ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第22話 横浜 #mini4wd

前回までのあらすじ

流しのミニヨン・レーサー北川はフィアンセを名乗る女性店員ユキに翻弄された。ユキは学生がレッド・ホイールの元リーダー、神山の息子と知り驚く。

港町横浜。横浜駅の東には湾と運河が広がり、遠くに観覧車が見えるみなとみらい21地区。そこに北川、浜田、学生の3人が降り立っていた。

学生「うわー、海ですね~」

浜田「運河に遊覧船がいきよるで、手をふってみよう、カワイイ子がいるかもしれん!」

学生「カワイイ子っていっても幼女ですよ、きっと。」

浜田「幼女、最高じゃないか!」

学生「えええー、別件でまた逮捕されますよ」

浜田「なんだと!」


学生「それにしてもこんな明るく健康的な場所で賭けミニ四駆レース、開かれるんですか? 全然そんな雰囲気ないですよ」

品のいいマダムやカップルが行き交う遊歩道に似つかわしくない3人の男。北川はスタスタと先を行っている。その先には近代的なビルが建っていた。

北川「...ここだ、ここでやる」

北川が立ち止った場所は自動車メーカーの本社ショールームであった。

浜田「兄貴ぃ、ここはメーカーのギャラリーですぜ、確かにあのクルマは4WDかもしれまへんけど、実物大スケールじゃミニ四駆とはいえませんぜ」

学生「広いスペースがありますけど、自動車メーカーがミニ四駆大会するってのも余り想像できませんね。クルマが売れるわけでもないでしょうし。」

いぶかしがる2人をおいて、北川はエスカレーターに乗り、ショールームフロアへ下りて行った。後に続く2人。

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自動車はなぜ売れなくなったのか
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北川「フッ...クルマが売れないか。学生、その通りだ。我々はクルマを買いに来ているわけではない。しかしどちらも同じ4輪で走るものだ。大人はミニ四駆なんて子供が遊ぶもの、おもちゃだといって皆見下す。

ミニ四駆に興味をもち、遊んでいる子供は5年後、10年後どうなる、免許をとるだろう。そして本物の車が欲しいと思うだろう。その時どのメーカーの車を選ぶと思う? それまでまったく接点がなく、免許をとってようやく顧客になった時に近づいてきたメーカーと、こうやってミニ四駆を理解し、遊ぶ場所を提供してくれたメーカーと。

大企業の社長は自分の任期のことしか考えてない。長くて5年、短ければ数年だ。その間業績が伸びればいい、売れればいいと思う。だから効率を重視し、売上を、利益を追求する。それ自体は悪いことではない、企業体が存続するために必要な条件だ。

しかしだ。自動車は工業製品と同時に文化でもある。デザインしかり、モータースポーツしかり。アートであり、スポーツであるからこそ感動が生まれる。ファンがつく、育つ。ファンは一生ファンであり続ける。クルマが売れない、売れなくなった、そう嘆くメーカーも多い。しかし売れなくなった理由はなんだ、顧客だけの、社会だけの、経済だけの問題か? メーカーがこれまでの5年、10年、何をしてきたか、何をしてこなかったのか、振り返ったことはあるのか? 同じようなクルマばかり出し、モータースポーツを休止し、ユーザーと疎遠になったのはメーカーの方ではないのか? ユーザーがクルマから離れたのではない、メーカーがユーザーから離れたのだ。

その点、この自動車メーカーは儲かりもしないどころか、手間がかかり、トラブルも増えるようなイベントをわざわざ本社のど真ん中で開くんだよ。その意義は大きい。ミニヨン・レーサーだけでなく、それを見た通りすがりの市民がどう思うか、どう感じるか。5年後、10年後にどうなるのか。これが真のパブリック・リレーションであり、コーポレート・ブランディングってやつだよ。」

浜田「ほえ~、深いんですなあ」

学生が北川に異議を唱えた。

(つづく)

【ミニ四駆小説は平日、12:00更新予定です】

この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。

賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。

ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。

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