自転車は受益者負担をしていないのが問題

日本において自転車の不幸な点は居場所がなく、邪魔者扱いされてる点だということは前回述べたとおりです。その理由は主に領土の問題にあります。領土とは道路のこと。

もともと日本において道路は車輪がついた車両向けに整備されておらず、モータリゼーションや物流の観点から急激に整備された経緯があります。車道と歩道の分離は後回しにされ、車両と歩行者の間で領土の取り合いが始まっています。

特に道路整備の目的が自動車、マイカーといった乗用車だけでなくトラックやダンプなどの産業用のもので、経済発展を旗印に産業偏重、車道整備を優先させています。

歩道の整備や生活道路における歩行者の安全確保は後回しとなり、渋滞する幹線道路を避け狭い路地にまで自動車が侵入してくることとなりました。その結果歩行者の安全や市民生活は脅かされ、交通事故の多発、「交通戦争」という見出しで社会問題化した経緯があります。

道路の整備は受益者負担を原則とし、特定財源として自動車取得税、自動車税、ガソリン税他多くの種類の税金により国や市町村の税収として、道路整備に費やされていました。

受益者負担の一番分かりやすい例としては、高速道路があります。高速道路は自動車専用道路のため、自動車関連税が使われるだけではなく、使用者から都度通行料を徴収するものです。

これをドイツやアメリカと比較すると、ドイツではアウトバーン、アメリカではフリーウェイといったように通行料は徴収していません。これは受益者が多く公益である、ということから受益者負担ではなく公共サービス、国民全体の負担となっています。

さて日本では自転車は便利な移動手段として「歩行者の延長」で考えられがちです。便利な移動手段として、歩行するよりも「高速である」「時間短縮できる」だけではなく「荷物や子供を載せられる」といった利便性も加えて評価されています。

しかしながら安全に対する配慮や交通ルールの遵守という点では老若男女を問わずなされておらず、無法地帯といってもいい状態です。

交通ルールを知っているものから、知らないものまで、信号、一時停止、一方通行、車両通行止め、駐輪禁止など、「車両」として最低限知らなければならいこと、守らなければならないことすら無視されています。加えて歩道の暴走といったことから、昨今では自転車による交通事故で歩行者の安全が脅かされています。

その結果ここにきて「自転車は車両、車両であるから車道を走る」という原則が徹底されることとなり、再び自転車は歩道から車道に下ろされました。

同じ車両である自動車が例えば、信号無視、一方通行逆行、車両通行止めに進入すれば大問題、大事故の原因となります。しかし自転車でこれを守っている人は少数派、加えてすり抜け、速度超過などの危険運転が横行しています。

自転車が安全に通行するための道路、自転車歩行者道の整備、歩行者・自動車と自転車の分離を声高に叫ばれる昨今ですが、ここで考えたいのが財源です。

自動車が受益者負担の原則のもとに多くの種類の税金が課税され、また自賠責保険に加えて任意保険といった保険に加入して受益者負担しています。元々一般財源ではなく、特定財源として税収は道路を作るためだけに使われ、バブル景気前後の平成2-10年には11兆円も使われた道路整備費用ですが、現在では最盛期の約半分の約5.7兆円にまで減っています。

これには無駄な道路改修工事が多い、不要な道路は作らない、過剰な高速道路投資へのブレーキの他、遅遅として進まない都会の用地買収など様々な原因があると思いますが、現在8兆円とも言われる自動車関連税は特定財源から一般財源化され、道路整備以外にも使われている状態です。

しかし日本の道路の整備率東京都で68%、全国で57%と快適とはほど遠い状態のままです。そして渋滞する自動車を横目に、自転車たちが赤信号を無視しながら横をすり抜けていくのが現状です。

こんな状態にも関わらず、自転車のために安全で快適な道路を整備しろ、というのはおかしな話です。というのも自転車は社会的費用、道路整備費用を負担していないからです。渋滞する道路をノロノロと走る自動車からお金をとり、そのお金で自転車の道路を整備し、安全・快適にしろ、といっているようなもの。

