ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第33話 黒服 #mini4wd

前回までのあらすじ

闇の組織ダークゴーストは手入れのあった品川ファクトリーを放棄、新たに川崎ファクトリーを立ち上げた。そこでは最新鋭の設備により、量産型井桁超大径マシン MIS-06の製造がおこなわれようとしていた。

川崎ファクトリーが本格稼働し、ダーク・ゴーストはさらに各地での賭けレースを活発化していた。ダーク・ゴーストが製造する量産型井桁超大径マシン MIS-06は常勝マシンとして各地のレースに出没、しかしそれと分かってはレース自体が成立しないために、レーサーは各自のボディによりカモフラージュしていたため、このことは表立っていない。

・・・

場所は代々木の焼き肉屋。

浜田「最近めっきりですわぁ」

自称『新橋の虎』、浜田の姿は虎というよりすっかり大猫の様相になっていた。背中は丸く、小さくなっている。それもそのはず、横浜のレース以来すっかり負けが込んでいるためである。

浜田「兄貴も全然連絡がとれないし、一体どうしちまったんだろう」

北川に連絡が取れないのも無理はない、北川の携帯はミルクに沈められて壊れてしまったからである。そもそも携帯電話全盛のこの世の中、バックアップをとってないわけはないので早急に復活してもよさそうなものであるが、相変わらずであった。


学生「さすがに長すぎですよね、まったく連絡がつかないなんて。サラさんが何か知っているかもしれないし...っと」

テーブルに近づいてきたのはユキだった。ユキといえばサラと折り合いが悪く、名前を出すだけで不機嫌になるので学生はすぐさま話題を変えた。

ユキ「いらっしゃい~、みんな元気してた?」

浜田「相変わらずユキさんはべっぴんですなあ。あれ、髪切りました?」

ユキ「わかったっちゃ? そうなのよ、ちょっとイメチェンをね」

学生「それより、北川さんのこと知りませんか? 全然連絡がとれなくって」

ユキは学生を睨みつけながら、ぶっきらぼうに言った。

ユキ「あのねえ、私なんてフィアンセなのに何年も連絡がとれなくって、こないだようやく出会えたと思ったら、また連絡とれなくなったのよ。まったくこれもあの年増のせいだわ、あの女が何かしたに違いないっちゃ。」

女の勘は鋭く、正しくはないが概ねあっている。確かに年増女、いやサラが原因であることには間違いない。

学生「こうしている間にもあの組織が暗躍しているんですよ。北川さんも、警察も何をしているんだろう。あの組織がうちのパパと関わりがあるのは間違いないんです、ユキさん何か知ってるでしょ、教えて下さい。」

ユキ「えっとぉ、あ、また後でね、お仕事お仕事!」

ユキは別の店員に呼ばれてテーブルから去って行った。

学生はため息をつき、ふと窓の外をみた。するとそこにはフラフラしながら歩く酔っ払いの姿がみえる。しかしその酔っ払いの姿には見覚えがあった。髪は伸びきり、無精ひげを生やしてはいるが、それは北川そのものだったからである。

学生「北川さん!? 浜田さん、窓をみて、外に北川さんが!」

浜田も窓の外をみてみる。

浜田「何を寝ぼけているんだ、ありゃあ単なる酔っ払い...って兄貴ィ!」

浜田と学生は立ち上がり、店の外に急いででた。フラフラと歩いていたのはまさしく北川本人であったが、生気はなく、二人を見るなり崩れ落ちた。

浜田「兄貴ぃ、どうしたんですか、しっかり!」

学生「北川さん、何があったんですか!」

倒れこんだ北川は憔悴しきっている。しかし二人をみて、ようやく口を開いた。

北川「に、...」

学生「なんですか?」

北川「...逃げろ」

浜田「えっ、どうして?」

遠くの方から声がした。

黒服A「いたぞ、あそこだ!」

黒いスーツに赤いネクタイをしめ、耳にヘッドセットをつけたガタイのいい男たちが遠くから走ってきた。

ユキ「どうしたっちゃ! え、ジョージ!」

ただならぬ雰囲気を感じたユキが店から飛び出てきた。北川の変わり果てた姿に驚くユキ。

北川はもう一度口を開いた。

北川「早く逃げろ...でないと、みんな殺される...」

ユキ「えっ」

黒い服の連中が近づいてくる。手をスーツの胸に入れ、何かを取り出そうという仕草を見せた。

(つづく)

【ミニ四駆小説は平日、12:00更新予定です】

この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。

賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。

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