り戻した。

「ああ、助かったんだ」

体が軋む。やっとのことで目を開き、再び太陽の光を浴びて立ち上がった。そして歩こうとしたとき、あることに気づいた。

「ま、前に歩けない・・・」

どうしても前に歩けないのだ。そして自分の手足を見ると、さらに驚愕の事実を知る。長い間、海水につかっていたためか、皮膚の表面がざらつき、色が変色している。手で触ってみると、驚異的に堅い。そう、すべて堅い甲羅に覆われていたのだ。

「まさか・・・」

そう、彼は蟹によって改造手術を受けた、「蟹人間」となっていたのだった。甲羅による驚異的な防御力と、圧倒的な握力を兼ね備え、人差し指と中指が発達してどんな堅いものでもたちまち断ち切る、シザーハンドもびっくりのハサミ能力。そして横方向への高速移動。しかしその反面、前後方向にはまったく移動できないというハンディを背負ってしまった。

「そ、そんな馬鹿な・・・」

しかし事実は事実として受け止めなければならない。そのとき、沖の方に見慣れた漁船が見えた。そう、それは蟹人間となった若い漁師が働いていた、あの、蟹漁船である。それを見たときに怒りが、憤りがこみあげ、それこそゆで蟹が見せるような赤い色に染まっていく。それは太陽エネルギーを体中から吸収して額へと集中させたかのようだ。

許せない。あの船長だけは許せない。

そのとき彼の額から光線がほとばしった! その光線は一直線に蟹漁船へと延び、まるで射るように貫通した。そして次の瞬間、蟹漁船は爆発、炎上する。

これが、後に蟹人間の必殺技、

 

 

蟹光線

 

 

である。蟹人間となった若い漁師は「蟹人ライダー」となのり、必殺技の「蟹光線」を武器に、今日も悪辣な支配と搾取を続ける資本家をやっつけるのだ。ブッコ。