先日F1日本グランプリを見に鈴鹿へ行ってきました。今年は子供が土曜日が登校日だったために、子供は土曜日入り。私はというといつものように木曜日入りしたものの、急遽取材仕事が土曜日に入ったため、金曜日フリー走行観戦して土曜日は朝から新幹線にとびのって東京へいき仕事、その後子供と新横浜で落ちあい一緒に鈴鹿移動、と変則的な観戦スタイルとなりました。
今年は日本人ドライバーはいないものの、ホンダが復活参戦、マクラーレン・ホンダという栄光のタッグとして鈴鹿に凱旋するはず・・・でした。
ご存じのように開幕当初から苦戦が強いられ、元ワールドチャンピオンの2人、アロンソとバトンという強力布陣にもかかわらず成績は振るわず。強気の発言と無慈悲な現実のはざまに幾度となく落胆を強いられてきました。
そんな状況ですので、ホンダが鈴鹿に帰ってきた、といっても雰囲気は沈んだまま。
白と黒のマクラーレン・ホンダのシャツを着て帽子を被った人も多く、ホンダのファン、応援する人が多い印象でした。しかしこのような状況下では事前から盛り上がることもなく、たんたんとレースウィークが進んでいきます。
しかも金曜日は予報に反して午前、午後ともに雨。土日は晴れることが分かっていたので各チームはエンジン温存、ほとんど走りません。
マクラーレン・ホンダは少し走るも、タイムは伸びず。他チームの若手ドライバーが元気にタイムを更新していきます。
土曜日の予選は見ていませんが、クラッシュがあり少し荒れたようでしたが、そういったことに無関係にマクラーレン・ホンダは今年度の定位置、昨年のエンジンを積むマノー・マルシャの少し上くらいとふるいません。
しかしこれはもう予想されていたこと、期待していないとはいえ、やはり寂しい結果です。
そしてやってきた決勝日。スタート直後に数台が絡んだ以外は特に問題なく、マクラーレン・ホンダは見どころなくレースは進みました。見どころといえば、直線で若手ドライバーに追いつめられたり、2台、左右からオーバーテイクされたりと、過去の直線番長、栄光のホンダF1パワーの残滓を見ることはできません。
今回は雨がふってもいいようにとグランドスタンドV2席からの観戦でしたが、グラスタは終始静まったまま。レースのスタートからゴールまで、一度も湧きあがることなく終わってしまいました。
レースの内容も結果も、残念だったのですが、それ以上に残念だったのはチームの様子。
例えばピットからスタンドの方にアピールするとか、そういったこともありません。ただ単純に黙々と仕事をこなしているだけ、という印象でした。
だからホームグランプリ、という雰囲気すらなく、ただただ時間が過ぎただけ。一体何を観戦しにきたんだろう、と疑問に思うほど。
その静まりっぷりから、今回のグランプリを「F1お通夜グランプリ」と命名しました。
その主な原因、チームの不協和音は各メディアから伝わってきて、ドライバーはパワーがないといい、ホンダはチームが悪いといい、マクラーレンはホンダが悪いという、もうなんともどうにもならない状況。ようはパワーユニットうんぬん以前にチームビルディングに失敗してます。
うまくいかないから誰かのせいにしてしまおう、というのは「他人事」なんですよね。
自分は自分の仕事をちゃんとしている、でもうまくいかないのは自分以外の誰かのせいだ、という論理なのですが、これがまさに大企業病のあらわれ。
大企業、大きな組織というのはあまりにそれが大き過ぎて中にいる人はついその「外側」「一般社会」「ファン」のことを忘れがち。だから結果が悪いだけではなく、ファンサービスに気が回らないのです。
席はマクラーレン・ホンダのピットの目の前だったのですが、ドライバーが乗りこむときに手を振ったくらいで、その他誰ひとりとしてスタンド側に手をふったり、アピールしたりというのはありませんでした。
