前回までのあらすじ流しのミニヨン・レーサー北川は横浜の自動車メーカー・ショールームにやってきた。クルマは買うものではなく使うものという学生に対し、北川はレンタカーでいいのかと疑問を投げかけた。
ミニ四駆やクルマがレンタカーでいいのか、と説く北川自身はクルマを持っていなかった。
学生「まあ、確かにクルマもっていたら君津や高尾にクルマでいってましたよね...」
君津はアクアライン、そして最近開通した久里浜と金谷を結ぶ第2東京湾横断道路から程近かった。
浜田「兄貴がクルマもってたら、楽できたのになあ~」
そんな浜田も当然クルマはもっていなかった。ラジコンは荷物が多く、クルマがないと移動が厳しいがミニ四駆はレーサーズボックスひとつあればどこへでも行ける、手軽さがあり、クルマを買うモチベーションにつながらないのが現実だ。そもそも多彩なボディバリエーションがあるミニ四駆に対し、パッケージングが画一的な日本車に食指が伸びないというのも理由のひとつのようだ。
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今回のレースは地域の選抜レース、関東地区の代表者が集まるビッグレース。有名どころのミニヨン・レーサーが集まり、凌ぎを削る。そのため参加者が集まるだけでなく、ギャラリーも多い。自動車メーカーのショールームは人だかりで一杯である。
その注目の先はミニヨン・レーサーのマシンセッティング風景。今回のコースに合わせ、マシンを微調整してコースアウトしないギリギリの速度域に引き上げていく。モーター、電池、ローラー、マスダンパー、どのパーツをとっても直線、そしてコーナーをクリアできるギリギリのバランスを狙う。その風景はまるで競馬場で出走前のパドックを取り巻くようである。
学生はふと不思議なギャラリーを見つけた。耳に赤鉛筆を挟み、新聞らしきものに赤丸をつけている。新聞には「ミニ四駆新聞」とかかれているが、これまで学生は見たことがない。
学生「浜田さん、ミニ四駆新聞って知っていますか?」
浜田「ミニ四駆新聞...? 知らねえなあ、兄貴なら知っているんじゃないか?」
学生は北川にきいた。
学生「北川さん、ミニ四駆新聞ってなんですか?」
北川「...ミニ四駆新聞。思ったとおりだ。ミニ四駆新聞が出てるということは、さすがは関東1のレーサーを決める決定戦だけのことはある。なるほど、その手の連中が繰り出しているな」
ギャラリーには通常のミニヨン・レーサーに混じり、無精ひげを生やしたちょっとガラの悪い連中が混じっていた。その手には新聞、そして耳に赤鉛筆という出で立ちでだ。
北川「ミニ四駆新聞は、そうだな、競馬新聞と同じで各ミニヨン・レーサーの特徴、これまでの戦績、今回のレースでの勝ち予想が書いてある。これをベースにどのレーサーが勝つか、賭けるんだよ。つまり、このレースはダブル賭けレースだ。ミニヨン・レーサー自体がお互いに賭けあう賭け、そしてギャラリーが誰が勝つのか賭ける賭けだ。」
学生「えええっ! そんなことがあっていいんですか!」
北川「...フッ、あっていいかどうかではない、実際にあるかどうかだ。その目は節穴か? 心の目で現実を見ろ。名誉と金を賭けて戦うレーサーがいると同時に、ミニ四駆をギャンブルの対象として見る連中がいる、ただそれだけのことだ。見ろ、連中を。」
ミニ四駆新聞を片手にしたギャラリー、いやギャンブラーは真剣な面持ちでミニヨン・レーサーを注視している。
北川「...このレースに全財産つぎ込む奴もいる。ハイリスク・ハイリターンの賭けだ。ミニ四駆を作る技量がなくても、統計に予想屋の情報、そして自分の判断で同じように勝ち負けがはっきりするんだ。これはこれで超エキサイティンだろう。だがな...」
浜田「兄貴ィ、今日のレースは出るんですかい?」
北川「...浜田、お前が走ってこい」
浜田「やっぱり、そうだと思ったっすよー。そうと決まればマシンセッティングをと、新橋の虎と呼ばれたオレ様の実力を見せつけてきますぜ。」
北川「いや、お前のマシンはいい。このマシンを使え」
北川はお弁当箱からミニ四駆をうやうやしく取り出した。
学生「あっ、このマシンは!?」
学生と浜田がそのマシンをみて驚いた。北川が取り出したそのマシンとは。
(つづく)
【ミニ四駆小説は平日、12:00更新予定です】
この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。
ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。
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