つまり、自転車はフリーライダーということです。

この要求をスーパーカーにおきかえると、本来の性能を発揮できる、安全で快適な速度無制限の道路を整備してほしい、またはドリフト族が快適にドリフトできる、専用の峠を作ってほしいと願うのと一緒です。もちろんそういうのは当然サーキットでやれ、という話になりますが、それはスーパーカーもドリフトも公益には縁遠いものだからです。

よく車道を走る自転車が自動車から幅寄せをされるなど「いじわる」をされます。自動車はすりぬけして前にいけないので別に関係ないのですが、これはフリーライダーに対して足を引っ張りたいという心理的傾向からきており、日米比較で日本の方が強いという実験結果がでています。

フリーライダーにならないためには、社会的費用を負担する必要があります。

しかし自転車は取得税も車庫証明も、毎年かかる自転車税もありませんし、自賠責も燃料も不要です。ですから税金はかからず社会的費用を負担する仕組みが現在のところありません。

なぜならもともと日本では自転車が歩行者の延長(公益)なのか、それとも車両(受益者)なのか曖昧だったという歴史があるからです。しかし昨今「軽車両」として車両であることを再確認されたことから、歩行者ではない公益ではないと念押しされました。

これはとても重要なことで、今後自転車の車両としての扱いを強化するための手段、

・登録制
・免許制

が繰り出されるのも時間の問題。ナンバープレートが付与され、取得税他課税保険加入の義務付けが考えられます。

もちろんこの実現はあと2ステップ、3ステップ先の話と思いますが、舵とりの方向としてはそちらに進んでいるような気配です。この流れを後押ししたいために、血が流れることを欲しているようにも思えます。

日本社会は自転車利用者の尊い犠牲を欲しているのだろうか ([の] のまのしわざ)

課税した分は市町村の財源として、公共駐輪場や市町村道での自転車・歩行者用道路の整備に充てられることになるはずので、自転車にとってはいい話です。

(追記)

初出で「社会的費用」とありましたが意味合いが異なるという指摘があり、より趣旨に沿った「受益者負担」へ修正しました。

【参考資料他】


道路事業費の推移 http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/tokei-nen/2012/pdf/gaikyou.pdf

投資額
道路:道路IRサイト 財源 - 国土交通省 http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-funds/ir-funds.html
投資額推移 https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-funds/pdf/data1.pdf
社会資本整備関係 http://www.mlit.go.jp/common/000121595.pdf

競輪
収益金の使途 http://www.ucatv.ne.jp/~u-keirin/syuueki.html
http://www.ucatv.ne.jp/~u-keirin/img/syuuekikinsito.pdf

道路:整備効果事例/道路関係データ(交通量・渋滞・環境等) - 国土交通省 https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/ir-data.html

道路交通センサス | 道路 | 国土交通省 関東地方整備局 http://www.ktr.mlit.go.jp/road/shihon/index00000005.html

平成22年度道路交通センサス http://www.mlit.go.jp/road/census/h22-1/index.html

整備率 http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/tokei-nen/2012/pdf/dgenkyou08.pdf

交通量統計表について :警視庁 http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/toukei/ryou/ryou.htm

概況 (整備率)http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/tokei-nen/2012/pdf/gaikyou.pdf


県境 http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/toukei/ryou/image/04.pdf
多摩地区交通量 http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/toukei/ryou/image/05.pdf

NYと東京比較 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q106195165


自転車利用ガイドライン http://www.mlit.go.jp/road/road/bicycle/pdf/guideline.pdf

整備手法 http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2012/10/DATA/70mao102.pdf


歩道を通行できる条件 | 自転車の道路交通法(交通ルール) http://law.jablaw.org/sw_swtc

愛媛県警察 / 自転車の通行方法 http://www.police.pref.ehime.jp/kotsukikaku/j_tukohoho/newpage.htm

