劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM phase-01: 20年待った甲斐があった

機動戦士ガンダムSEEDがのま家では多いに盛り上がっている

これは2003年6月29日の投稿である。それから21年後、いまも、いや今だからこそまた盛り上がっている。そう、劇場版SEED FREEDOMによって。

10回みた劇場版SEED FREEDOM

公開から11週目に突入、大ヒットとなっているガンダムSEED FREEDOM。私もその面白さにひきこまれ、毎週欠かさず映画館に通っている。人によっては公開1カ月で30回みた、という人もいるからなんてことはない。おそらく30回みてもその面白さは揺るがないだろう。それくらい密度がこく、よくできていて、20年待った甲斐があり、さらにこれでSEED卒業できる、成仏できるだろうと思っていた我々ファンの魂を再び揺さぶり、燃え上がらせた良作なのだ。

おかげで20年ぶりにSEED(無印)を再び見始めているくらい、しかもこれがまた面白い。20年たってもまったく世界観、キャラにブレがない、まさにSEEDの世界線、コズミック・イラそのものである。

SEED FREEDOMとは

キラとラクスの愛の物語、というのがメインテーマ、だと思われる。SEEDの世界観では戦争の中に常にキララク(キラxラクス)、アスカガ(アスランxカガリ)というようなカップリングが重要視され、恋愛の片手間に戦争やっているような様相を呈している。これがガンダム(ファースト)などとの大きな違いで、やはりこれは脚本の両澤千晶さんの采配と思う。ようは女性目線なのだ。

ガンダムはそれまでも、これからも基本は男性による男性のための物語だったのだけど、SEEDはファーストのストーリーをなぞりながらも、男女の物語を描いている。悪くいうと痴情のもつれにも近い。

今回のFREEDOMは前半はもうメロドラマ、倦怠期のカップルに間男が登場し、寝取られそうになるという昨今流行りのNTRモノ。しかしすれ違っていた二人が「愛」をはっきり口にすることで力を取り戻し、悪に打ち勝つという・・・ちょっと書いてて何言っているのか分からない。

1980年代以降、ラブコメ全盛になって以来愛を口にすることはギャグになってしまい、物語でふれることもなくなった。それをこの21世紀、2020年代にロボットアニメに純愛を持ち込んできたのは新鮮で監督もそれを狙ったという。

さらわれたお姫様を騎士が取り戻す、という王道展開だがその後の「バカップル」ぶりの徹底がまた面白い。中途半端に愛を叫ぶのではなく、正々堂々と愚鈍なまでに純愛を口にする。それに加えられる、傲慢とも呼ばれる圧倒的戦闘力、新登場マイティフリーダムガンダムがそれを加速させる。

「それでも僕には武器がある」

「ほう、それは何だ?」

「ラクスの愛だ!!!」

大爆笑である。爆笑しすぎて涙でてきてしまうほど。でもこれは笑っただけではない、感動の涙でもある。もうラブラブカップル、バカップル。でもそれをしなければならないほど、コズミック・イラは切羽詰まっているのである。

コーディネーターの少子化問題

ナチュラルは旧人類、遺伝子操作を行って自由に能力を付加したのがコーディネーターと呼ばれる新人類。この2つの勢力が対立し、戦争しているのがコズミック・イラである。このコーディネーターには能力と引き換えに繁殖力が弱い、子供ができにくいという問題がありそのために若くからいわゆる許嫁、婚約者が決められる。

この設定の素晴らしさがSEEDの素晴らしさを支えているといっても過言ではない。

能力が優れている得体の知れないコーディネーターに不信感、恐怖を感じる旧人類のナチュラル。その不安、恐怖は差別と憎しみを生み、排斥運動から強硬派による迫害、虐殺へと発展していく。人類の根源に迫るこの設定がSEEDの世界観のみならず、現在起きている世界での戦争を端的に表しているといっていいだろう。

そして少子高齢化は日本のみならず、数十年後先進国すべてに訪れる社会問題でもある。現実問題として、21年前の2003年に息子が生まれたがその後兄弟はいない。妹夫婦も一人っ子であり、弟は離婚し子供はいない。野間家で考えても少子高齢化は進んでいるし、野間家直系は一人息子のみになってしまうのだ。そんなことになるとは21年前は予想もしていなかった。そして高校大学の友人を見渡しても、未婚、結婚しても子はいない、子供がいても一人っ子が大多数なのである。

こうなってくると一人息子には是が非でも結婚と孫をお願いしたいというのは親の気持ちなのだが、いやそんなことよりなんで兄弟作らなかったのか、という話になるのも当然である。そこには当然大きな声で言えない家庭事情があるわけで、それなら人に頼るなという次世代の気持ちもよくわかる。そしてそんなことがあちこちで起きているわけだ。

