新型デミオ XD Touring L 4WD 6AT 超辛口高速道路インプレッション

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先日友人にお願いして新型マツダ・デミオ XD Touring L Package 6速AT 4WDモデル、スタッドレスタイヤ装着車をお借りし、高速道路を中心に往復220kmほど走ってきました。その時のインプレッションを。

(※ 辛口ですので、マツダファン、デミオファンの方はそっとウィンドウを閉じるか、怒らず流して下さい)

スタッドレスタイヤ 185/65R15 ⇒ VRX | BLIZZAK | 株式会社ブリヂストン

街中走行とは違う高速走行の印象

すでに2WDのモデルは試乗しており、3名乗車、街中の走行ではそこそこ好印象でした。

⇒ マツダ党 vs アンチによる 新型デミオ SKYACTIVE-D 試乗レポート【動画】【ワンダードライビング】

今回は4WDモデルの最上級モデルに子供と2名乗車です。クルマの乗り味にうるさい(うるさく育てた)子供が高速道路に乗ってすぐに言った言葉。

「なにこれ、フワフワする、怖い!」

私はだまーっていたのですが、そうなんです、高速道路の継ぎ目で揺さぶられるとその揺れが1回で収束しません。ポヤンポヤンして完全にバネに対してダンパーが負けています。

それでいて、小さなギャップではゴン、ドンという突き上げと、ノイズが伝わってきて不愉快です。つまり小さな入力でダンパーは動かず、大きな入力では収束しきれないという、いかにもダンパーにお金かけていない挙動を示します。

つぎの異変はハンドルでした。子供いわく、

「まっすぐ進まない、フラフラしてる、怖い!」

まっすぐ走ろうとすると修正舵が多く、しかもパワステが重い印象。復元力(セルフアライニングトルク、キャスターアクション)が弱いという指摘もあったのですが、とにかく中立付近が不用に重いのです。そのまま我慢して切っていけばハンドルは切れるという状態。

なのでいわゆる「手アンダー」、ハンドルを切れないからクルマが曲がらないという、昔のパワステがない頃に腕力が弱い人、女性がなっていた状況に近い感じです。

じゃあアンダーではないかというと、やっぱりアンダーステアは強く、フロントがフワフワしてインがリフトしてしまいます。なので曲がらないからハンドルをもっと切る、するとコーナー脱出時にハンドルをたくさん戻さなきゃいけない、戻し損ねる、または戻すのが遅れるとフラフラする、と結局ハンドリングが思い通りにいかないということに。まるでPlayStationのハンドルコントローラ、TVゲームみたいにリアリティが薄いのです。

なんだか、運転下手になった気分...

4WDモデルは車高が2WDモデルにたいして上がっていますが、その車高アップ分が悪い方に作用しているのかもしれません。でもなあ、まさかなにもセットアップしていないはずはないんですが。

動力性能、燃費はgood

フワフワする、フラフラするのは少し我慢して、高速道路を走行するときの動力性能はまあまあです。中央自動車道のきつめの坂道でもアクセルを踏み込めば十分なパワーを発揮して、パワー不足は感じません。また220kmほど走行して軽油給油量は10Lと、リッター22kmほどで、軽油代も1000円ほどととても経済的。これは魅力です。

とはいえ、アクセルレスポンスの悪さが動力性能の良さをスポイルしています。具体的にいうと、アクセルをポンと踏み込んでもすぐには反応しないのです。体感的には2秒くらい、実際はもっと短いのでしょうけど、ここ! と思ってアクセルを踏み込んでもクルマが応答しないんですね。クルマからは、

デミオ「本当にアクセルあけるの?」

私「そうだよ、加速するんだよ。」

デミオ「なにかの間違いじゃない?」

私「(アクセルを踏み続けて)間違いじゃないよ、踏んでるだろ、加速しろよ!」

デミオ「ちぇっ、しょうがないなあ...」

というやりとりを経てようやく加速する始末。アクセルを踏むたびにイライラが募り、もういい、知らん! オートクルーズON!

