ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第21話 フィアンセ #mini4wd

前回までのあらすじ

流しのミニヨン・レーサー北川は女性店員のマシンをみて、慌ただしく席をたとうとした。しかし店員に見つかり、「ジョージ」と呼ばれる。そして女性店員は北川をフィアンセと言った。

浜田「ふぃ、フィアンセ?」

学生「婚約者ってことですか?」

驚く二人。

店員「そうよ、ジョージとウチは将来を誓い合った仲なのよ、ね~~~~!」

北川「...ユキ、頼むからジョージは止めてくれ。あとフィアンセと言うのもな。」

ユキ(店員)「え~~~、なんで~~~、だってほんとの事じゃない。あの時、私がレースに勝って婚約したんだから、責任とってね! あ、今行くっちゃ!」

ユキは他の店員に呼ばれて席を離れた。

浜田「兄貴ぃ、あんなカワイイ子がフィアンセだなんて、どういうことですかい?」

学生「サラさんはこのこと、知っているんですか?」

北川「...」

浜田と学生の質問攻撃が続くが、北川は口を開かない。そしてミルク・ストレートのジョッキを持ってユキが再び現れた。

ユキ「はい、ジョージ! もう運命よねえ、ウチたち、乾杯しよ、乾杯!」

学生「店員さん、なんで北川さんがジョージなんですか?」

ユキ「名前がショージでしょ、でも世界戦に出た時英語で言いにくいからジョージになったっちゃ」

浜田「婚約っていつしたんすか」

ユキ「ウチたちがレッド・ホイールにいたときよ。チーム内レースでウチがジョージに勝って、マシンを踏みつぶそうとしたら泣いて止めてくれ、なんでもするからっていうの。だから結婚してっていったらOKもらったっちゃ」

学生「それって脅迫じゃ...」

ミニ四駆チーム、レッド・ホイールの勝負は厳しい、負けたらマシンを壊される掟である。

ユキ「そうそう、自己紹介がまだだったっちゃ。ウチ、ユキっていいます。あなたは?」

浜田「オレは北川さんの兄弟分、浜田だぜ。これでも新橋の界隈じゃ知らないものはいないっすよ」

学生「僕は神山です。パパがいなくなって、探しているんです」

ユキの顔色が変わった。

ユキ「神山...ってあの神山さんの...」

北川「...そうだ。息子だ。」

学生「パパのことを知っているんですか?」

北川は立ち上がり、ユキを店の端に連れて行った。

北川「ユキ、神山のことは息子にはいうな。理由は、わかるな。」

ユキ「...わかったっちゃ。ジョージの言うことならウチ、なんでもする。」

その後は何事もなかったかのように、店員としてふるまうユキ。そして北川、浜田、学生の3人は焼き肉屋を後にした。

浜田「焼き肉旨かったっすね! ユキさんも美人だったし、しかもフィアンセなんて、さすが兄貴ィですぜ!」

浜田が上機嫌だが、学生は浮かない顔をしていた。

学生「...なにかユキさん知っているような」

(つづく)

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