ソリはいくらチューンしてもスキーにならない。大衆スポーツカーの終焉

dscf0006

マイカーの終焉は2016年にはじまる - のまのしわざ のつづき。

マイカーブーム、マイカービジネスは外国の高級車、スポーツカーへの憧れから生まれた大衆車によって生まれたことを前回指摘しました。

そこで今回は大衆スポーツカーについて考えます。

大衆スポーツカーの誕生

スポーツカーとは主に運転が楽しい、サーキットを走れる性能をもつもの、など移動や運搬を目的としないものです。つまり旅客でも貨物でもない、純粋に走りを楽しむもので、近いものはアルペンスキーです。

さてスポーツは基本的に裕福な人がやるものです。これはスポーツが盛んな国は先進国であり、文化的に高度な国が多いことがオリンピックでも明白です。そうスポーツは基本、金食い虫なのです。

その中でも比較的お金のかからないスポーツもあります。それが陸上競技であり、サッカーです。ですからマラソンでアフリカの選手が活躍したり、サッカーは南米、中南米が強いのはそのためです。

スポーツカーも基本的にそうで、金食い虫です。ですから大衆車を生み出した大衆車メーカーは大衆スポーツカーを生み出しました。

大衆スポーツカーの特徴はとにかく流用、流用、コストダウン、一点豪華主義です。

ホンダ・タイプRの系譜

特に顕著なのがホンダ、特にタイプR。

ホンダの特徴は、軽量コンパクトな大衆車に高回転まで回るハイパワーエンジンをぶちこむというのがセオリー。初代CR-Xは当初軽量だけが売りでしたが、マイナーチェンジでDOHCエンジンであるZCを投入。二代目CR-XではVTECエンジンを投入することで、レーシングエンジンと同等の性能をもたらしました。

これに拍車をかけたのがタイプRシリーズ。

DC2インテグラではもともとVTECエンジンを投入していたのに飽き足らず、さらに超高回転型のエンジンを開発、同時に軽量化、ボディ補強を行うことでサーキット走行が楽しい、サーキット走行用車両を生み出しました。

これはもともとNSXがポルシェやフェラーリ同様高級スポーツカーを目指しており、サーキット走行での甘さががあったのに対し、タイプR開発でピュアに運動性能を突き詰めていった知見をもとに、大衆車であるインテグラにフィードバックしたものです。

このタイプRシリーズはその後シビックまで拡大しました。

インテグラはシビックベースのクーペ(3ドアハッチバック)、シビックはご存知のとおり大衆車の代表車種です。

ほころびがではじめたタイプR

ところがこのタイプRの栄華は長くは続きません。モデルチェンジしたインテグラ、シビックはそのベースにストリーム、つまりミニバンをベースとしたために様々な弊害を生み出しました。動かないサスペンション、高い車高、重くなったボディ・・・排気量は拡大しハイパワーになったVTECエンジンをもってしても、サーキットや競技で先代を上回ることが難しい。

またシビックは1600ccに対して2000ccになったことで参加できるクラスが異なってしまい、うまみがなくなってしまったことも問題でした。

大衆スポーツカーのベースは大衆車ですが、そのベースがミニバンになった瞬間にコンセプトが崩壊、ミニバンは運搬用なわけでそもそもスポーツに向かず、背反しあうこととなってしまったのです。ソリをいくらチューンしてもアルペンスキーにはなりません。

DSC_5285

そしてインテグラはモデル廃止、シビックも4ドアセダンのみとなって存続するも、大衆車そのものが下火となり結果として日本市場でシビックは終了したわけです。

つい最近復活したシビックタイプR、これはUKで生産されたれっきとした輸入車。ですので国産大衆スポーツカーではなく、やっぱり外国のスポーツカーでした。

マイカーブームを牽引した大衆車が滅んだ今、日本車にはほとんどソリしか残っていません。

大衆スポーツカーの終焉

市場も酷で「スポーツカーが欲しい、でも200万円でね」というユーザーばかり。500万円でもいいからちゃんとした日本のスポーツカーをでたら買う、という人はあまりいません。500万円もあれば、外国のスポーツカーが買えちゃいますからね。中古ならBMW Mシリーズやポルシェ・ボクスターがその価格レンジです。

大衆車が終焉を迎え、マイカービジネスが崩壊したあとに残るマイカーはスポーツカーのみですが、そもそもベースとなる大衆車がないわけで、そりゃ大衆スポーツカーがでるわけはありません。

そうこうしている間に自動運転がきてしまい、手動運転をするスポーツカー自体の存在がそろそろ否定されてしまいそうな気配です。