【ネタバレあり】 #雨男 がみた「天気の子」の感想

ネタバレありです。











見に行くまで

特に新海誠が好きなわけではないので、前作「君の名は」は飛行機の中で、そして少し前の作品「星を追う子ども」はDVDでたまたま見た程度の知識で、「天気の子」のトレーラーも予告編も一切見てませんでした。

聞こえてくる評判はというとみる人によって異なる、賛否両論。「君の名は」が名作、ヒット作だったので、それと比べるとイマイチという評判が多数。また新海誠が前回ヒットしたので今回は好きに作ったともいわれ、そうなると分かりにくい作品になるのも仕方なしというような、適当な感想というか印象をもってました。

ところが題材が天気、特に雨男ののまさんは見た方がいいよ、これはパトレイバーだよとかいう正体不明の評判がでてくるじゃないですか。仕方ないのでいそいそと見に行きましたよ。

5パート構成

「君の名は」と比べて面白くないという評判も分かります。いわゆるカタルシスという点では明らかに足りないですからね。でも逆に私は「君の名は」の作られたカタルシスとか、不条理ってのは物語性を高めるための過剰演出だと思うふしがあり、多少ひくんですよね。そうだよね、こうすると盛り上がるよね、泣かせるよね、って。

「天気の子」はとにかく情景が丁寧に作られてあって、あまりに丁寧で物語が始まるまでながっ、長すぎる。

映画をパートに分けると単純に、起承転結+エピローグの5つで構成されていて、それぞれ25分で作られている感じ。これって5話のTVシリーズで作るにはいいんじゃないのかな。特に分かりやすいようにそのパートごとに盛大にテーマソングがかかるし、これTVシリーズだったらエンドロールだねえと。

すぐあの世を出してくる

天気の話とか地球環境の変化による異常気象、雲の中に未知の生物とか、色々ちりばめているけど、いやこれ、そんな話じゃないんです。新海誠が大好きな「あの世」の話なんですよね。彼岸と此岸、その接点があの廃墟ビルの上にあった鴨居というお話。

で、このテーマ、いつもの奴です。少なくとも私がみた3作品全部コレ。すぐ彼岸に行きたがる新海誠。

で最悪なのが「君の名は」で、あれって此岸じゃなく彼岸を選択する話なんですよね。認めたくない現実よりも、理想の死後の世界の方がいいという。いややめようよ、黄泉の国いっちゃダメだから。

でこの黄泉の国にいって帰ってくる話が「星を追う子ども」で、表面はラピュタとかもののけ姫ぽいんだけど、死後の世界ですよ。で問題はそこにとどまって帰ってこない奴もいるし。あー、もう。

そんな新海誠だから、見てるほうはハラハラドキドキ。

晴女は人身御供、いけにえで命取られてその代わりに晴れになるというわけだから、まあ簡単に言うと死ぬわけですよ。死んであの世にいくわけです。ああいっちゃった、ああ、でも追いかけてるー、ああーまた黄泉の国かよー。

そりゃ日本最古の神話、古事記にもあるくらいだから「鉄板中の鉄板」なんですよね、物語として。日本人のDNAに刻まれた最高に盛り上がる、彼の世の話です。

黄泉の国から戻ってくるのかどうか、これがまた話の分かれ道なんですが、よかったよ戻ってきたよ。

ところがよくないのがとばっちりを受けた東京。

晴女の命と引き換えに晴になるはずが、現世にもどっちまったもんだから雨は降り続き、東京水没。

もうこの時点で涙腺崩壊です。

笑いすぎてw

東京破壊願望

その結果どうなったかというと東京は水没、レインボーブリッジの橋げた(52m)まで水没してたので80mくらいは沈んだでしょうか。

ってことはまあほぼ水没ですよ。少なくとも23区はインフラ崩壊です。ところがこの辺、超適当。東京はそれでも都市機能をもっていて、人が住んでいるんです。

普通に考えて80mも水位上がるってことは海岸線が後退しているから東京だけじゃなく、主人公が住んでいる島(八丈島あたり)も相当水没しているでしょう。

しかしそんなことはお構いなし。だってファンタジーだから。サイエンス関係ないから。だからSF考証とか不要なんです。

でその結果東京は水没したんですが、まあこれを描きたかったんですよね。水没し、文明がなくなって廃墟と化した都市の美しさを。

でこれみたとき、「うる星やつら ビューティフルドリーマー」を思い出しましたね。あの冒頭、街は廃墟となり砂漠化し、オアシスで遊んでいるあの光景を。

ああ、そうか、この人も日常を破壊したいんだね。そうだよね、だって「東京ってこええ」ですから。

ゲームっぽい作り

サイエンス的につじつまが合わないとか、キャラクターに深みがないとか、色々と突っ込みどころが満載で、それが没入感を損ね、「君の名は」と比較して面白くないという評価をえる一つの要因ですが、それもまた仕方ないと思います。

というのもそもそもこの監督、ゲーム業界出身なのでやっぱりゲームっぽいんですよね。つまり全部は「設定」なんです。ゲームって面白くて本当に何もない世界をゼロから作り出すところがあり、それはグラフィックでも3Dでも、ロジックでもそうで、人間が組んで初めて世界が構成されるわけです。それが通常の映画が「撮影」という、そこにあるものをとってくるのと大きな違い。

映画畑、もしくは映画に憧れてやむなくアニメを作っている人はこの大原則にこだわって、いや囚われているんですね。一番わかりやすいのは物理法則と自然の摂理。

ところがなにせゲームはそういうのは全部人間が作るので、無視しようと思えば、簡単に無視できる。だからつじつまが合わないのだって、そういうものだとなればそうなんです。バグは仕様のひとつですから。

今ちょうどFateを見ているのですが、この10年に1度の「聖杯戦争」、聖杯を求めて7人のマスターと召喚された英雄のサーバントが死闘を繰り広げる、高校を中心にして、ってもうおかしいわけですよ。最初はあまりにその突拍子のなさにまったく理解できず、挫折したわけですがこれが「設定」です。設定はそういうものだ、と開き直って受け入れるしかないわけですね。

だからこの「天気の子」では雲とか雨とかあれがどうして祈りで制御されるのかとか、イキモノみたいな水がでてきたりとか表現されるものの、まったく説明がない。まあ多分なにか考えはあるんですが、それをいちいち説明はしないわけです、「設定」だから。でこの設定は視聴者が考え、二次創作に生かしてもらうというのがいいわけでしょう。エヴァの死海文書みたいなもんです。

ゲームっぽいといえば、ストーリーの展開の仕方が分岐なんですよね。ここでどうする、それによってバッドエンドを迎える、他の世界線、パラレルワールドへ入っていくのも自然です。

特に最後、主人公が鳥居にたどりつくまで幾多の困難を越えていなきゃいけないんですが、これって昔あったゲームブック、コマンド入力型のレーザーディスクソフトみたい。タイムギャルとか、サンダーストームとか。

だから映画にせずともゲームでもよかったんじゃないですかねえ、知らんけど。

まとめ

ということでまあ色々と面白かったです。とにかく現世で生きててよかったなあというのが安心ポイント、そしてその結果東京水没で超ウケる、っていう映画でした。

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タイトルと中身が全然違う、まったくオススメしないですけど勉強になりますw

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