これはコーディネーターだからというわけではないのだが、結果的に少子化という点では共通しており、それに対応して許嫁、親が婚約者を決めて早く結婚させようという試みが面白い。日本もそうした方がいいかもしれない、くらい実は少子化は進んでいる。

SEEDの設定でこの婚約者問題で面白いのが二人の主人公のキラ、アスラン、そしてアスランの婚約者ラクスである。

カップリングがややこしくなるのがSEEDの特徴であるが、このアスランの父親パトリックがラクスの父、シーゲルを暗殺、ラクスもひっとらえろと言い銃を向けることになる。ラクスはキラとともに歩み、SEED後ひっそりと暮らすのだけど、また戦火に戻ってくるのが次回作のDESTINYというわけだ。

なのでアスランとの婚約関係は無理やり解消されているのだけど、FREEDOMでは

「オレの知っているラクスはそんなじゃなかったぞ」

とみんなが「えええー」って反応するほどの元彼マウント。アスランはキラの双子の姉というカガリと恋仲になるわけで、このへんはややこしい。他にも恋関係がややこしいのがSEEDの特徴で、それがまた当時の中高生に受けたと思われる。

でもこれは大事なことで、恋仲にならないと子供はできないのだ。

DESTINYの呪い

SEEDは当時も大ヒット、それが故に1年後続編となるDESTINYが放映開始された。もちろん期待は高かったものの、早々に混乱していく。やはり準備不足だったのだ。

主人公は新キャラのシン・アスカ。冒頭で妹と家族が戦争に巻き込まれて死ぬ、しかもそれはフリーダムとカラミティの戦闘だったという設定で、戦争嫌いというかフリーダム憎し、だけで動いているのが薄かった。ようは私怨・私情だけの人物である。早々に物語を回せなく途中で闇おちし悪役転向、引退生活していたキラ・ラクスが復活し、主役に返り咲くことに。

ただでさえ物議を醸すSEEDシリーズだったのだけど、この主役交代にネットは大騒ぎ、特に両澤氏への不平不満、批判は激しいものだったのはよく覚えている。

こういった混乱ののちなんとかまとめて終わったDESTINYだが、多くのファンに不平不満、わだかまりは残り続けていたようだ。劇場版の発表があり、その後音沙汰がなくなる。

DESTINYの最中もその後も監督含め両澤氏への批判や糾弾はやむことがなく、心を痛めていたと思う。たかが作品、という言い方は失礼だが、なぜ架空の物語で自分の思い通りにならないことに、これほど憎しみをぶつけられるのか。年齢が若いだけではない、身勝手で相手を思いやらないネットならではの誹謗中傷が繰り広げられるのは見るに絶えなかった。

そして両澤氏の死去。キーマンである両澤氏の死去で劇場版はもうない、そうでなくともその時点で14年経過していたのである。物語のライフタイムを考えても賞味期限はとっくに切れている。スタッフだって声優だって年をとるのである。

奇跡の復活、そして公開へ

そして完全にあきらめたころ、再び「劇場版公開」のアナウンスが発表された。もうなんというかそれだけで感無量である。物語はDESTINYから2年後の完全なる続編。あれ以上の戦争をしながら、物語を進めるなんて難しいことができるのだろうか。たったの2時間で作品をまとめられるのか。不安しかなかった。ティザー映像だって期待と不安で一杯、ネット上でも予想が飛び交い正直決して期待値が高かったとは言えない。

そうやって公開されたFREEDOM。絶対にネタバレしてはいけない、情報をシャットアウトし、家族3人で見に行った。

大興奮である。話も、キャラも、モビルスーツも、声優も、歌もなにもかもが素晴らしい。まったく緊張が途切れることなく一気呵成にエンディングまで流れ込んでいく、そして流れるsee-sawの「去り際のロマンティクス」。もう最高以外何者でもない。

そしてネットでも大絶賛、映画をみては2chのみんなの反応集をyoutubeでみて、また映画を見に行く、このエンドレス。何度みてもズゴック最高である。

20年という長い年月を感じさせないSEEDの世界観とキャラたち。一方あの時生まれた息子は二十歳となっており、長い歳月を改めて感じて感慨深い。

FREEDOMで再びSEEDにはまり、またまだ観たいという気持ちが強くなったし、ガンプラも欲しい。続編があるのか分からないけど、世間もバンダイもほっておかないだろうから、またやってくれると嬉しい。まずはblu-rayが買いたいな。