当時ゼータガンダムに失望したのはなぜか

当時というのは放送当時のお話しです、つまり1985年、高校生の時。

宇宙世紀ファンにあっても、微妙な年齢のギャップによりファースト、ゼータ、ダブルゼータと意外とファンが分かれるもの。

リアルタイムでファーストガンダムを見ていた自分としては、ファースト原理主義をかざすわけではないけど、やはりゼータには失望していたのは事実なのでその理由を改めて考察します。

デザインフィロソフィーが感じられない

後付け設定で色々あるようですが、多くのメカデザイナーの参画とバンダイ側の圧力(?)の結果そのモビルスーツデザインは混乱を極めているといえましょう。

アーガマから発進するモビルスーツでも色も形もゴッチャゴチャ。

ガンダムMk.II(黒い。その後白くなる)
Zガンダム(白と青い)
百式(金色)
リックディアス(赤)
メタス(金色)

エゥーゴ | モビルスーツ | 機動戦士Ζガンダム

正規軍ではないからという理由も分かるけど、まあヒドイごちゃまぜ感。で勢力図(エゥーゴ、ティターンズ、アクシス)の混乱がまたストーリーを複雑にし、1週間に1度というタイムスパンでは何がどうなっているのか高校生のよい記憶力をもってしても覚えきれない。

しかもMSをもって相手に寝返るからまたヤヤコシイ。ああ、女ってコワイ。

ビーム兵器多用による雑な戦闘

ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクがいくらおもちゃっぽいとはいえ、いやさらにGアーマーに至っては合体変形メカそのものなのだが、その理由付けである、近接戦闘用、中距離、長距離支援、そして高速移動・運搬および重火器による支援戦闘機という区別と意味付けは、戦闘に大きなバリエーションをもたらした。

アムロがガンダムではなくガンタンクで十分だと出撃し、その後その判断は誤りだったという描写や、ガンダムが空を飛んで空中戦を行うといったものなどの例から、ガンダム最強ではなく、使い方や用途によって向き不向きがある、あるからこそ他でカバーするかブレイクスルーが必要という説得力につながっていく。

その点ゼータシリーズのMSの説得力が弱いのは、火力、移動速度ともにインフレを起こすだけであり、それぞれの特徴が見えないからである。

MA形態とMS形態の変形という、おそらくマクロスのバルキリーに影響されての変形メカ偏重の時代背景があったからだと思われるが、それにしてもティターンズ側のMS/MAの怪獣大戦争のような無統一ぶりは目を覆うばかりである。

ティターンズ | モビルスーツ | 機動戦士Ζガンダム

インフレが昂じた結果がサイコガンダムで、でかけりゃ強そうだろうという、まあビグ・ザムといえばそれまでだがビグ・ザムはガンダム一機に撃墜されているんだからさあ、という冷静な高校生がいるわけですよ。

きれいなガンダムがリアリティを失わせる

きれいなガンダムとは映画版ガンダムのことです。

MA形態とMS形態の変形、これはGアーマーがMAとされたことを発端としているのは自明です。他のMAといえば、シャリア・ブルのブラウ・ブロ、ララァのエルメスといったようにオールレンジ攻撃を行うための有線サイコミュや(無線の)ビットで、その後のジオングもMAであるが故に足は飾りです、偉い人にはわからんのですという話になります。

これだけは言っておきたい、Gアーマーはもっと評価されるべき - のまのしわざ

TV版ガンダムが素晴らしい件 - のまのしわざ

このようにGアーマー、TV版ガンダムは粗削りで、絵も汚いのですけど、リアリティは意外にもガンダムシリーズの中で最高峰といっても過言ではありません。

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ガンダムが様々なカラーリングが施されても、その無茶ぶりを受け止めるのも、実は元のデザインでは色指定がなかったことにあります。つまり形状だけが決まっていた。そして玩具メーカーから色はどうなっているんだ、と聞かれその場でアニメ―ションディレクターの安彦さんが、青赤黄色で塗り絵をしたものが、現在のトリコロールカラーとなっているんです。

当時の一般的な玩具の常識に照らし合わせた結果がアレであり、だからこそ後付け設定でG-3ガンダムなどのリアルな色設定も自然に受け入れられる素地があるのです。

それ以降のガンダムでこれができるガンダムがあるのだろうか、と考えると、まあ見てないのでなんともいえませんが、Mk.IIの黒・白チェンジ以外にほぼないでしょうね。

その点ザクやGM(ジム)もよいです。量産型であるがゆえにさまざまなバリエーションをもち、まるで国民車のようにファンから愛されています。やられメカがこれだけ愛されるというのも、それまでのロボットアニメにはなかったことですから。

きれいなゼータガンダム

ゼータガンダムをきれいな映画版にしたものが new translation。ジェリドが端役となり目立たなくなったり、ラストシーンが大幅に変更されたり、ロザミアが目立たなかったり、フォウはそこで死んじゃったの? とかもう色々大幅変更。

でもそもそもジェリドがカミーユの名前をいじったのが元であんなことになり、物語がはじまったわけです。その後もジェリドがカミーユにこだわって粘着、それなりにライバル関係になれそうだったんだけど、結局なれなかったからとばっさりカットされてしまったのはまあ仕方ない。

でもラストシーンがああなっちゃうと、もうダブルゼータの出る幕がなくって、物語・宇宙世紀の歴史の袋小路になってしまったのは、少しもったいなかったかなあ。

まあダブルゼータは途中で脱落してしまったので、全部は見てませんが。あと合体メカだし、ぶっといし、好みではないのはある。

ガンダムはつづくよどこまでも

今も映画NTがロングラン公開中、閃光のハサウェイが公開予定などあるけど、やっぱりもう一度みたいのは「改めてきれいなガンダム」かなあ。安彦さんがやりたい、とインタビューで答えていて、その際にはもう一度Gアーマー、ガンタンクの活躍を見てみたい。