前回までのあらすじ浜田は賭けレースですべてを失った作業員に刺され、重傷を負う。流しのミニヨン・レーサー北川は浜田の弔い合戦を誓った。
渋谷のカフェに組織の幹部たちが集まっていた。
幹部A「まさか、木更津の大月模型にガサ入れがあるとは、計算外だ。地元の警察官とはうまくやれていたのに、これもあの作業員が凶行に及んだせいだ。」
幹部B「くっくっく、脇が甘いからそうなる。窮鼠は猫を噛むからな、生かさず殺さず、ほどほどにするべきだったな」
幹部A「警察の動きもこれまでよりも活発だ。ファクトリーは大丈夫か?」」
幹部C「言うまでもない、ファクトリーは我々の心臓部。何があっても死守する。」
幹部B「皇帝の大いなる計画のためには、まだ資金が必要だ。そのためにはこれまで以上に大きな金を動かす必要がある。」
幹部A「そうだ。我々の野望のため、そしてミニ四駆の発展のために尽力しようではないか。」
幹部B「ああ...皇帝の大いなる計画に、乾杯!」
幹部たちはカフェ・ラテを一気にのどに流し込んだ。その様子を隣のテーブルで伺っていたサングラスの美女。
サラ「...(ファクトリー、地下工房のことね。その場所さえ掴めれば)」
サラは解散する幹部たちを尾行するよう、そっとスマホで指示した。
・・・
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Hit Factory
地下工房、組織では「ファクトリー」と呼ばれている。地下工房では屈指のミニヨン・レーサーが囚われ、日夜ミニ四駆を作らされていた。いやそれは正確ではない、一部は寝食を忘れ、ミニ四駆を作ることだけに没頭できることに生きがいを感じるほどであった。
池田「神山さん、僕はもう疲れました。早く家族のもとに帰りたい。」
ここ地下工房では食事時間以外はすべて、ミニ四駆製作に費やされる。監獄と同様部屋から出ることは禁じられ、毎日最速のミニ四駆を製作し続けている。
神山「池田さんの気持ちも分かります。でもこうして最高の機材と材料が提供されてミニ四駆のことだけに没頭できるなんて、素晴らしい環境ですよ。本当に毎日が楽しい。」
池田「神山さん、お子さんいらっしゃいましたよね」
神山「ええ、男の子が、といってももう高校生ですけどね。」
池田「お子さんやご家族に会いたくないですか?」
神山「妻は随分前に亡くしました。子供はもう一人で大丈夫ですよ。池田さんは確か、娘さんでしたよね」
池田「ええ。いやね、今度ボーイフレンドができたってメールが来たんですよ。どんな男か、心配で心配で...」
池田は落ち着きなく、うろうろと歩いている。ミニ四駆製作も手につかない様子だ。囚われているといっても、メールの送受信は許されている。ただ、組織の監視のもとのため滅多なことは書けない。家族には長期出張、単身赴任だといっているケースがほとんどだ。多くの家族はその言葉を信じ、一家の主の帰りを待ち続けている。
池田「・・・もう我慢できない、僕は帰る!」
池田は思い立ったように走りだし、外へ通じるドアへと駆け寄った。
神山「池田さん、そのドアは・・・」
言い終わらないうちに池田はドアに手をかけた。
バチバチバチ!!
池田「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
池田の頭髪がすべて放射状に逆立ち、そして池田は崩れ落ちた。
神山「池田さん...」
神山は立ちつくした...
神山「ミニ四駆だけを作り続けていればよかったものを...これ以上の幸せがどこにある...」
(づつく)
【ミニ四駆小説は平日1日に1回、12:00更新予定です】
この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。
ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。
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