新作アニメ「キルラキル」がなぜ昭和世代にオススメできるのか

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今話題のアニメ「キルラキル」。

TVアニメ『キルラキル KILL la KILL』オフィシャルサイト

ちょっと気になったので見てみたのですが、予想以上に面白かったので驚きました。元々絵柄的にも、グレンラガンのスタッフが、と言われてもピンと来なかったのですけど、エンディングが斎藤由貴版スケバン刑事のオマージュということで興味が湧いたのです。オマージュするには理由がある、それは何なのか。

▼EDのある第三話はこちらから

▼比較映像

▼「白い炎」


名曲だな~

第三話の作画には山下将仁の名前も。ええ、あの金田伊功の直系の描き手です。昨今のアニメはアニメーターの個性よりも端正な絵柄を求められると言われてましたが、このアニメはそういうのはお構いなし。多少の絵の崩れや荒れを許容しつつ、ダイナミックな作画で躍動感のあるカメラワークとズームワークで画角が変わりながら表現しています。こ、これは思わず3回ほどみてしまいましたよ、昔ならスロー&コマ送りで何べんも見てしまったことでしょう。残念ながらWEBなのでスローはできず、一時停止を駆使するくらいしかありません。

あの1話でむしろ薄いんです「キルラキル」シリーズ構成・脚本の中島かずきに聞く1(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース

───脚本から絵になって声がついたことで、感銘を受けたシーンがあったら教えて下さい。

中島 それはぜひ、3話のBパートをご覧ください!それはもう、アニメでしかできないことをやっています。いろんな力が総結集していますから。この後、3話のBパートみたいなことが続々おこっていくはずですので。アニメーターが倒れなければ(笑)。

いいアニメかどうか、というのは録画した番組を何回見るかで判断しています。1回みてそれっきりは普通以下。再生直後に名シーンだけ再生(2回目)。そしてさらにスロー再生して(3回目)、また普通に再生する(4回目)となると名作。主に作画面ですが、アニメは動きが命。なので3回以上再生したのは先日はじまったガンダム・ビルドファイターズと並んでなので、これは継続して見ること決定です。

そしてもちろんスタッフロールもくまなくチェック、というのもいいアニメの条件。そのため山下将仁の名前も発見できたというわけです。

ビジュアルとしては露出度の高いセーラー服もどきを身につけているだけの破廉恥極まりないアニメですが、それは作中でその羞恥心をうまく取り入れ活かしているというのも逆転の発想。にも関わらず、おっさんどもが良識をかざしてこれは教育的によくない、子供に見せられないとかいうのは、どうしたものかと。

我々が子供の時代にはけっこう仮面にキューティハニーに、バイオレンス・ジャック、デビルマンがあったわけですよ、あれ、全部永井豪作品だ。でもアニメ版デビルマン、キューティーハニーが丸くなったことも知っていて、逆にオリジナルに飢えていたわけですよね。性的興味を持つというのは人間の(特に男性の)成長過程において通常のことであり、むしろそれを前面に出してます。そもそも深夜アニメなんだから大きなお友達しかみないはずだし、古き良き時代の 11PMや、ギルガメッシュナイトといった深夜における無法地帯感覚を彷彿とさせていて、アニメの過剰な演出表現を考えると、多少下乳がはみ出ていようとも、それは大事の前の小事としか思えません。

で本題は表面を覆っている少ない布的なことではありません。もっと大きなテーマが隠されているように思うのです。

それがスケバン刑事のオマージュであり、対比構造。

スケバン刑事というのは考えてみれば荒唐無稽な話で、スケバンといっても実際とは違いケンカの強い女の子を警視庁が雇って、潜入捜査をするというもの。このキルラキルで描いているのは定番の学園ものなのですが、あるのは学園都市。社会の頂点が学園となっており、学園内のヒエラルキーがそのまま階級社会となっているという世界を描いています。そして分かりやすいよう、山岳状になっており、底辺がスラム街。通学にはケーブルカーを使って頂上にある学園に通うという設定。学園内のヒエラルキーと社会階層をうまくオーバーラップさせることで、極端な表現をしていますが、一方でこれは日本社会をうまく反映させているといってもいいでしょう。学歴社会がそのうちの一つ。

そして通常どおり学園モノにおいて、授業が軽視されているのも特徴。誰もまともに授業をきいておらず、興味と表現はすべて休み時間、昼休み、放課後に注がれています。特に部活。これは日本の教育の実態であるといってよく、勉強するのは大学進学をする一部の人間だけであり、その人間も大学に入って遊び呆けるといった実情を表しています。

この部活で日本を征服するという考え方、実に日本的です。高校野球しかり、インターハイしかり。ここでいう部活は運動部であり、運動はすなわち武力なのです。

作中にも制服が軍服からきている、とあるように、日本の学校とは軍隊組織を模して造られているので当然です。教育というのは軍事教練のこととほぼ同義です。

そういうことをベースに考えると、このキルラキルの世界観は特殊ではないことが段々と分かってきます。そしてスケバン刑事のオマージュの意味も。外部組織から干渉されないインナーワールド、これが島国日本の本質です。つまり主人公は外圧なのです。

外圧でしか変えられない組織、国家。それが日本という国であり、学校組織はその縮小版であることから、多くのアニメが「学園もの」になってしまうのはそれを描くことで社会を、多くの日本人が思い描く共通認識(共通幻想)を描くことが出来るからに他なりません。

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だいたい40半ばを過ぎたオッサンが学園もの、っておかしいじゃないですか、本来は。でも見ごたえがあるのはこういう理由からです。

ということでスケバン刑事世代にオススメです。ぜひどうぞ。

あの1話でむしろ薄いんです「キルラキル」シリーズ構成・脚本の中島かずきに聞く1(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース

「マンガ『男組』(原作・雁屋哲/作画・池上遼一)みたいな学園抗争ものを女子高生でやるのはどう?主人公は梶芽衣子みたいで、たとえば「女囚さそり」シリーズみたいな感じで、セーラー服が武器になって戦う」

(中略)

そして基本知識になるような70年代の学園抗争マンガを今石さんにいっぱい渡しました。

───ちなみにどんな作品ですか?

中島 「男一匹ガキ大将」「大ぼら一代」(ともに本宮ひろ志)、「男組」「男大空」(ともに原作・雁屋哲/作画・池上遼一)、「野望の王国」(原作・雁屋哲/作画・由起賢二)、「おれが大将」(大島やすいち)あたりですかね。あとは「リングにかけろ」(車田正美)、「ハリスの旋風」(ちばてつや)、「朝太郎伝」(中島徳博)も参考として渡しました。

参考資料も完璧に昭和です。