大阪府/自転車歩行車道における自転車通行部分の明示に関する実施要領 参考(Q&A) http://www.pref.osaka.jp/dorokankyo/osakabikeroad/zissiyoubouqa.html



http://www7a.biglobe.ne.jp/~inamaru/chapter-64/64jitensya.htm

自転車が歩道を通れるようになったのは、1970(S45)年からです。
 昭和30年代以降の交通事故急増を受け、道路を造る基準である道路構造令と交通を規制する道路交通法が改正されました。
 道路構造令の改正では、自転車道と歩道のほかに自転車が通れる歩道として『自転車歩行者道』が追加されました。
 一方、道路交通法の改正ではあくまでも緊急的に歩道に『自転車歩道通行可』とする規定を加えただけなので、自転車歩行者道は道路構造令にのみ存在する名称です。
 ただし、道路構造令のとおりに自転車歩行者道を造っても、道路交通法の『自転車歩道通行可』の規制がされなければ本来は自転車の通行が認められません。


警察庁通達に関するマスコミのよくある誤報 | JABLaw代表理事のブログ http://blog.jablaw.org/?eid=1074743

自転車も車両の一種、原則は左側通行です! 広報けいしちょう第38号web版 :警視庁 http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no38/r_m_koho38.htm

自転車の交通安全 :警視庁 http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotu/bicycle/menu.htm

自転車産業基礎資料(h22)
http://www.jitensha-kyokai.jp/hojojigyou/%8E%A9%93%5D%8E%D4%8EY%8B%C6%8A%EE%91b%8E%91%97%BF(%95%BD%90%AC22%94N1%8C%8E).pdf

自転車産業振興協会 http://www.jbpi.or.jp/

一般財団法人日本自転車普及協会 http://www.bpaj.or.jp/

自転車協会ホームページ http://www.jitensha-kyokai.jp/

Japan Cycling Association http://www.j-cycling.org/

自転車保有アンケート
http://www.jbpi.or.jp/_data/atatch/2013/05/00000742_20130507134816.pdf

自転車を取り巻く話題(オランダ、ドイツ比較あり)
http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/bicycle_environ/1pdf/s1.pdf

国道20号線(甲州街道)って2車線あるのに、なぜ幅が狭いのでしょうか? - Yahoo!知恵袋 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1049185780

車線の幅は何m? - Yahoo!知恵袋 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1311866593



http://rik.skr.jp/archives/2009/07/post_3150.html

1964年に歩道が狭くなってしまったそうです。この1964年というのはオリンピックの年です。アジアで初めてとなるオリンピックということで、道路の整備や各種施設の整備が行われました。このときに、多摩川の砂利を都心に運ぶためにこの甲州街道にトラックが行き交い交通量が増えるので、四車線にすると同時に歩道が狭くなりました。  オリンピックが終われば車道は2車線に戻して歩道を広くするという話しが当時あったようですが、その記録は今は残っていないようで、未だに歩道は狭いままになってしまっています。

仙川駅前甲州街道の今昔

東京オリンピック・甲州街道にマラソンを応援にの画像 - 自交総連防府自交管理人のページ - Yahoo!ブログ



甲州街道(仙川)歩道実測
270cm(内側)
120cm 街路樹
150cm 歩道



A 自動車の取得・保有・走行の各段階で計9種類の税金が課せられている。日本自動車工業会は、自動車にかかわる2012年度の税収は消費税を含めて8兆円弱と試算する。 http://www.asahi.com/business/topics/keizainavi/TKY201211060281.html

自動車関係税収 http://www.soumu.go.jp/main_content/000063528.pdf
自動車関係税制の在り方に関する検討会 http://www.soumu.go.jp/main_content/000257632.pdf


【動画資料】

バイク thief


ケルンの道

ライン川のほとり

【Amazon】 自動車の社会的費用 (岩波新書 青版 B-47)
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