S660はビート後継というよりもS2000後継、行く末が心配

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まあやり過ぎなんですよね。

ビートの持っていた「ゆるすぽ(緩いスポーツ、オープンスポーツ)」ではなく、Sの称号を冠した「カツスポ(カツいスポーツ、勝つるスポーツ、リアルスポーツカー路線)」にしたことがどうでるのか。今から心配です。

⇒ 名前は大事。ホンダ次期ビートがS660になったわけは? - のまのしわざ

ディスコン伝説

まずですね、最初の1~2年はそこそこ売れると思いますが、買う層に行きとどいた後どうなるのか。この私が猛烈に欲しがる時点で「売れない」「ディスコン(dis-continue)モデル」になるのは必至なのです。

⇒ クルマ・デスノート(ディスコン伝説) - のまのしわざ

その点でいえばS2000は約10年ほど生産していたわけで、まあ頑張った方ですが、後継はなし。でもって今回カツスポ路線となり、ビートと軽自動車枠という点で共通していますが、中身というか、作り方はまんまS2000と同じ。ああ、やっちゃったなあ。

S2000と同じくオリジナル設計

何が問題かというと、ミッドシップの専用シャーシは共通部品もなく、新規に起こしているわけですね。キャリーオーバーできる前モデルもないし。この点はS2000も同じで、エンジンだけ他からもってきてるわけですが、6速MTやら、ターボチャージャーやらを新設計しちゃったわけです。CVTはN-ONE等からもってきたのはまあいいわけですけど、数が出ないMTに相当頑張っちゃったのが伝わってきます。

オーバースペックなシャーシ

オリジナル設計な上に、何が困るかというと、軽自動車は自主規制で最高馬力は64馬力に制限されているんです。でもこのシャーシ、どうも100馬力クラスでも余裕でいけそう、なにせS2000よりもねじり剛性が高いというんですから... 明らかにやり過ぎでしょう。

もちろん最初は「軽自動車枠ありき」で設計しているわけで、サイズも排気量もこれで決まってしまい、その中で最大限頑張るわけで、そう考えると相当よく詰め込んでいると思います。

幌とトランク問題

ただそのしわ寄せがあちこちに来ているのも事実で、まず問題となるのは収納がない点。トランクスペースが皆無です。

次に問題なのがオープントップの方式。幌なのはまだしも、ロールトップと呼ばれる脱着式で巻き取りフロント内部の専用収納スペースに収めます。ロータスエリーゼと同じ方式ですが、急な雨では対応がなかなか難しいです。路肩に寄せて、一旦外に降りて、そして幌を取り付ける。車室内もそうですが、運転手も、さらには助手席の人も濡れてしまうことでしょう。

(ロータス・エリーゼに注目)

この点電動オープントップで世界最速、8秒で閉まるS2000と比べて相当な不便とストレスを強いられます。

リア195タイヤ、LSDオプションがない

ビートのハンドリングはアンダーステア、フロントよりもリアタイヤを大きくして「絶対に」リアから先にブレークしないように調整していましたが、その伝統だけはS660にも引き継がれたようです。

フロント165に対し、リアは195幅、しかもハイグリップタイヤのアドバンネオバAD08Rを標準採用。VSA(+TCS)の装備とアジャイルハンドリングアシストと呼ばれるブレーキの電子制御により回頭性を助けるものの、その狙いは明らかにリアをブレークさせない、という決意の表れ。

LSDは標準でないどころかメーカーオプション、さらには無限といったパーツ供給メーカーからもアナウンスはなし。

オンザレール、という言葉は聞こえがいいですが、VSA OFFがないということから、タイヤのグリップ限界ギリギリのところを攻める、というリスキーな走りはできなさそう。

「かつスポ」の割に肝心のVSA OFFとLSDオプションが用意されていないことは疑問が残ります。

2リッターターボ

軽自動車規格というのは日本国内特有のものです。

このサイズにこれだけの機能と性能を詰め込むのは狭小住宅的美学はありますけど、グローバルな目線で考えると、世界で売れないのはちょっとどうなのかと。特に660ccで64馬力は十分ですけど、やはり非力です。

欲しいは欲しいですが、S2000を持っていると、仮にも2000cc 250馬力から比較すると全然パワーが足りません。多少雨が降りそうでもいざというとき8秒で閉められるオープントップならオープンで走ることを厭いません。そう考えると維持費が多少安い以外にS660のメリットを感じられないのです。だって同じSの系譜ですから。

もし、があるならシビックに搭載される2リッターターボ、300馬力クラスのエンジンをリアミッドに搭載したS2000後継を作ってほしかったですね。価格は500~600万円、ライバルは永遠にポルシェ・ボクスター。

デザインも初代NSXを彷彿とさせるものであれば、新型NSXがちょっとNSX離れしているのを丁度埋めることになります。えっ、そういうプロジェクトが進んでいる? それならいいんですけど、そういう話をもう10年以上きいてますが実現しませんね。

ロータス・エリーゼなみに不便ということであれば、むしろエリーゼを仮想ターゲットとして1Lターボ、130馬力くらいにして出せばよかったのに、という気もします。

ということで、ぐらっとココロを動かされるだけに、S660の行く末がちょっと心配なのでした。

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