とアクセル踏むのやめてしまいました。

あまりにアクセルに反応しないので試しに、パタパタとアクセルのON/OFFを繰り返してみたのですが、ワイヤー式ならガクガクするところがまったく加減速せず、まったりとしていてスロコン(スロットルコントローラ)制御が行き過ぎてます。

クラスを越えた装備

⇒ 【MAZDA】XD Touring/XD Touring L Package|グレード&価格|デミオ

最上級グレードだけあって、装備は凄いです。白の本革シートはもちろん、ヘッドアップディスプレイ、レーン逸脱警告、ブラインド・スポット・モニタリング(斜め後ろのクルマがいるかどうかの警告表示)、コマンダーコントロール付の大型ナビ、さきのオートクルーズに、出る幕はなかったスマート・シティ・ブレーキ・サポート(衝突防止ブレーキ)などなど。

クラスを越えた豪華装備満載で、これが軽自動車を除く一番下の車種とは思えないほど。おまえは在りし日のトヨタ・マーク2か! と思うほどです。が。

マーク2がそうであったように、そのほとんどの装備は「不要」なんですよね。あるといいけど、ないと自動車としての基本性能が損なわれるというものではなく、過剰装備。安全装備についてはあった方がいいと思いがちですが、このトータルの方向性は運転手の仕事を過剰に奪うものであり、眠くなってしまうほど。

オートクルーズきかせて、あとはレーン逸脱警告にブラインド・スポット・モニタリング、自動ブレーキがあるとなったら、運転手なにしろっていうんですか。あとはスマホでLINEしているか、眠くなるか、です。

安全装備は危険のはじまり

なにせハンドルはフラフラの、乗り心地はフワフワですからね。走る楽しみ、ZOOM-ZOOMはどこふく風。完全に自動運転、ロボットカーの進化の路線にのっかっちゃっています。

これが200km/hとか超高速巡航をしていて、ドライバーのフェールセーフに効くというのなら安全装備もいいと思うわけです。ところが100km/h出すのがせいぜいの日本の道路、中央高速の制限速度はだいたい80km/h制限なわけですよ。80km/hにオートクルーズセットして走ってたら、もうやることなんか何もない、眠くて眠くて仕方ないわけです。正直、そんな低速走行じゃ各種安全装備は不要、むしろ眠くなるから「安心」を提供しないでほしい。

クラスを越えた装備を、とかいってそんなのでコストを使っちゃうくらいなら、自動車の基本性能をあげて欲しいんです。ポワポワで動かないダンパーをちゃんとするとか、リアドラムブレーキをディスクにするとか、不自然な電動パワステをしっかりさせるとか、それが本来の安全装備ってものでしょう。

これが日本のカー・オブ・ザ・イヤーの実力

クラスを越えたコンパクトカー、ヨーロッパのプレミアムコンパクトに比肩、カー・オブ・ザ・イヤー受賞と、自動車評論家などを含めて大絶賛の新型デミオ。それだけに期待していたのですが、街中はともかく、こと高速走行性能や、ハンドリングについてはまったくもって日本の、ドメスティックな要件を越えてない、というのが本当のところです。つまり背高軽自動車や、他メーカーのコンパクトカーより良いという程度ではないかと。最近の背高軽自動車や日本のコンパクトカーを乗ってないので直接比較はできませんが、少なくともMINIやPolo、Audi A1と比較すると、明らかに見劣りします。

いやね、ぽやぽやと高速道路の真ん中車線をオートクルーズ使って100km/hで走る、ってのにはいいですよ。でもそんなのなら、なんで自分でハンドルを握るの? 握りたくないよね、面倒だから。誰かの運転でいいじゃない、でも他の人の運転は信用ならないから、電車でいいじゃない、という悪いスパイラルに入っちゃう。

そう、ドライビングプレジャーが薄いんです。

例えば鈴鹿に毎年クルマで行っています、片道400km、往復800km。これをデミオでいくかというと微妙。デミオなら新幹線の方が速いしいいかなと思ってしまいます。しかしMINIであれば、新幹線よりMINIの方がいいです。それは運転が楽しいから、そして新幹線よりも自由度があるから。デミオは苦痛はないかも知れないけど、楽しみがない。退屈との戦いになっていまうのがツライ。

楽しい、運転していたい、オレに運転させろ、と友人とハンドルを奪い合うような乗り味が欲しいんです。それがヨーロピアンのコンパクトにはあります。

デミオはレンタカーやカーシェアでポピュラーなクルマです。色々な人が乗れるように、角は丸められ、中庸になっている部分はあるでしょう。しかし、運転する楽しみが薄いと結局は「道具」でしかなく、愛着をもってもらう対象にはなりえません。すると「コスパ」という言葉でくくられ、電車と比較されるのがオチです。そんなクルマがカー・オブ・ザ・イヤーです。それでいいのか日本の自動車評論家、日本の自動車産業。

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以上、世の中あまりに万歳な情報ばかりなので、超辛口のインプレッションをお届けしました。実際どうなのかは、御自身で体験して判断して下さい。特に高速道路でのロングラン、ここがポイントです。