ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第13話 グレーゾーン #mini4wd



前回までのあらすじ

流しのミニヨン・レーサー北川は木更津へやってきた。インテリジェントバッテリーの力で浜田は優勝したが、一体インテリジェントバッテリーとは何か?

浜田は優勝賞金を手にし浮かれているが、学生はどうにも腑が落ちていない。

学生「北川さん、このバッテリーの正体はなんですか?」

北川「...絶対に負けないインテリジェントバッテリー。試走したとき予めコース情報をとり、内蔵されたGPS、Gセンサーの情報から状況判断、最適な電流を流しモーターの速度をコントロールしてコーナーやジャンプ台では減速、直線では加速する。さらに相手のマシンの状況を判断し、ペースを相手に合わせて、ギリギリのところで勝てるようにペース調整するんだ。通信機能を使ってこのスマホでモニタリングもできるし、いざとなれば『いっけーーーーーっ!』と大声出せば加速する機能もついている。なあ、これなら浜田のマシンでも勝てるだろう。」

学生「でもそれって、レギュレーション違反じゃないんですか?」

北川「...いったろう、社会では法律・規則に触れない『グレーゾーン』がある。このインテリジェントバッテリーは外見上は単三電池だ。『単三』は国際規格ではR6と呼ばれ、サイズの規定があるだけだ。つまりこのインテリジェントバッテリーが単三のサイズに収まっている以上、『単三電池を使用すること』という今回のレースのレギュレーションに違反していない。」

学生「でも、ずるくないですか、みんな普通のアルカリ電池やニッケル水素電池を使っているのに。」

北川「...ずるい? レースで勝負に勝つ、というのは手段を選ばないということだ。それがレギュレーション違反でない限り、ズルいと後ろ指さされることはない。例えばクルマのレースを考えてみろ。タイヤメーカーは他のメーカーよりもグリップするタイヤを持ってくる。常に技術革新はいかに相手を出し抜くか、にかかっているんだ。イコールコンディション、とはある一部の条件だけであって、最終的にはどこで差をつけるか、いかにグレーゾーンをつくかが勝負の分かれ道さ。」

学生「分かりますけど、この電池、出回ってないんですよね、誰も勝てないじゃないですか。」

北川「その通り。この電池を持っていれば、いつ、どこででも勝つことができる。この電池と同等以上の電池を開発するか、または他の方法で凌駕するかしか破る方法はない。しかしだ。」

学生「しかし?」

北川「そんな勝負が面白いか? 勝つと分かっているレースに血わき肉躍るか? 常勝マシンは常に規制される運命だ。この電池の存在が表沙汰になれば、必ず規制されることだろう。オレがこの電池に頼らない、使わない理由はそういうことだ。面白くない。

賭けレースで横行してる、勝てるマシンを買ってくることも同じことだ。賭け自体がどうこうというのはオレは興味がない。しかし、レースの醍醐味は勝てるかどうかわからない相手、コースに持てる力をいかに叩きつけて、理想の走りをできるかだ。その理想の走りをオレは追及したいんだよ。買ってきて、はい、速い、勝てる、なんてのが面白いか? 極めることができるか? 一生続けられるか? オレはミニ四駆を一生極めたい、続けたいんだよ。まだ見ぬ地平の先にゴールがあるんだ...」

学生「北川さん...」

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・・・

組織の幹部たちは驚愕している。

幹部C「インテリジェントバッテリー! そんな電池があるとは、信じられん。」

幹部A「いやあるのだ。なぜなら...その電池は皇帝自らが開発したものだからな!」

幹部B「な、なんだって~~~~!」

幹部A「その電池さえあれば、我々はいつでもどこでも勝つ、負けるを遠隔操作できる。つまりパチンコでいえば出玉のコントロールと同じことが可能ということだ。しかしそれはテストの際、誤って電池ボックスの中で倒してしまい、他の普通の電池にまぎれてしまったのだ。なにせ外見上判別できないからな、どれがどれだかわからなくなって、それ以来行方不明となってしまった。あの時は皇帝に殺されるかと思ったよ。」

幹部C「...(お前かよ!)」

幹部A「それがこんなところで見つかるとは...これは皇帝に報告せねばなるまい」

幹部B「皇帝の計画の邪魔をするものは、早急に排除せねば」

幹部C「ああ...」

幹部たちが立ち去るのと入れ替わりに作業着の男が入ってきた。しかし千鳥足で様子がおかしい。どうも相当酒に酔っているようだ。

作業員「...お前ら、お前らのミニ四駆のせいで!」

全員が振り返る。浜田も作業員に気付く。

浜田に突進する作業員、その影がひとつとなったとき、巨体が崩れ落ちた。

北川「浜田!」

学生「浜田さん、どうしたんですか、浜田さん!」

倒れた浜田から真っ赤な液体がしたたりおち、公園のアスファルトに広がっていった。

(づつく)

【ミニ四駆小説は1日に1回、12:00更新予定です】

この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。

賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。

賄賂は法律で禁じられています。

単三電池の分解、改造は危険ですので、絶対にしないでください。

ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。


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