まず最初に私は映画「ゴジラ」の知識視聴経験はあまりなく多少かじったくらい。エヴァは一通りみていますが、何度も見返すほどでもなく、いわゆる一般的なファン程度。そんなアラフィフ、アクティブシニア世代がシン・ゴジラを見に行ったらすごかったのでその備忘録。
(ネタバレありなので、ご注意を)
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見に行く前
庵野秀明がシン・ゴジラをやると聞いて最初に思ったのは正直、「エヴァ、どうなったの?」でした。エヴァ続編のスケジュールは遅れまくり、情報もすっかりなくなり、おそらく完全に沈黙してしまったのでしょう。その傍らでアニメーター見本市や特撮のイベントなど精力的に活動、まあいいよね、気分転換も必要だからね、と思って看過してましたがついに映画まで作ってしまうとは、ひどいなあ、でもエヴァファン誰も怒らないのね、心広いな、という感想。
シン・ゴジラも大好きな特撮で気分転換をはかっているのでしょうと思っていたら実は違ったのです。
パニックになる民衆を描かないのがすごい
いわゆるパニック映画に近い作りなのですが、感情的になる民衆の描写をバッサリカット。論理的かつ実務的に動く官邸、自衛隊を中心に描くのみなので、非常に淡々としています。
災害規模は3.11の東日本大震災の津波が東京に押し寄せたらという想定で、人的被災、疎開による経済損失など「日本沈没」なみの脅威なのですが、それに対する内閣総理大臣を含めての行政対応に一切「ドラマ」がありません。ようはこれはシミュレーション、災害想定訓練であり、架空のドキュメンタリーに昇華してます。
それだけに子供ウケは排除、大人、特に社会をよく知るものをうならせる出来になっていました。
BGMがすごい
▲達成困難・危機一髪なミッションの深刻さを伝えるBGMといえば - のまのしわざ
その災害対策でかかるBGMといえばもはや定番となった、007のBGMのインスパイアもの。
007 -> エヴァ -> 踊る大捜査線ときて、そして再び庵野作品となるシン・ゴジラへ。
一瞬同じかと思いきやよく聞くとアレンジが違う別の曲です。実写という点で踊る大捜査線のような印象が強く、機材の細かいカメラワーク、例えば机が並ぶ、コピー機が並ぶ、モニターが並ぶといった点で物量を表現しています。
またオリジナルサントラ、伊福部昭作曲のものや当時の映像など、原作へのリスペクトに満ち溢れています。
石原さとみがすごい
登場時にあれ、石原さとみによく似た外人でてきた、と思ったほど別物。まさしくアメリカ育ちのハーフっぽい、英語なまりの日本語と外人受けするメイクとドレス。一分の日本人らしさもありません、石原さとみなのに。
・【インタビュー】石原さとみがヒロインを務める映画「シン・ゴジラ」が公開 男性社会の中で輝くキャリアウーマン像を語る | WWD JAPAN.COM
その裏には相当な努力があったようですね。東京メトロのナチュラルな感じからガイジンまで、見事な振り幅。トルネード投法も完璧。
・石原さとみ、始球式でトルネード投法 昨年のマサカリ投法に続き | ORICON STYLE
イーオンも面目躍如です。
子供の夢がすごい
前半は淡々と行政の災害対応を描くのみなので、このまま会議室の中で終わってしまうのかと思っていたら、そこは正統派怪獣映画。シン・ゴジラ VS 自衛隊のスペクタクルは健在。というかやりすぎ。
ゴジラといえばどの建物を壊すか、今でいうところに聖地巡礼に近い扱いでしたが、今回はそういうレベルを超えているほどの災害規模。そして自衛隊との決戦の地は多摩川河川敷。
ここに戦車隊、ヘリ部隊が集結して攻撃するわけですけど、そのレベルは総力戦。総合火力演習は戦車は同時にいても6台程度、その数倍はあろうかという火器使用にビビります。いやこれだけ打ち込んだらゴジラじゃなくて住民が死んじゃいます、一応避難していますけど。
簡単にいうと全部効果がなく敗退するわけですが、ヤシマ作戦ならぬ、作戦決行がひどい。
無人在来線爆弾・・・
・【ネタバレ】無人在来線爆弾【シンゴジラ】 - Togetterまとめ
誰しもが子供の頃発想したけど、誰もやらなかったことを映像化しやがった!