比較しても仕方ないのですが、支払が滞っているということでホスピタリティブースをロックアウトされたロータス、他チームから食べ物を「恵んで」もらったり、インタビューする場所がないからパドック裏で立ちっぱなしでやったりと、文字通りホームレス状態だったのにもかかわらず、グロージャン、チームメンバーは冗談をかわしたり明るかったそうです。
昨年のホスピタリティ分も支払できなくて、ロックアウトされたチームであっても、F1の目的がレースの結果だけではなく、興業、人に見せる、楽しんでもらうモータースポーツであることをきちんと理解しているから、できたプロの技です。そして結局7,8位とダブル入賞。しかもその数日後、ルノーが買収(買い戻す)ことが発表され、チーム存続が確定的になりました。
かたやピリピリというか、不協和音のチームはポイント圏外です。
大企業病におかされたマクラーレン・ホンダの未来は暗いなあ、雰囲気もお通夜だし、これじゃあこのあとのグランプリも、そして来年も思いやられると感じた次第。正直、鈴鹿観戦は今年で最後になるかもしれません。子供も来年は中学で忙しいし。
なんかこう、期待を裏切られた、とか憤慨、とかそういうのではなく、寂寥感が支配しているんですよね。特に鈴鹿二往復した身としては、なんか疲労感というか徒労感というか、ガックリです。
学生時代、赤と白のツートンカラーのマシンが鮮烈で、そのイメージを引き継いだNSXがデビューし、VTECの高回転エンジンはまさにF1のホンダパワーの象徴でありました。
今のホンダはその意味で、なんだか空回りしてます。噂ですが、サーキットホテルに役員をとめるために、トップF1チームのスタッフたちが追い出されてしまったとか。こういうのも実に大企業っぽいエピソードです。ホンダはトヨタか。
鈴鹿サーキット(モビリティランド)は人を呼ぼうと必死で、西コースチケットを売り出したり、各イベントにドライバーを引っ張り出したり、レジェンドF1で昔のF1を走らせたりとした成果か、昨年に比べて観客数が増えました。グランドスタンドから見える席は空席が目立ち、グラスタ裏の人混みもかなり空いていたことを考えると、本当に凄いことだと思います。
とにかくお客さんを呼ぶために昔のように安いチケットを設定したのが功を奏したのでしょう。スプーンはグラスタからは非常にとおく、アクセスが悪いですが、難コースでF1ドライバーであってもコースアウト続出する見どころの場所です。安く見られるならちょっといってみようか、といって来てもらうことがやはり大事です。
今のホンダに求めたいのは、一体感でしょうか。F1復活したからには、せめてS660のF1参戦記念モデルくらいあってもいいと思いますけどね。今注文しても来年まで買えない、ってのはもちろんあるでしょうけど、全然ホンダの車種とF1参戦とリンクしてないのが気がかり。今度出る新型NSXなんて、まったくもってアメリカで作り、アメリカで売る車になってしまって、日本的ではないし。なんかもうチグハグ、ばらばら。
ブランドイメージ、ってのはそんなチグハグ、バラバラじゃ作れないですよね。一貫したメッセージが必要。結局今のホンダは軽自動車・ミニバンメーカーであって、エンジンのホンダじゃないんですよね。お買い得な軽自動車に、人と荷物がいっぱいつめるミニバンとF1じゃリンクしないんです。今のホンダユーザーはF1に興味がない。
じゃあなんでF1復活したんだ、って話です。
役員が決めたから、やれって言われたからじゃなくって。
チームが悪いから、F1のレギュレーションが厳し過ぎるから、じゃなくって。
好き好んでF1に復活したんだから、せめて楽しんでよと、楽しい雰囲気を分けてほしいな、フェラーリなんていつもお祭りだよ、と。どうせ勝てないなら元ワールドチャンピオンじゃなくって、日本人ドライバーを乗せてよ、と思うわけです。
トロロッソのMAXくん17歳がアロンソをつつきまわして、結局上の9位でゴールですからね。
まあそんなことを色々考えちゃうくらい、お通夜だったんです。今のマクラーレン・ホンダの白黒カラーは喪服、鯨幕でした。
昔の紅白カラーはやっぱ、めでたかったなあ。まずは色、紅白に塗り直しましょう。