映画「スティーブ・ジョブス」の試写会に行ってきました(ネタばれあり)

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11月1日公開予定の映画「スティーブ・ジョブス」の試写会に行ってきました。

映画『スティーブ・ジョブズ』公式サイト

最初に断っておきますが、私はジョブス信者でもアップル信者でもありません。単なる iPhone/Macユーザーであり、アップルという会社やジョブスというパーソナリティに対しての過大な期待がありません。ジョブスについてはあくまでもコンピュータの歴史において見知っているだけであり、会ったこともなければ、その英雄的な振る舞いについての書籍を読んだこともありません。極論すればそんなにジョブス自身について興味がない、というスタンスで、その上でこの伝記的映画を見ています。


まずスティーブ・ジョブスはいくつかの側面を持っています。

・クリエイター
・ビジネスマン(営業、マーケティング)
・経営者(CEO)
・夫
・父

まずクリエイターとしてですが、これはセンスの問題、カリグラフィに興味を示してそれをPC上で再現することにこだわるなど、デザインへの執着心がとても強いです。一方でコストや時間に対する興味はなし。

ビジネスマンとして、特に取引の上手さ、狡猾さが出ています。創業メンバーに対する冷たい仕打ちも人となりが現れており、そりゃ孤独にもなろうというものです。

経営者としては失格。そのために一度はアップルを追われます。

男(夫)としてはサイテーです。こりゃもう救いようがない。

父としては子供 Lisaに対する接し方を見る限り、いい父になろうという雰囲気がでています。

ということで、基本的にはロクデナシ感がたっぷりでていて、非常に納得がいきます。そうです、最高の男はサイテーの男でもあるのです。

「欠落は才能」と言われるように、天才肌の人間は大抵の場合、人間として欠陥を抱えています。ジョブスが未来を作りだす天才であると同時に、創業メンバーを含め、同僚や部下は一緒に仕事できない、したくないというのが本音です。

例えばアップル社で社員はエレベータには乗らないと言われていました。それは万が一ジョブスに出会って、突然「あれはどうした」やんややんやと質問攻めにあい、えっと、と迷っていると you're fired(お前はクビだ)、と言われるためです。

唯一の例外はiMacをデザインし、現在CEOを引き継いでいるジョナサン・アイブだけ。この映画、そっくりさんかと思うくらい実在の人物を忠実に再現しているのですが、ジョナサン・アイブは例外的。本人比+100%アップでイケメン化されているようです。

その点から類推すると、随分と現在のアップル社に遠慮して作られた印象で、撮影の協力を得る代わりに相当マイルドになった感はあります。

特にトレイラーでみる、ジェットコースター的成功と失敗、栄光と挫折の行ったり来たり感はとてもハリウッド的なのですが、映画を見る限りは意外とその表現は抑えられているようで演出的な表現は控えられていた感じです。つまりドラマティックというよりも、伝記的、再現VTRに近いような作り。

NeXT社についてほとんど触れられなかったことや、昨今の iPhoneの熱狂的な盛り上がりには触れず、歴史的には2001年までで終えてしまったところに多少の勿体ない感が漂います。もっとジョブスの狂気と孤独を出しても良かったのではないかという、もったいなさですね。

これを例えば、零戦設計者、堀越二郎を描いた映画「風たちぬ」を作った宮崎監督ならば、それこそジョブス信者とアンチ・ジョブス信者を巻き込んで喧々諤々、非難轟々の話題作(問題作)に仕立てたと思うのですが。

みどころはジョブスの歩き方を含めて見た目がソックリ、というところにつきます。ATARI社のPONG開発の件は初見で、新鮮でした。