もう爆笑しかないです。この前振りに無人新幹線爆弾もあるし、もうなんというか、子供の夢を見事に達成してます。
その一方で工作部隊全滅もしているんですけどねえ、この作戦。犠牲上等とのコントラストがすごい。
あのとき攻撃していたら?
ゴジラは形態を進化させているわけですが、まだ幼いころに一度品川でヘリの攻撃を計画しますが避難民が残っていたため、総理は攻撃中止を決断します。結果的にこの判断は間違っていたといっていいでしょう。つまり人道的見地、いや国民感情をはかばってたった2名の人命を尊重したばかりに、その後の数万人規模の犠牲、そして数百万レベルの避難へとつながったからです。
この決断は示唆的で、いつの世でも真っ向議論になる問題です。まあ映画的にはここで攻撃、ハイおしまいじゃ成り立ちませんけどね。
二次創作の天才
とはいえ、最大の問題はこれが「ゴジラ」のリメイクという点です。昨今ハリウッドも含め当たるかどうか分からないオリジナルよりも、手堅い人気のある作品のリメイク、最新技術を使った表現力アップが流行している。そのスキームにこの「シン・ゴジラ」ものっているわけですが、とにかくこれがすごいのが、全員がハッピーになったということです。
ゴジラをもつ東宝も、エヴァを待ってたファンも、庵野秀明フリークも、単なる映画ファンも、アニメファンも石原さとみを含む俳優ファンもみんなそれぞれ楽しめる要素を満載できた大娯楽超大作に仕上がった点。おそらくこれだけの多角的ベクトルで大きな評価を得られたのは成功でしょう。
そしてなにより、数少なくなったとはいえオリジナル・ゴジラのファンも納得の出来映えに違いありません。そういう意味でも年齢層は10代から60代まで幅広くカバーできました。
これが庵野秀明総監督による、オリジナル怪獣映画だったらここまで高い評価が得られたでしょうか?
表現手法としてオマージュやリスペクト、パロディを秀逸な形で用いることに長けているガイナックスの系譜の中で、一番の強みをここで発揮できたことが、いい結果につながったと思います。
そしてなにより、原作に対するリスペクトを随所に感じ取りました。彼自身が最大のゴジラ・ファンなのです。
「シン・ゴジラ」公開記念特集 安野モヨコ、庵野秀明を語る (2/4) - コミックナタリー Power Pushこれは皆さんおっしゃることだと思うんですが、やはりオリジナル版の「ゴジラ」(1954年)への愛情とリスペクトを感じました。そのうえでちゃんと現在形の新しい物語に仕上げているところが、個人的には好きですね。もちろん影響の受け方っていろいろなので。元となる作品のある部分を少しずつ切り出してコラージュするようなやり方も、私はいいと思うんです。ただ今回の「シン・ゴジラ」は、それとは違っていて......。マンガで喩えるなら古い図版を、最新用具を駆使して新しい紙にトレースしている感じかな。
次に期待するもの
はやくもシン・ゴジラの続編を期待する声も出ていますが、もちろんエヴァの続編も残っています。私はこのままではエヴァは未完のまま終わると思っていますが、それよりも期待しているものがあります。それはナウシカ。
ナウシカを作らせてくれと宮崎駿にかけあうこと数十年。頑固親父は首を縦に振らず、スタジオジブリも後継者探しを諦めて、長編映画製作をやめてしまいました。押井守、宮崎吾朗、そして庵野秀明と候補がいたのにもかかわらず、いずれも宮崎駿は「俺が一番だ、現役続行だ」と却下してしまいました。
しかしこれだけの評価をひっさげて、庵野秀明を担ぐ人たちはさらに増えることでしょう。そうして頑固親父がいなくなれば。。。ようやくナウシカをやれる環境が揃うわけです。
二次創作のプロ中のプロですから、ナウシカの出来映えも間違いなく高いものになるはず。ただそれが宮崎駿に認められるかどうかは、おそらく認められないままでしょうけど、碇シンジとゲンドウとの関係なので、そりゃもう仕方ないんです。
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